トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

優秀な学生

2016-07-29 21:10:26 | 世相(日本)

 前回はトルコクーデター未遂事件について書いたが、この関連で2013年9月にトルコで刺殺された女子大生・栗原舞さんのことを思い出した。トルコ女子大学生死傷事件からもう3年も過ぎていたのだ。栗原さんは宮城県・名取市出身で、22歳の若さで他界したのは痛ましい限り。
 地元紙・河北新報は彼女のことを、国際的なサークル活動にも参加している優秀な学生、と報じていた。私の友人の息子が中学生の時、クラスメートだったこともあったあり、やはり学業優秀な生徒だったとか。だが、メディアが好む“優秀な学生”という形容は、いささか語弊があると感じる。

“優秀な学生”というと、何やら四角四面の堅物の印象を受ける人もいるし、生真面目な優等生のイメージを持つ人が多いだろう。ネットでは栗原さんの生前のツイート集を集めたサイトもあり、これからは学生時代を謳歌している、今時の若い女性だったことが伺える。
 一方、ある人気ブロガーは栗原さんの別の発言を紹介した記事をアップしている。彼女は学生主体で行う「日中事業」で団長を務めるなど中心メンバーとして活躍、卒業論文のテーマは「グローバル社会における大学生の意識」で、すでに日本、中国、韓国の学生への意識調査などを進めていたことが書かれていた。

 栗原さんは中国人や韓国人と親しく交流、原発再稼働や憲法改正などを目指す自民党が選挙に勝った日本を「変な国」と批判していたことを、この記事で初めて知った。河北新報が抽象的な“国際的なサークル活動”という表現を使い、具体的な団体名や行動を報道しない理由がこれで分かった。こうなると、彼女の印象も多少違ってくる。人気ブロガーは彼女のことを冷淡にこう書いている。
宮城県で生まれ育ち、新潟大学に進み、22歳になっても世の中の真実を知らず、可哀想に、日教組の教職員によってドップリ洗脳されたままだったようだ

 宮城県人を含め東北人は総じて権威に弱く従順、年長者には大人しく従う若者が多い。もちろん東北にも不良学生はいるが、教師に従順で学業優秀な生徒ならば、文句なしに“優秀な学生”となるのだ。東北人は反骨精神をあまり好まず、それがあると思われる人物は、へそ曲がりとして敬遠されがち。よくて「いんぴん」(宮城の方言で気難しいこと・人の意)扱い。
 但し、栗原さんに限らず22歳の若者ならば、国内外の政治情勢に関心を持つのは少数派だろう。流行言葉でいえば「意識高い系」ゆえに、日教組の教職員からある種の教化を受けたことが考えられる。

 オウム真理教が凶悪テロ事件を起こした際、メディアはこぞってオウム幹部を「優秀な若者」と報道していた。確かにオウム幹部は有名大の理工系を卒業した若者が占めていた。学業面で彼等は申し分なかったが、カルトに走り、テロ事件を起こした若者は果たして優秀と言えるのだろうか?
 一口に優秀といえ人間には多面性があり、学業は秀でていても社会性に難がある人も居る。全ての面で優秀な人物はいないだろう。

 何度も書いているが、私が中東に関心を持ったのは学生時代に映画『アラビアのロレンス』を見たのがきっかけ。当時は19歳だった。まさか現代に至るまで、中東オタクになるとは想像も出来なかったが、中東関連の書物を読んで感じたのは、若い女性が観光コースを外れた所を旅するのは、あまりにも危険ということだった。
 私自身はまるで優秀な若者ではなかったし、生来のへそ曲がりなので、反発こそしなかったものの教師や講師の言うことは信用出来ないと感じたこともある。

 トルコは周辺アラブ諸国に比べれば比較的治安はいいが、それでも地方なら被り物もしない若い女が歩くのはリスクがある。元から地方は保守的だし、イスラム主義がイスタンブルのような大都市でも伸長している昨今は性犯罪に巻き込まれる可能性は否定できない。
 栗原さんが殺害された後、一旦逮捕された容疑者が釈放され、別の男が真犯人として捕まった。銀行に行った時、これを取り上げていたワイドショーを何気なく見たが、トルコの二転三転した逮捕劇をコメンテーターが、「トルコの警察、本当にいい加減ですね」と怒りの発言をしていた。

