トーキング・マイノリティ

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難民問題騒動 その①

2017-01-31 21:10:07 | マスコミ、ネット

 1月30日付河北新報の第一面は次の一文が大見出しとなった。「米、難民ら280人入国拒否」。その脇には「NY地裁 送還禁止命令」とあり、30日や今日の日本のメディアのトップニュースは、この関連報道一色となった。
 難民受け入れの凍結、シリアなどのイスラム圏7カ国からの入国禁止を決めた米大統領トランプによる大統領令は鳴り物入りで署名されており、日本のメディアでも早々にそれへの抗議活動を伝えている。

 一連の報道だと、あたかも全米が抗議一色に染まっている印象を受けるが、この大統領令を支持する米国民も確実にいるはず。支持者と反対者で、どちらが多数なのかは判らない。しかし、日米ともに報道機関は支持する人々の声を全く取り上げず、「報道しない自由」で一貫しており、メディアの反トランプ姿勢が改めて知れる。

 尤も大統領令支持者側もメディアに映ることを、あまり好まないだろう。これまでの報道姿勢からも極右、排外主義者、不平不満を抱く低学歴、低所得者などのレッテルを貼ることは想像に難くない。何しろ大統領選で争ったヒラリーの言葉を借りれば、トランプ支持者の「半数は嘆かわしい人々」なのだ。支持者と違いアンチトランプ派は己の身が安全であるのを熟知しており、メディアへの露出度も高いのだ。
 トランプのエキセントリックな言動を強調するメディアだが、実は現オランダ首相マルク・ルッテも移民難民に対し、「嫌なら出ていけ」と言っていたことを1月27日付のダークネスDUAで初めて知った。試に検索したら、1月24日付BBC日本語サイトで既に記載されていた。

 BBCには「嫌なら出ていけ」発言に至った背景も描かれており、バス運転手の職に応募した移民男性が女性と握手を拒んだために就職できなかった事例が紹介されている。この大手バス会社は国内の人権機関に批判されたが、首相はバス会社を擁護、こう言ったのだ。
もしこの国に住んでいて、お互いへの接し方にそれほどイライラするなら、打つ手はある。出ていけ!ここにいる必要はない!

 2004年11月18日付のブログ記事「オランダの荒廃」には、日本のメディアが多文化共生の見本として讃えるオランダの惨状が詳しく紹介されている。もちろん河北新報はオランダ現首相の発言や“オランダの荒廃”は例によって一切報じない。
 河北新報の読者コーナー「声の交差点」には、2015年10月9日付で、「“難民鎖国日本は返上を」という投稿があった。投稿者は泉区の主婦、高橋美代子氏(当時75歳)。以下はその全文。

「世界の難民問題を考える時、その根の深さに目をそらしてしまうことがあります。しかし、最近報道されたシリア難民の姿は、あまりに痛々しく胸が締め付けられます。日本はこのほど、財政援助の拡大を表明しました。それはとても大事なことだと思います。
 このような時、国連が主導して問題を解決することが出来ないだろうかと思います。しかし、大国間のしがらみ、複雑な地域紛争などが絡み合い、解決の糸口さえ見いだせず苦悩しているのが現状のようです。

 日本の難民認定制度では、昨年5000人の申請があったのに対し、11人しか認定されなかったとのことです。日本は豊かな国でありながら、難民を受け入れない「難民鎖国」と他国から言われているそうです。確かに、私たちからみれば遠い国、言葉も文化も異なる人々をどうやって応援出来るのか、「人情」だけでは解決できないことも分かります。
 でも、血の通った人間同士なのです。温かい目で出来る限りのことをしてあげたいと思います。難民の方々の祖国が1日も早く平和になるよう祈らずにはいれらません」

 私には感傷的なきれいごとの並べ立てにしか見えなかった。「温かい目で出来る限りのことをしてあげたい」と言っても、せいぜい支援金を送るのが関の山。もしかすると高橋氏には、自宅で難民を受け入れる覚悟があるのか?日本を「難民鎖国」と腐した国のひとつは中国なのだ。しかし何事にも上があり、「難民鎖国」の超大国はサウジと国連常任理事国の中国である。
 殊にサウジはムスリムでも、国教ワッハーブ派でなければ移民も認めないほど。2016年6月12日付ニュースサイトには、国連がサウジの圧力を受けて「ブラックリスト」から除外したことを事務総長が認めたケースを取り上げている。この時の事務総長は、国連史上最も無能と呼ばれた韓国の潘基文。

「“難民鎖国”日本は返上を」「温かい目で出来る限りのことをしてあげたい」と言うほどなので、高橋氏は富裕層なのだろうと思った。いずれにせよ氏の名を記憶したのは、この投稿だった。 
 今年1月半ば、再び「声の交差点」に高橋氏の投稿が載る。補聴器についての意見であり、安い補聴器では良く聴こえず、性能が良い品だと数十万円はするそうで、そのための補助金を訴えていたのだ。難民の受け入れや支援を訴えていた老女は、一方で数十万円の補聴器への補助金を要請する現金な人物でもあった。
その②に続く

