トーキング・マイノリティ

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自省史観

2005-09-05 20:35:16 | マスコミ、ネット
 9月4日付けの地元紙・河北新報に保坂正康氏へのインタビューが載っていた。保坂氏は最近、『あの戦争とは何だったのか「特攻」と日本人』という新書2冊を同時刊行したばかり。その動機は右傾化への危機意識からだと言う。政治家やマスメディアはナショナリズムを煽っていると糾弾。

 「とにかく、最近の近隣諸国を批判する本がひどすぎる。内容以前に見出しなどで相手を中傷、侮蔑する表現が平気でまかり通る。こういう感情が行き着く先は恐ろしい。
 特攻隊は英霊でも、犬死でもない。納得して死んだとは到底思えない。特攻を美化する人は、無謀な作戦を立案した指導者の責任を問うことなく、国家の政策を追認しているだけだ、ということをどこかで忘れている。
 (日本人一般は)戦争を知ることに不勉強で、不熱心…。国民的な性格の弱さ、狡さと言い換えてもいいかもしれない」

 私は彼の名を聞いたことはあれ、これまで本を読んだことはなかったが、これらの発言から読む気が一気に失せた。日本は言論の自由が保障された国であり、いかに己が気に入らぬ本が出されようとも、言論人としては認めるのが筋であり、理を持って反論すればよいものを安易な「右傾化」の一言でしか表現できない“平和”主義者特有の傾向は相も変わらない。
 隣国批判の本がひどいと彼は言うが、見出しで相手国を中傷、侮蔑する表現の本など果たしてあろうか?公然と蔑称を使っているのは中国や南北朝鮮である実態は完全黙殺が“平和”主義者の常套手段だが。
  特攻隊に限らず、連合軍兵士にも、そして平時においても“納得して死んだ”者などごく少数なのは人間社会の常。大往生で天寿を全うしたと思われる人が、実 は死ぬ直前にもっと生きたい、と周囲に漏らす例もあるのだ。“納得して死ぬ”のは余程悟りをひらいた人物だろうが、この世の大半である凡夫には遠い胸中 だ。

 日本人の欠点に「戦争を知ることに不勉強で不熱心。性格の弱さ、狡さ」を挙げているが、戦争を知るのに熱心な勉強家で強く潔い性質の人間など、日本人に限らずどの宗教、民族問わず少数派なのだが、昭和14年生まれながら彼は人間社会も分からぬようだ。

 保坂氏は大学で近代史を教えているそうだが、今の学生の態度に愕然とするという。そのやり取りは興味深い。
 「よく本を読んでいるような若者が『先生、それって自虐史観じゃないですか』などと、よく考えもせずに質問する。相当毒されているんですね。そういう言葉を安易に使うな、自省史観と言うべきだ、と僕は彼らに言っているんです」

  よく教師や知識人は世間知らずと言われるが、極めて閉鎖的なアカデミックな世界にいる者ほど一般社会との乖離がひどいが、彼も例外ではないようだ。いかに 若造でも“考えもせずに質問する”者ばかりではない。むしろ、読書し、思考する人ほど質問するのだが、自分とそぐわない意見や質問は“相当毒されている” で切り捨て。おそらく彼は学生に軽く見られているのも気付いていないだろう。

 それにしても、“平和”主義者の「自省史観」とはいいえて妙だ。その拙劣なパロディだが、これは「他(敵)国史観」そのものだろう。他国の歴史的事実も検証しない捏造と妄言をそっくり鵜呑みにするのだから。または哈中(朝)族とも言うべきか。

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2 コメント

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自省史観 (Mars)
2005-09-05 21:17:33
こんばんは、mugiさん。



投票日まで、あと一週間を切りました。

昨日、田舎の両親と電話で討論(?)してみましたけど、平行線をたどるばかり。

(ド)田舎と都会、年齢差で、こうも考え方が硬違うものかと、正直、戸惑っているところです。



しかし、保坂某の発言、かなりイってますね(ネット流にいうと、すごいデムパを発生してますね)。



>最近の近隣諸国を批判する本がひどすぎる

こういう本が巷に出回ったのも、近隣諸国のおかげ(近隣諸国の実情や歴史を学ぶきっかけをもらえましたし)ですし、それに対する批判や○流とでっち上げる、マスゴミ自体の姿勢があるのですが、、、。

ましてや、これらの書籍が、ただ批判するのではなく、現状をよく知り、上手く付き合う方法を模索しているのですが。まぁ、保坂某も○巻きの例にたがわず、読まずに批判しているのでしょうね。



>納得して死んだとは到底思えない

>戦争を知ることに不勉強

当然、戦争で死ぬことに納得する人間なごくわずかでしょうね。

また、戦争を知ることに不勉強とはこれいかに?○巻きの人たちは、平和はお祈りしていれば、達成されると、お花畑の論理なのでしょうね。

先の戦争が、すべてがすべて自衛だけにないにしろ、すべてが侵略とも思えません。それに、アジア諸国の独立にきっかけとなったのも事実です(近隣以外のアジア諸国の代表者等の言はスルーなんでしょうか)。

そういう、決め付けしている本人が、戦争を知ることに不勉強という事実に、気付かないのでしょうか?



>自省史観

言いえて妙ではありますが(笑)。事実でないことや、事実に反することまで、反省させようとしているのが、自称自省史観の人達なんですよね。

保坂某のような人達が、教育の場に立っていることに、大きな憤りを感じています。

(ましてや、生徒の意見にも耳をかたむけないとは。まぁ、自称自省史観の人達は、みんなそうなんでしょうね。先生が生徒に習うことも、全くないとはいえないのに、、、。)
大人のための歴史教科書 (mugi)
2005-09-06 21:10:48
こんばんは、Marsさん。

台風で九州にかなり被害が出てますが、Marsさんの四国の家では大丈夫でしょうか?



私の住む宮城第1区では自民と民主候補が激しく競り合ってます。後者は民放女性キャスターで、先輩の岡崎トミ子(韓国に渡り反日デモに参加した、頭が何処の国の者か疑問な人物)が応援してます。共産党は論外ですが、民主もこれでは困り者です。



保坂氏の「あの戦争は何だったのか」には(大人のための歴史教科書)というサブタイトルがついていて、その理由は「戦争を知らず、学校の授業でも歴史を十分勉強してこなかった大人たちに、分かりやすく読める本」の意味を込めたそうです。



戦後生まれを「戦争を知らない」と決め付ける彼も終戦時にはたった6歳で、果たしてどれだけ戦争を知っているのかかなり疑問ですね(笑)。彼の知っている戦争は所詮文献資料上からほとんど出ておらず、これでは戦後生まれとなんら変わらない。

保坂氏は昭和史に関する本を多数書いているので相当史料文献は読破したでしょうが、その史料を結局生かしてないのでは、とあの発言だけで推測しました。はじめから決まりきった結論ありきで、史料を自分の説に都合よく引用してるのかもしれない。

彼の物心つく頃に日本は敗戦、GHQの日本帝国絶対悪の狡猾な洗脳教育が始まったので、そこから抜け出せないのでは。



彼に質問する学生を不勉強というのは、自分の説に従わず、違う考えを突きつけられ動揺したのではと思いました。自分の説の同意のみ求めているのでは学術的な議論など出来るはずもない。違う意見を認めないのは、彼の嫌っているファシストそのものです(笑)。性格が弱く、狡さ丸出し。



自省史観など言っている国は世界中で日本くらいです。ドイツは全てナチが悪い、で済ませてるのが実態。保坂氏はいくら史料を読み漁っても、人間が見えてない。歴史を知るというのは、人間性を知る事なのに。