 いい加減なのはコメンテーター。トルコの様な中東世界の警察と日本のそれの対応が同じと思う方がアホなのだ。まして強権で知られるトルコ警察、発砲しただけでメディアが騒ぎ立てる日本とは事情が全く違う。
 しかし私の若い頃と違い、現代はネットが使える時代である。栗原さんもネットしていたのだから、事前にトルコの現地情報をチェックしなかったのか。栗原さんが殺害された前年8月、ルーマニアでも20歳の日本女性が酷い暴行殺人事件の犠牲となっている。特に若い女は海外で要注意が必要であり、危機意識で優秀さが発揮できなかったのは残念。

 もちろん悪いのは殺人犯だが、犯罪に巻き込まれないためには慎重な行動を取る他ない。命あっての物種だし、若くして逝った日本女性の犠牲者には心からお悔やみを申し上げたい。

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6 コメント

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地方紙の左傾偏向 (室長)
2016-07-31 11:58:02
こんにちは、
 このブログを読んでいて、日本の地方新聞の多くが、戦後の「左翼洗脳時代」の思想にかぶれた記者たちが牛耳る、とんでもなく閉鎖的で、進歩、進化ができない組織であることが分ってきました。中日新聞、中日が買収した東京新聞も、相変わらずの偏向記事が多いらしい。河北新報も、沖縄の新聞と同様なのですね・・・・朝日新聞記者たちへの迎合者が多いのでしょう。産経新聞だけはまともだと見えてきます。

  日教組と言う巨大組織を通じて、本来はインテリ集団であるはずの教師たちにも、左翼偏向の悲しい人格が多いらしいことにも気づかされました。地方の教員をしてきた小生の姉たちも、全くの平和ボケ概念で、自衛隊を敵視していたので、呆れたのですが、その程度の認識しか、地方に住んで、安全・平和を享受している人々にはないようです。知的な向上心をどこかで放棄し、1960年代と同じ「お経」を生涯唱え続けるつもりらしい。

  その点ネット世代は、かなり覚醒していて、世界の政治、軍事に関する知識も増大しているから、より正しい判断ができるかと言うと・・・・やはり、字を通して学ぶ程度では、平和ボケの感覚は治らない、と言うことでしょう。
  外国で、本当に数年でも生活してみれば、自己防衛、交渉力などはかなり向上するけれど、そうはいっても女性の場合は、守ってくれる配偶者、親戚ができれば、外国でも意外とのんびり暮らせるもので、必ずしも警戒心が高い人ばかりとも言えない。

  トルコは親日国だけど、社会全体を見渡せば、信頼できない人が多数存在する、普通の大陸系国家だという警戒心が必要です。
  ブルガリアでも、ブル人自身が、ブル人には悪い人も多いから、信用してはダメ、と最初に警告します。中には、他のブル人は信用してはダメと言って、自分だけ信用せよと言って、そのくせ、本当はそのブル人こそが、外国人から利益のみを引き出そうとする、危ない人間だったこともある。

  嘘を平気で付けるし、自分の利益のためなら何でもできる・・・恐らくオスマントルコの時代から、バルカン半島では、そういう生き馬の目を抜くような人間が競争する、厳しい社会情勢が頻繁にあったのでしょう。もちろん、トルコ本国も未だにその歴史を背負っている。
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「パンティー」はいていたのか? (のらくろ)
2016-07-31 14:37:19
無論、物理的にははいていたに決まっている。

しかし、件の女子大生は「パンティー」をはいていたという自覚があったのか、というのが今回の論点。

「じゃあ何をはいていたのだ?」との問いがでるのは当然で、のらくろの考えはどうかというと、「女児パンツ」か、どうかすればパンパースなどの「おむつ」だったのではないかと思う。

彼女はトルコへ旅立つ前に、体は大人の女になっていたのだろうが、そこに彼女の意識が付いていけていたかどうか。

親というのは、特に自分のこどもが「大人」になるっていくこと、とりわけ繁殖力の獲得について認めたくないように思われる。それに社会が阿り、とりわけ「女児から大人の女」への成長、というか変化を本人に自覚させないような、「いびつな過保護状態」になっているのではないか。

しかし、乳が膨らみ、陰毛が生え、生理が始まれば、「女になった」、もう二度と無垢な幼女、少女に戻ることはなく、男どもの「ヤりたい」視線に晒されることになる、さらには、「草食男子」などというのは日本だけの現象で、一歩国外に出れば、「この女、どうにか騙してヤりてー」という男が近寄ってくるということを、先輩女性、とりわけ母親たちはちゃんと警告し、自覚を促していたのだろうか。まったく同じ下着であっても、昨日までは「(女児)パンツ」であったものが、今日からは「パンティー」として、男の性的好奇心の対象を身につけ、対象となっている、ということに思い至るうようにしていたのか? スケベオヤジののらくろとしては大いなる疑念を抱かざるを得ないのである。
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Re:地方紙の左傾偏向 (mugi)
2016-07-31 20:42:55
>こんばんは、室長さん。

