トーキング・マイノリティ

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神様が私を助けてくださる その二

2015-02-08 20:40:41 | マスコミ、ネット

その一の続き
「後藤さんを思う」と題し、2月4日付河北新報の16面では後藤健二氏の2010年9月のツイートが紹介されており、内容はこのようなものだった。
目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い。憎むのは人の業にあらず、裁きは神の領域。―そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった

 河北によればこのツイートが急拡散しているそうだが、“憎むのは人の業にあらず”と本気で後藤氏は思っていたのか?また、このフレーズに感銘したならば、未成年並みの人間観だろう。内ゲバの連続だったイスラム世界の歴史に概観しただけで、単なる理想論なのが判るはずだ。「Christian Today, Japan」のサイトでいうところの“国際ジャーナリスト”の世界観は、この程度の水準らしい。
 初版が1981年9月と34年も前だが、『イスラムからの発想』(大島直政著、講談社現代新書)で大島氏は、日本式の安易なヒューマニズムは通用しないと警告しており、それを振り回す者は必ずイスラム世界で叩きのめされる体験をするだろう…と述べていた。また大島氏は、「話せば分る」も通用しないと断言しており、後藤氏は自らの首を叩き斬られる羽目になった。

 尤も後藤氏は2010年12月のツイートでは次の発言をしている。
そう、取材現場に涙はいらない。ただ、ありのままを克明に記録し、人の愚かさや醜さ、理不尽さ、悲哀、命の危機を伝えることが使命
 死後に彼を「弱者の味方」などの美称で讃えるジャーナリスト連中こそが、この原則を守らない。ジャーナリストはとかく“使命”を口にするが、そんなものは第三者からみれば独り善がりの功名心の言い訳に過ぎない。ジャーナリストも喰うためにカネが必要だし、危険地域への渡航はハイリスクなのだ。

 おそらく他紙も同じだろうが、河北ではシリアの子供たちと映っている生前の後藤氏の写真を載せていた。これだけでも“弱者の味方”然とした印象操作に最適だが、仙台市出身の彼は東日本大震災では何をしていたのだろう?ボランティア活動をしていたならば、その時の写真を河北は掲載したはずだが、未だにそれはない。wikiでみたら、「被災地の石巻市気仙沼市日本ユニセフ協会記録員を務めた」とある。
 やはり労働作業はしていないようだ。しかもアグネス・チャンが大使を務めたこともある日本ユニセフ協会の記録員。アグネスはカトリックだが、マザー・テレサはこんな言葉を遺していた。
自分の国で苦しんでいる人がいるのに他の国の人間を助けようとする人は、他人によく思われたいだけの偽善者である

 昨年末、元クリスチャンである巨大虎猫さんやクッキングホイルさんから、土井たか子福島瑞穂がクリスチャンであったことを教えて頂いた。このことは週刊誌の記事に時々出ていたそうだが、あまり週刊誌を見ない私は社民党の女党首らがクリスチャンだったことを初めて知った。wikiにも彼女らがクリスチャンであることは書かれていない。巨大虎猫さんの他のコメントも考えさせられた。
日本の社会主義者には、クリスチャンは少なくありません。フェミニストにも多数います
クリスチャンは「私はクリスチャンです。」と言う人に一目置く傾向があります。政治家や市民運動家の主張を吟味せずに、「◯◯さんはクリスチャンだから、この人を支持する。」と言い出すクリスチャンが少なくないのは、このためです

 もう十年近くも前だったか、何かの民放に出ていた田嶋陽子が口にした言葉をふと思い出した。「神様が見ていて下さる…」。
 これを聞いた時、「あれ、この人無神論者じゃなかったの?」と意外に思ったが、案外彼女もクリスチャンだったりして。少なくとも仏教徒ではないだろうし、あれだけ頻繁にメディアに出ているのは、何処かの組織による強烈な後押しがあるのは確かだろう。

