トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

アメリカン・ヒストリー

2005-09-28 20:19:14 | 読書/欧米史
 以前、旧日本軍支配下のフィリピンについて記事を書いた方からトラックバックを頂いたので、私はフィリピンを支配下に置いたばかりのアメリカについて記したい。アメリカはもちろんだが、フィリピン人も米軍の虐殺の歴史には健忘症となってるかもしれない。  

 1898年12月、フィリピンはスペインからアメリカに2千万ドルで売却され、アメリカの植民地となる。既に宗主国への独立運動が起きていたが、その戦いはスペインからアメリカに変わっただけであった。
 翌年2月、サン・ジュアン橋を警護していたアメリカ兵がフィリピン人に発砲したことから戦いは表面化する。アーサー・マッカーサー将軍(来日したのは彼の息子)は軍を率い、マニラから北部に攻め入り、本国からも援軍が来る。アメリカ軍はゲリラを掃討するため、各種の手段も用いたが、当然拷問もその1つだった。

 特に頻繁に行われたのは水責めだった。捕虜を仰向けに寝かせ、その上に椅子を置き、口の中に棒や剣をねじ込んで口を開かせ、塩水や泥水を大量に流し込 む。そして腫上がった腹の上に椅子に飛び乗り揺する。すると食べた物ばかりか胃液までが水と一緒に吐き出されるが、これを何度も繰り返したそうだ。処刑の 場合は耳を削ぎ、目をくりぬき、腕を切り落とした。捕虜が女である場合は乳房を切り落とし、銃剣をゆっくりと性器の奥に突き刺した。
 1901年、サマール島のゲリラを鎮圧するためジェイク・スミス率いる部隊がバランギガの街に宿営した時、ゲリラの反撃に遭い多数のアメリカ兵が殺害された。この報告を受けたセオドア・ルーズベルトはゲリラの鎮圧を命じる。これを受けたスミスはこう部下を叱咤激励する。「焼き尽くし殺し尽くす。これが多ければ多いほどよい」。兵士たちは任務に邁進した。一連の弾圧で20万ものフィリピン人が犠牲となったが、アメリカは本国でのインディアン掃討作戦を再現したに過ぎない。

 別に掃討されなくともチェロキー族のように強制移住で全体の3分の1もの人間が命を落とした例もある。また、7回も居住地を変えられ人口が半減した部族もいたから、まさに死の行進である。悪名高き古代アッシリアと進歩はないようだ。

 かつて日本の南洋庁のあったパラオ島は戦後アメリカ統治下に置かれたが、1963年にハーバード大教授が提出した報告書にはこう書かれていた。「わが国への従属を望むよう、多額の資金を惜しまず投入すべき」。  こうして(援助漬け)政策を開始、産業振興や経済開発に手をつけず“飼い殺し”にしたのだから、日本の南洋庁の方が統治で勝るのは書くまでもない。

 フィリピン人で過去の歴史でアメリカを憎む者は、まず少ないだろう。
 「人間というものは軽度の侮蔑には復讐の気持ちも起こるが、大きな危害を加えられると復讐の気さえ失ってしまうものだからだ」 -マキアヴェッリ

参考:『世界リンチ残酷史』柳内伸作 著


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アメリカン・ヒストリー (Mars)
2005-09-29 00:13:15
こんばんは、mugiさん。



楽天の監督に、ノムさんで決定ですかね?更に、清原・元木・ローズも楽天入りするのでしょうか?(こちらは、可能性が低いかもしれませんが。)

もしも、mugi監督ならば、楽天に補強するならばどの選手にしますか?(全部、というのはダメですよ)

 ① 率も残せる長距離打者

 ② リード○、強肩の捕手

 ③ 岩隈との二枚のエース投手

 ④ 連投OKの中継ぎエース

私の場合は、○番ですけどね。



アメリカの歴史には、血塗られたものが多いですね。前々回の記事でもありましたが、領土の拡大はインディアンの迫害の歴史でもありますよね。

その後も、独立戦争、南北戦争、二つの大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争等、アメリカの歴史は、常に、大小の戦争と平和の繰り返しですね(まぁ、我が国のお隣の大陸国家も、朝鮮、ベトナム、ロシア、インド等、周辺国のほとんどと戦火を交えていますね)。

キ○スト教に根ざした、白人優越主義国家の倣岸、不遜の行為には、目に余るものがあります。グローバルスタンダードの名の下の押し売り、他国に行っても、英語の強要等、謙虚さのけの字もありませんね(欧州国家、イスラム国家にも謙虚さの欠片もありませんね。謙虚さを美徳とするのは、古の某国位のものでしょうか?)。

今も昔も、力こそ正義の時代。お花○で反抗するのも、事大するのも、仕方がないのかもしれませんね。



>人間というものは軽度の侮蔑には復讐の気持ちも起こるが、大きな危害を加えられると復讐の気さえ失ってしまうものだからだ

軽度の侮蔑には復讐の気持ち=某半島国家(合併された侮蔑)、大きな危害を加えられると復讐の気=某島国国家(意図的な無差別爆撃、核攻撃等の大きな危害)と考えれば、妙に納得してしまいました。