 東京新聞は河北新報の友好紙のひとつで、時々読者欄に前者読者の投稿が載ります。真っ当な投稿もありますが、偏向しているものが少なくない。酷いケースでは、投稿者が公選法違反容疑で逮捕されていた藤沢市の無職男だったことも。また同じ投稿者を何度も見かけます。十代読者の声も結構ありますが、十代らしくない意見が目につきます。

 私のひとつ年上の従姉も地方の教員をしていますが、如何に付き合いで日教組に入ったにせよ全くの平和ボケ概念、日本も「いつか来た道」になりそうで危ない、と言っていました。これは80年代後半のことですが、このようなアタマの連中が、教員に就いているのは頭痛がします。
 ネット世代でも上記のような女子大生もいるのだから、あまり期待できませんね。母親世代も日本の様な国で生まれ育ったため、警戒心が薄いのです。悲しいことですが特に海外では、人を見たら泥棒と思え、の格言が身を守ると思います。

 海外でむしろ日本語の出来る外国人の方が危険、という話を聞いたことがあります。確かに日本語で話す外国人に気を許し、暴行の憂き目に遭った日本女性もいます。もちろん、同胞を食い物にする海外在住日本人も多いですが。

 日本と違い普通の大陸系国家だと、騙した人間よりも騙された側が悪い、というのがフツーですよね。日本とは一般概念がかなり違っているので、他国の厳しい社会情勢には想像も難しいのでしょう。
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Re:「パンティー」はいていたのか? (mugi)
2016-07-31 20:47:25
>のらくろ さん、

 タイトルで思わず笑ってしまったし、下ネタ話かと思いきや、内容は至って真っ当で安心しました。それにしても、件の女子大生の成熟性を「パンティー」に例えているのは傑作です。女にはとても出来ない発想ですね。「「女児パンツ」か、どうかすればパンパースなどの「おむつ」だったのではないかと思う」の箇所は、辛辣ながら私も同感です。
 もう彼女らも22歳、身体は完全に大人の女ですが、「いびつな過保護状態」のため、意識がついていけない日本女性は少なくないと思います。とりわけ恵まれた家庭の出のインテリ女性にその傾向が強いような……

 仰る通り、「草食男子」のような現象は日本くらいだし、第三世界の男たちは粗暴で性欲に溢れているのが殆ど。欧米人はそれより少しマシな程度なのは、性犯罪の多さから判るはず。にも拘らず、欧米人は女性に紳士という誤ったイメージが未だに根強いですよね。

>>一歩国外に出れば、「この女、どうにか騙してヤりてー」という男が近寄ってくるということを、先輩女性、とりわけ母親たちはちゃんと警告し、自覚を促していたのだろうか。

 母親側にも案外自覚が足りなかったのでは?母親自身、平和ボケで暮らしていれば、野獣同然の男が多く存在することさえ、想像が出来なかったかも。やはりピンクレディの「SOS」の冒頭の歌詞「♪男は狼なのよ、気を付けなさい~~」は、21世紀にも通じます。
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利口や優秀はしばしば皮肉 (madi)
2016-08-01 12:02:43
ギリシャ哲学の論法をみてると反論前に相手をほめます。「パイドロス」など。ほめるということについて警戒感が法律家にはわりとあります。
利口とか優秀とかかくとある分野だけでほめられてほかはほめられるもんじゃない、という意味にとれてしまいます。ベトナム戦争での秀才たちのおろかさを描いたハルバースタヌ「ベストアンドブライテスト」を秀才たちと訳した例もありましたが「おばかさん」というのが適訳ではなかろうかと思っています。現在では原題表記になっています。
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Re:利口や優秀はしばしば皮肉 (mugi)
2016-08-01 21:18:04
>madi さん、

 ギリシャ哲学の論法で、反論前に相手をほめる手法があったことは知りませんでした。検索したら「パイドロス」とはプラトンの対話篇の1つだったことを初めて知りました。日本にも「ほめ殺し」なるものがありますね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B9

「ベスト・アンド・ブライテスト」も初耳ですが、「最良の、最も聡明な人々」を意味するタイトルが何とも皮肉です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88
 秀才がバカをやるのは歴史上で枚挙に暇がなく、科挙の秀才たちも時代の変化に適応できませんでした。タイトルは忘れましたが、確か魯迅の短編にも、物乞い同然となった士大夫が登場する話があったような…
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