「神様が私を助けてくださる」など、私のような不信仰者からみれば妄言の極みだが、キリスト教徒の後藤氏ならそう思っていたかもしれない。以前の中東取材時にも後藤氏は「アル=ヌスラ戦線」に拘束され、幸いなことに1日で解放されたそうだ。これで「神様が私を助けてくださる」と思い込むようになったのやら。
 だが、神様は何時でも助けてくれるとは限らない。東日本大震災は不信仰な日本人への天罰と嘲ったクリスチャンが少なからずいたという。何かといえば偶像崇拝者を見下し、ムスリムを蔑み、異教徒の命を軽く見るクリスチャンだが、異教徒も同じ目でクリスチャンを見ているだろう。私も後藤氏の死には月並みなお悔やみを言う気はないし、同情や憐憫は感じない。

◆関連記事:「相互理解
 「私がクリスチャンを非難する理由
 「平和と唱えて世界が救われるなら…

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4 コメント

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対極のアナクロニストがいます (のらくろ)
2015-02-11 15:08:36
ほとんどブログ主様へのご注進ですが、以下に並べておきます↓
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42874
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42815
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42759

タイトルだけで読む気が失せるでしょうが、1ページ目からコメントが読めるのはありがたいし、その方がはるかに有益。
ついでに主文ライターの素性はこのとおり↓
http://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%20%E4%B9%BE

「我が国最高学府の東京大学の准教授様であるぞ、控えい、下賤者!」という態度がこれだけ露骨なのも昨今では珍しいのではないでしょうか。

こうなってくると、「頭狂大学」との悪口も叩きたくなるというもの。さて、「西の雄」はどうなのだろうか、やっぱり「狂徒大学」なのかしらん?
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Re:対極のアナクロニストがいます (mugi)
2015-02-11 20:45:40
>のらくろ さん、

 リンク先のコラムですが、本当にタイトルだけでゲンナリさせられますね。返ってコメントの方が遥かにマトモ。特に3番目の「イスラム国による人質殺傷事件を笑い話にするな!」は、書き手本人こそ幼稚すぎる。「匿名が当たり前は世界の恥」も完全な的外れ。
 大体、“イスラム国”指導者の大半は偽名ですが?奴らはネットプロパガンダに長けてますが、日本のコラボ映像のおちょくりの方がむしろ効果的です。そして伊東がコメントで漏らした言葉こそ短絡かつ無責任をさらしている。読む能力だけでなく書く能力もないということ。
「タイトル類は僕がつけたものではありませんが、ポイントの一つではあります。ただ、こうすると爪楊枝の話と連立した部分が後退して見えますね。24日深夜からこういう展開のため、編集含め今日の公開に前倒しとなりました」

 さて伊東 乾とやらですが、団塊世代と思いきや1965年生まれとは…試に伊東 乾で検索したら、オモシロブログ記事がヒットしました。サヨクの管理人からもコケにされている。
http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20140512/1399878026

 同じ東京大学准教授でも、中東・イスラーム学の池内恵氏は見事なコラムを書いており、ここから一部引用します。
「ワイドショーやニュース番組などのいい加減なフリップが作る「空気」に流され、検証がないままに、多くの論者がいつの間にか「軍事的な援助だと誤解された」という無根拠な情報を事実であるかのように信じて議論をしてしまっている。それが国会論戦にまで反映されてしまっている日本。それに比べて、紛争地の武装集団に過ぎない「イスラーム国」の方がはるかに情報収集・分析力において優れている、という気がいたします」
http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-270.html

 池内氏は1973年生まれ、若き気鋭の学者ですが、何故か新聞やТVにでない。或いは出されない?尤も中東・イスラム専門のバカ頭狂大学名誉教授(1931年生まれ)のコラムが河北新報に載りました。実に酷い内容で、アカ学者のゾンビ。ちかく記事にする予定です。
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Unknown (牛蒡剣)
2019-12-12 20:23:54
『イスラムからの発想」まんま今日のでも有効内容ですね!慧眼ですね。

 こういう本が専門家の解説で語られるようでないといかんですよ。
この記事およびのらくろさんのカキコで2015年当時こんな痛々しい言説が飛び交っていたとに驚いてます。

 後藤さんもジャーナリストの崇高な使命感(笑)とキリシタンの信仰がまじりあって痛々しく別の意味で同情します。
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牛蒡剣さんへ (mugi)
2019-12-13 21:15:48
 キリスト元信者による皮肉が効いています。まさに殉教でクリスチャンにとっては主の御許に行ける行為なのに、やはり誰しも死にたくはないのです。
 この事件ではメディアが斬殺したテロリストは非難せず、政府の対応が悪いと責めていました。
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