私のような凡人にも理解できる言葉を、数百年前に残したマキアヴェッリは、さすがに偉人ですね。

(そして、数百年前の偉人の足元にも及ばない、売国政治屋が、なんと多いことか。ふぅ~(泣))

中華思想よりは欧米の国際法 (motton)
2005-09-29 12:24:14
上で挙げられているのは一応の正義もある戦争なので有名なのですが、

どちらかというとマイナーな、米墨戦争、米西戦争(米比戦争)、ハワイ併合、

パナマ支配などは、元のエントリにもありますが(欧米基準でも)酷いですね。

ただ、幾つかは公式に謝罪したり返還しているので他国よりはマシとも思います。

良くも悪くも『正義』が国是なので、悪事を正当化し過ぎると滅亡しますから。



謙虚さを美徳とする古の某国というのは古の支那王朝でしょうか。

あの地域の王朝は、古来から力があれば普通に覇道の帝国主義で、力が無ければ

王道を名目に自らを慰めているだけです。これが中華思想の正体です。



19世紀~20世紀前半を帝国主義と呼びますが、何のことはなく人類の歴史はずっと

帝国主義です。(今も昔も力こそ正義)

国際法でもって多少なりとも法治主義を導入しようとしている 19世紀以降の欧米

は白人優越主義があったとはいえ、よほどマシなのではないでしょうか。

少なくとも、国境がただの力の境界であった19世紀以前に比べて国境線が固定され

変更がほとんど許されなくなったことや、名目上ではあっても主権国家の平等の

概念があるのは良いことだと思います。

Unknown (Mars)
2005-09-29 12:57:09
mottonさん



>謙虚さを美徳とする古の某国というのは古の支那王朝でしょうか。

いいえ、支那王朝のことではありません。古の聖人君主が徳で治めた、という歴史があるようですが、それも所詮は伝説上の話(そうあってほしいと思う幻想?)だと思います。

また、かの国には「易姓革命」という言葉があるように、力で王朝を倒し、新たな王朝をつくっていく歴史の繰り返しですよね。そんな国に、謙虚さを美徳とするなんて思えません。

それに、支那の現政権も軍国主義・帝国主義だと思っています。口では「他国に脅威を与える行為はしていない」といっていますが、露と組んで軍事演習もしていますし。また我が国と問題化している、東シナの油田には軍艦を出動させていますね。これって、いわゆる砲艦外交ですよね?どの口で「他国に脅威を与える行為はしていない」なんて言えるのでしょうか?



謙虚さを美徳とする古の某国とは、もっと身近にある国ですよ。でも、現在は個人主義を勝手に解釈して、利己主義が蔓延している国です。

失礼しました (motton)
2005-09-29 14:03:07
身近にある国ですか。

謙虚さが長期的な利己を最大にすることを知っていたのだと思っています。

Unknown (mugi)
2005-09-29 20:59:24
こんばんは、Marsさん。



楽天の監督はやはりノムさん採用が濃厚ですね。清原・元木・ローズ、一人でもいいからほしいです。

楽天を本格的に補強するならMarsさんの4条件全部にしたいですが、それは不可能なのでせめて③と④ですね。一場がもっと伸びてくれるといいのですが・・・



 アメリカは独立戦争前、移民たちがこぞって独立支持だったのではなく、必ずしも多数派でもありませんでしたが、ボストン茶会事件などの謀略と暴力により独立した国です。マキアヴェッリは「ローマは建国の当初とて未だ弱体な国家であった時代から、権謀術数の必要を知っていた」と書いてますが、まさにアメリカが当てはまります。米国の連邦制は、インディアン部族連邦組織を元にフランクリンが参考にしたとの説もありますが、その彼も「インディアンを消してしまうため、神は我々にラム酒を与え給うた」と言ってます。



 古の某国ならずとも、洋の東西問わず謙虚を説く諺はありますが、逆に見ればいかに人間が謙虚に程遠かった、ということでしょう。「傲は人類の永遠の病だ」と言った人がいますが、それが悲しい人間の性ですよね。
コメント、ありがとうございます (mugi)
2005-09-29 21:04:03
初めまして、mottonさん。



私が書いた記事は、一般に旧日本軍の行為より知られてないマイナーな例なので、あえて書いたのです。

彼方は“一応の正義もある”と仰られますが、アメリカに限らず覇権国はもっともらしい大儀を掲げて侵略するものです。中華思想も欧米も、その種の傲慢さでは人後に落ちない。欧米のいうところの“正義”など、鵜呑みにするのは大変な間違いです。



私はインド史に関心がありますが、かの国でイギリス人が「正義と平和」をモットーに行ったことはいささか知識があります。典型的な2重基準で、自己に都合のいいように法をそのつど変えていた。例えば19世紀後半、インドでも工場法が施行されますが、その対象に欧米人経営の工場やプランテーションは含まれませんでした。法に縛られないプランテーションはまさに奴隷労働で、脱走した労働者を棒で殴っても咎められない始末。狙いはインド人経営の産業の妨害でした。



中国より欧米の方はやり口がスマートなだけと思います。もちろん私も、もし支配されるなら中華より欧米の方がマシですが。



謙虚は人間の美徳ですが、「謙虚の美徳を持ってすれば相手の尊大さに勝てると信じる者は、誤りを犯す羽目に陥る」と言ったのはマキアヴェッリでした。