◆関連記事:「虚言で国会議員を辞任した女

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2 コメント

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外国人人材 (室長)
2017-02-01 15:58:31
こんにちは、
  非合法移民の多くが「経済難民」としての性格を持つことも問題をややこしくします。自国での治安の悪さとか、安全への懸念とは別に、いつまでたっても豊かな国とならないから、あるいは自分は、そういうダメな国を改革する意欲も意志もないし、長い時間待てない、から、既に豊かで安全な国家を選んで、何とか「移民」に成功したい、と言う考え方。
  実際には、国内にいても迫害もされていなくとも、いつまでも貧しい国に付き合ってはいられないという、そういう考え方から移民の道を選ぶ人が、アフガニスタン、イラン、イラクなどに多く、そういう人がブルガリアにも多く非合法に入ってくる。シリア人より多い。しかもEU規則では、最初に入国した国で「難民資格の申請」をする規定ですが、初めから貧しいブル国への移民には関心がないから、ドイツ、その他の西欧の国へと早くブルからも脱出しようとします。

  アフリカ諸国の場合、内戦状態がない国からも、貧しいがゆえに、欧州へと海を渡る。
  いったんタガを緩めたら、ドイツのように百万人規模(1年間で!)が押し寄せるのだから、たまったものではありません。

  移民して後、キリスト教に改宗もしないし、自分たちの文化は保持したまま、同族・同部族、同民族の人々ができるだけ集まって、独自のコミュニティーを作ろうとする。溶け込まないし、溶け込めない・・・・社会問題は必至です。
  そうならないように、規制は厳しいままにして、しかし、IT技術、その他の技術的才能、或いは多言語交渉能力など、企業にとって有用な人材は確保する・・・・程度に考えて移民を受け入れるのが「得」と言える。日本にとってもメリットがないような移民は、受け入れてもあとで困るだけです。

  インド人なども、昔は聖なる牛が町の中でうようよしていて、交通の邪魔だけど、宗教上どうしようもないと思っていたけど、今では牛乳、バターの生産用の家畜としての牛以外は、イスラム教国のBangladeshに輸出してしまうので、大都市の牛問題は解決したらしい。結局、経済の拡大で、牛が邪魔となったら、宗教的概念さえも変化するようで、そういう適応力のある場合は、外国でもなんとか受け入れてくれるかもしれないが、イスラム教徒のように、頑固に女性はスカーフを付けることに固執するなど、現地社会との対立を招くのなら、やはり移民の受け入れは難しくなる。
  きれいごとではなく、受入国の利益が重要です(ドイツも、きれいごとの他に、自国で労働力が不足するから受け入れてきた、と言う側面も大きい)。
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Re:外国人人材 (mugi)
2017-02-02 22:19:57
>こんばんは、室長さん。

 仰る通り、身体生命が脅かされ着の身着のままで避難してきた真の難民と、豊かな暮らしを求めて不法入国する「経済難民」とは全く異なります。その②にも書きましたが、アラブ諸国は経済的には「中進国」で基本的な衣食はほぼ足りており、南アジア諸国より豊か。アラブ諸国からの少なからぬ移住者の実態は「経済難民」であり、池内氏はアラブ諸国の問題をこう述べています。
「社会システムの硬直化に悩み、将来の凋落を予期する下位の中進国が抱える問題」。

 インドは聖なる牛が町の中でうようよしていた頃でも、牛革は結構な外貨収入となっていたのです。作業していたのはムスリムですが、牛革加工品を輸出していました。ヒンドゥー原理主義者が牛のを禁止すべきだ、と金切声をあげても経済利益もあり、不徹底に終りました。元からヒンドゥー教は融通無碍な面があり、宗教的概念の変化は珍しいことではありません。
 移民してもキリスト教に改宗せず、基本的に自分たちの文化を保持するのはヒンドゥー教徒も同じです。しかし、彼らは地域に馴染んでおり、あまりトラブルは聞いたことがありません。布教をしない民族宗教ということも大ですが、欧米の右派にも彼等の評判は良いのです。

 対照的にイスラムは難しいですね。中国の回族の祖先は唐の時代に中東から移住してきたムスリムですが、ユダヤ教徒やゾロアスター教徒さえ現地に同化していく中、混血して中国風の名や顔立ちになっても同化しませんでした。当然周囲の漢族から忌み嫌われた。
 移民に向く民族と向かない民族がいるのは確かです。何よりも受入国の利益が重要だし、緒方貞子のような国連職員は本当にどうしようもない。
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