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危うい「ダイヤモンド安保」 その一

2013-02-02 21:10:11 | マスコミ、ネット

 普段はインド関連ニュースを取り上げない河北新報だが、1月23日付の特集で珍しく日本の外交政策のひとつとしてインド情報が紹介されていた。コラムの中央には「危ういダイヤモンド安保」の文字があり、右側の大見出しには「中国封じ込めが狙い」、反対側のそれには「緊張に拍車逆効果も」。中央の見出しに比べ、左右のそれは見やすく太字となっている。概要文は以下の通り。

ダイヤモンド安保構想―。耳慣れない言葉だが、安倍晋三首相が昨年末、提唱した外交安保のアイデア。日本、インド、オーストラリア、米ハワイ州の連帯を強め、ダイヤモンドの形の枠組みをつくる。狙いは海洋進出に野心的な中国に対するけん制であり、「封じ込め」戦術。ダイヤモンド安保の可能性と問題を考えた。

 コラムの右半分の中段にも「尖閣念頭に「価値観外交」」の大文字の見出しで、小見出しは「刺激的な表現」「切り口の違い」となっている。コラム上部は「安倍首相が提唱 日、米ハワイ、豪、印 4ヶ国連携構想」の文字が左右の大見出し同様に背景つきで載っている。私が関心を持ったのは後半の内容であり、以下はその全文。

海洋国家である日本の価値観の裏打ちされたものの見方。セキュリティー・ダイヤモンドという言葉も斬新だし、コンセプトで闘うとの発想は今までの日本にはなかった。首相の発言としてはやや軽い印象があるが、政治家・安倍晋三個人の発言なら非常に面白い」。双日総合研究所(東京)の吉崎達彦副所長は、構想を評価した。佐藤優・元外務省主任分析官は「ロシアは静観するだろう。しかし、(中国をけん制する意味で)腹の底では歓迎するはずだ」との見通しを示した。

 安倍政権はこの構想に沿ってすでに動き出している印象がある。ダイヤモンドの枠の中にはいる東南アジアを重視する姿勢を鮮明にしている。今月に入って麻生太郎副総理兼財務相がミャンマーを訪問、岸田文雄外相はフィリピン、シンガポール、ブルネイ、オーストラリアを歴訪。安倍首相も16日からベトナム、タイ、インドネシアの3カ国を回った。
日本も世論戦でカウンターパンチを出せるのだと、中国に意識させることが出来る」(吉崎氏)との好意的な見方もある一方、実際にダイヤモンドを形成するには問題が山積しているのも事実だ。

 岸田外相と会談したオーストラリアのカー外相は13日、「日豪関係は中国を封じ込めるものではない。日本との関係緊密化は豪中、日中の関係強化と共存できる」と述べて日本の出方をけん制。「日豪は共に米国と同盟国。戦略認識を共有し、協力関係を一層推進していきたい」と語った岸田外相とは微妙な温度差を感じさせた。

 ダイヤモンドを結ぶ、もう一つの国、インドが同調するかも疑わしい。外交評論家の孫崎亨氏は「インドと中国との貿易量は日本の何倍にも当たり、国の重要度は中国の方が遥かに上。現実的に考えれば出来るとは思えない」と見る。
 岐阜女子大南アジア研究センターの福永正明センター長補佐も、「『日印の関係が日米関係を超える訳がない』というのがインドの一般的な考え方。インドからすれば、日米を基軸としたものよりも東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係や自国を中心とした別の枠組みを考えていくだろう」と唱える。さらに「日米同盟の強化や対中政策のためにインドを犠牲にしようとしているのでは、と考えている識者もいる」と指摘する。

 ダイヤモンド構想が中国を強く刺激し、尖閣諸島問題などをめぐる緊張を高める危険があるとの見方もある。慶応大学の渡辺靖教授(文化外交)は「悪くないアイデア」という一方、「日中関係は今、非常に危険な領域に入っている。構想は『中国にとって脅威になる。拡張路線を進めなければならない』との口実を与えかねず、逆効果になる可能性がある」と指摘する。
 渡辺氏はこうした構想と並行して、中国政府の中枢にパイプをつくるなど地道な努力の積み重ねによって、関係改善を図るべきとの考えだ。「いざという時に落としどころを見つけるのは政治家同士のコミュニケーションなのに、それが出来ていない」と説く。

 孫崎氏も、ダイヤモンド構想の裏には米国の戦略がちらつくと否定的な考え方を強調。「日米は価値が共通だとか、中国と連携できる訳がないと主張するが、それは米国の軍産複合体が使うロジック。米国は自国の金を使わずに、日本などに負担させたいだけのことだ」と述べた。
その二に続く

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