トーキング・マイノリティ

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ハマスの女たち その一

2011-06-18 20:39:31 | 音楽、TV、観劇

 今年2月、NHK BS1の「世界のドキュメンタリー」で、「明日をひらく女たち」というシリーズがあった。中でも1日に放送された「ハマス 熱情の女」は中東に関心のある私には見逃せない放送だった。録画していた番組を先日改めて見たが、NHKのサイトにはシリーズの紹介もあり、以下はそれからの引用。

イスラエルとの和平交渉に反対し、武力闘争を続けるパレスチナのイスラム原理主義組織ハマス。メンバーの中心は男性だが、その活動を陰で支えるのは女性たちだ。
 パレスチナ国家の樹立を目指し、女性のイスラム抵抗運動を先導してきた女性議員。「結婚の目的は新しい世代の戦士を産み、育てること」と話し、殉教の尊さを説く女性活動家。そして、ハマス指導者だった夫を殺害され、狂信的な活動を続ける女性。カメラは
ガザ地区で活動するハマスの女性たちを追う。ふだん目にしない彼女たちの活動ぶりと、貴重なインタビューを織り交ぜながら、ヘジャブに隠されたパレスチナへの熱い思いに迫る。

 イスラエル在住のアラブ人女性ディレクターが制作。撮影開始直前の2006年、ハマスがパレスチナの選挙に勝利し、イスラエルとの関係が悪化したため、ガザ地区に入ることができなくなった。このため、ディレクターは現地の取材班を使い、テレビ電話を通して撮影の指示を与えるという取材スタイルをとっている。

 
原題は「Women of Hamas」、なぜ“熱情の”との表現が入れられたのか不明だが、直訳では平凡だからか?そして、制作は「Belssan Productions/Cinephil」、何とイスラエルの報道機関であり、2010年の作品。イスラエル在住のアラブ人女性ディレクターの名はスーハ・アラーフとあるが、テレビ電話に登場する現地の女性取材班と違い、後ろ姿でついに顔を見せなかった。女性ディレクターがカーリーヘアーだったことだけは分かるが、宗派は何だろう?蛇足だが、故ヤセル・アラファトの妻もスーハという名で、キリスト教徒アラブ人だった。結婚時にイスラムに宗旨替えしたそうだが、パレスチナ人にも数少ないながらもキリスト教徒もいる。

 テレビ電話に登場するガザ地区の現地ディレクターはアズハルと紹介されており、28歳の魅力的な女性だった。総じて早婚のパレスチナ人にも拘らず独身で、結婚前にまだ仕事や勉学でやりたいことがあるという。イスラエルの女性ディレクターとはテレビ電話で交信し、スーハが使っていたノートPCはSony製だった。アズハルとハマスの女活動家たちが交わしたインタビューは興味深い。

 パレスチナ自治評議会では女性議員は6人おり、その1人ジャミーラはハマスの活動家である。じきに51歳になるそうで、顔にはシミか黒子が目立ち、所謂美人ではなかったが、狂信的な様子は全くなく終始落ち着いて賢明な印象の人物だった。ジャミーラはパレスチナ独立運動にこれまでの半生を捧げてきたそうで、結婚歴はないという。女は結婚し男児を生んで一人前と認められるアラブ社会では珍しいが、それでも男たちから敬意を払われている。

 ジャミーラは子供の頃から本好きだったそうで、図書館からよく本を借りて読んでいたとか。文盲も珍しくないアラブの中で、パレスチナ人は例外的に教育水準が高く、女でも高学歴の者も少なくないという。ジャミーラは最近はイスラムの有名な哲学者ガザーリー(1058年生まれ)の本を読んでおり、イスラムがいかに素晴らしい宗教であるか、理解してほしいという。ただ、彼女はガザーリーをエジプトの人物と言っており、些細なことだが気になった。ガザーリーはペルシア(イラン)人のはずだが、アラブではそう思われているのか?
 ガザーリーの次の言葉から、当時でも神学者間の派閥論争があったことが知れ、彼はそのような教条的な人々を軽蔑していたようだ。「神の大きな慈悲を自分に忠実な者に限定し、天国を神学者の小さな派閥の聖禄地(ワクフ)にする…
その二に続く

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