うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

血統理論

2006-11-09 21:05:10 | 競馬日記
私が用いる血統理論は五十嵐氏理論と中島理論です。

五十嵐氏理論は「サラブレッドの進化には選抜が大きく寄与した」という一般論を体系化しようとする試みだと思っています(サラブレッド - Wikipediaでも「競馬で勝つことのみを目的とし日々交配と淘汰とが繰り返されて」いるとの記述を見ることができます。淘汰の逆の側面が選抜です)。
選抜には方向性が必要です。サラブレッドにおける選抜の方向とは速い競走馬を作ることです。この目的を達成するために、遅い馬は淘汰され、速い馬の血が選抜されることになります。配合段階で考えれば「優秀な牝馬に優秀な種牡馬をつける」ことが行われます。

しかし、血統表を見ずに単純にこのようなBest to Best配合をすることが果たして効率的なのかという疑問が出るわけです。そこで、「血統の方向性もそろえた方が選抜として効率的だろう」という仮説を立てます。その一方で、「極端な近親交配はしばしば有害である」、「6代以内にクロス馬が存在しないような極端な異系交配の成功例はきわめて少ない」という観察もあります。この仮説と観察のもとでは、両親に共通する祖先「クロス馬」が重要になってきます。そして、そのクロス馬の配置などについて、過去の名馬に共通する構造を取り出して体系化し、またその構造の変換から成功しうる配合を推測する試みが五十嵐氏理論だと思っています。
実際には、五十嵐氏は、父と母の血の相性をさまざまな馬で見たところ、クロス馬に特徴を見いだしたので、それを体系化するというフローで行われました。現実的には「一般論」と「仮説」は五十嵐氏理論の形成の過程であまり大きく寄与していないかもしれません。しかし、「一般論」と「仮説」に合致しているように思いますし、「血の構造」に主眼をおく場合は便利で、他の馬との「構造の比較」の際に役に立つと思います。また、所謂「血がフィットしている」状態かどうかを見る場合にも、私は五十嵐氏理論的な考え方を念頭に置いています。
私は「一般論」と「仮説」を支持するので五十嵐氏理論を使っています。といっても、チェック8項目とか血統評価ランクとか、そこまで厳密には見ません。厳密に見る意義がよくわからないので。

で、これはあくまで一般論と仮説の話です。こうすれば「少しは」効率的かな、ってものです。一般論、仮説から外れたものを包括的に解釈できる理論が必要です。そこで中島理論が登場します。中島理論は父系、牝系の活性、活力から特殊な配合も積極的に評価します。「選抜」という観点はあまり重要視せず、かわりに希少性による闘争心の向上などを評価します。
しかしながら、例えばサラブレッドにアングロアラブを付けたところで(もっと極端に言えばサラブレッドにポニーを付けたところで)、血が希少だからという理由で競争能力が向上することはないでしょう。その意味では「選抜」は前提として扱うまでもない前提なのでしょう。
そして、異系交配を推奨してはいますが、極端な異系交配の成功例が少ないのも現実です(残存先祖数分析やクロスゼロの概念により、異系交配ならなんでも良いと言っている訳ではないですが)。

この二つを使うにあたって、由々しき問題はダミーの存在です。五十嵐氏理論は血統表を信じないことには成立しません(細かく見ずに、この馬はPharosが主体だな、とかいう感じだけでとらえるのであれば、ダミーがいても問題ありませんが)。で、私はご都合主義的に、五十嵐氏理論を使う時にはダミーを無視し(無視せずに、その代わりによりおおざっぱに見ることもあります)、中島理論を使う時にはダミーに注目します。分からないものは分からないので、適当に処理しています。分子生物学的手法による解析も試みられているようですので(ブログ)、そのうち解決されるでしょう。

これらの理論に対する私の考え方は、理論はあくまで道具であって、道具は絶対視するものではない、という感じです。現象を理解する際の手助けとなることもありもありますが、うまく現象を解釈できなかったからといって現象の方がおかしいなんてことを言い出すのはお門違いでしょう。


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