トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

トルコを知るための53章 その五

2014-06-28 15:39:47 | 読書/ノンフィクション
その一、その二、その三、その四の続き トルコ国民によるケマル批判に対し、体制側は「アタテュルク擁護法」なる、彼を誹謗する言動を禁じる法律を制定するなどして押さえ込んできたが、現代では政府によるこのような国父の偶像化、不可侵化が時代遅れになりつつある。それでも、依然としてケマルを正面から批判する言論は体制側からはもちろん、国民の側からもあまり表に出てこないそうだ。 むしろ近年目につくのは、ケマルの思 . . . 本文を読む

トルコを知るための53章 その四

2014-06-27 21:39:54 | 読書/ノンフィクション
その一、その二、その三の続き ただ、永田雄三氏が調べてみたら、この法外な「トルコ史テーゼ」にも実はそれなりの「学術的根拠」があることが分って来たという。『トルコ史の基本路線』の執筆に使われた書物の殆ど全ては、どれも当時の欧州諸国で出版された第一級の学術書だったのだ。しかも、その多くは戦前既に日本語にも翻訳されている。 それによれば、19世紀の欧州では中央アジアの「原住民」は誰かという論争が広く闘わ . . . 本文を読む

トルコを知るための53章 その三

2014-06-26 22:10:04 | 読書/ノンフィクション
その一、その二の続き トルコの歴史教育を書いた28章「世界最古の文明を築いたトルコ人!/国民国家統合のイデオロギー」は大変興味深かった。トルコの歴史学もかなりおかしな面があるのが伺えたが、この章で永田雄三氏はその背景を描いている。 トルコ共和国が誕生して間もなくの頃、或る日ムスタファ・ケマルの側近の1人であるアフェト・イナン女史が自分が学んでいた高校の地理書を挙げ、ケマルにこんな質問をした。 「「 . . . 本文を読む

トルコを知るための53章 その二

2014-06-23 21:10:25 | 読書/ノンフィクション
その一の続き 51章「トルコとアフガン復興」は、「その意外で深い関係」という副題の言葉通り、アフガンとは長く深い結びつきがあることが載っている。トルコがパキスタンと友好関係が深いのは知っていたし、第二次印パ戦争(1965年)にはパキスタン支持デモが方々で起きたほど。パキスタンへの武器援助を恐れた米国が直ちに地中海艦隊の一部を来航し、トルコ政府をけん制したこともある。 しかし、アフガンとの関係は私に . . . 本文を読む

トルコを知るための53章 その一

2014-06-22 14:09:58 | 読書/ノンフィクション
『トルコを知るための53章』(大村幸弘、永田雄三、内藤正典 共著・編集、明石書店)を先日読了した。行きつけの図書館にあったので借りてきて読んだが、期待以上に濃い内容だった。上記3人の他にも多くの研究者がトルコの歴史や文化、社会、庶民の生活から政治経済、国際関係について執筆したコラム53章が載っている。タイトル通り、まさにトルコを知るために53章であり、トルコに関心を持つ方なら堪らないはす。特にトル . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その四

2014-06-16 21:10:14 | 読書/欧米史
その一、その二、その三の続き 大英帝国時代の有名な軍人キッチナーの名も挙がっていたのは驚いた。彼は女に関心がなく、生前から女嫌いと言われていたそうだ。さらにキッチナーはセシル・ローズと同じくお気に入りの若者を集めた“少年隊”を持っており、彼に忠実に仕えた若者もいる。 軍人でもキッチナーは美術愛好家で、陶磁器のコレクターの一面があった。彼の蒐集を助けたのは友人のロナルド・スト . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その三

2014-06-15 21:11:04 | 読書/欧米史
その一、その二の続き さすがに欧州も近代には刑法の改正が進み、多くの国で男色を処罰する法律が廃止される。特に啓蒙君主のいた国ではそれが早かったが、欧州の大国、英国やフランスではそれが遅れた。近代までの欧州諸国では男色者というだけで処刑対象だったのだ。1783年がフランスで最後の男色者処刑と言われるが、この場合は男色よりもそれに伴う殺人が極刑理由だったらしい。そして1791年、ついにフランスでは男色 . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その二

2014-06-13 21:10:26 | 読書/欧米史
その一の続き 古代ギリシアで同性愛が発達したのは、勇士を教育する軍隊組織の他に三つの要素を挙げた説が紹介されている。体育への情熱、男の裸体の受け入れ、そして男の裸体の美のカルトがそれらに当たるという。体育は戦争のための訓練として始まったが、やがてそれ自体として発達するようになった。体育は裸で競技されるようになり、絵や彫刻に表現され、男の裸体が美として見られるように至ったという。 これは現代の説だが . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その一

2014-06-12 21:10:19 | 読書/欧米史
 先日、『ホモセクシャルの世界史』(海野弘著、文藝春秋)を読了した。タイトルだけで“やおい”が喜びそうな書だが、著者は資料文献を丹念に調べた上、男の同性愛について真摯に考察している。世界史と銘打っても論考の対象は欧米のホモセクシャルの歴史であり、東洋には言及されていない。歴史教科書で必ずと言ってよいほど名が載っている世界史の著名人のエピソードも豊富であり、この人もホモセクシ . . . 本文を読む

成り済ましメール その②

2014-06-08 21:25:06 | マスコミ、ネット
その①の続き 私が今回この記事を書いたのは、「キリスト教徒がこのブログに行う違法行為」というブログ記事を見たのがきっかけ。管理人はメール受付をしており、先日彼のメールアドレスに不正アクセスがあったという。彼のメールのパスワードを解析、勝手にログインされたそうだ。管理人はパスワードが甘かったと自省しているが、侵入者はそんなパスワードに設定した者が悪いと思っているかも。それでも不正アクセスは犯罪行為で . . . 本文を読む