(写真は、「月百姿」展のポスター)
六本木・森美術館、上野・東京都美術館、神奈川
県立歴史博物館に続いて、今回は”美術館で
浮世絵鑑賞”の4回目で、「月岡芳年(つきおか
よしとし) の 月百姿(つきひゃくし)」です。
月岡芳年(つきおか よしとし) は、幕末から明治
初期を代表する浮世絵師です。
おびただしい血が流れる残酷な場面を描いた芳年
の「血みどろ絵」は、谷崎潤一郎、江戸川乱歩、
三島由紀夫などの文学者たちにさまざまな影響を
与えました。
しかし、芳年は、血みどろ絵だけに止まらず、
緊迫感あふれる構図で描いた歴史画や妖怪画、
女性たちの心の動きに迫った美人画など、
様々な領域の作品を描いています。
この展覧会では、芳年の幅広い領域の中から、
最晩年の代表作である、月にまつわる物語を
題材とした「月百姿」(つき ひゃくし)を
取り上げています。
「月百姿」は、月をテーマとしていますが、戦国
武将や美女などの歴史上の人物をはじめ、妖怪や
幽霊までもが登場します。
また、能や謡曲から得た題材も多く描かれるなど、
変化に富む作品です。
(会場:川崎浮世絵ギャラリー:月岡芳年の月百姿
:会期:~9月13日、9月19日~10月18日、開館時間
11:00~18:30、入場料 500円、月曜休館)
川崎浮世絵ギャラリーは、JR川崎駅の北口から
徒歩2分の便利な場所に昨年オープンした
川崎駅前の美術館です。
JR川崎駅の北口改札を出て右へ進み、東口への
階段を下りる途中に、案内矢印(上の写真の赤線
矢印)があるので、それに従って、「川崎駅前
タワーリバーク」ビルの中に入って行きます。
下の写真は、川崎浮世絵ギャラリーへの案内
矢印ですが、描かれているのは、広重の東海道
五十三次の川崎宿です。
(上の浮世絵の説明は、
「バスで行く東海道・日本橋~神奈川」の中の
川崎宿を見てね。)
このビルの3階の「アートガーデンかわさき」の
中にあるギャラリーです。
チケット売り場でチケットを買って、廊下の壁面
に飾られた浮世絵を見ながら奥の方へ進むと、
「川崎浮世絵ギャラリー」の入口があります。
「川崎浮世絵ギャラリー」は、ビルの1室の
コンパクトなギャラリーです。
壁面展示を中心に、50点余りの作品が展示
されています。
(月百姿:源氏夕顔巻
:展覧会のパンフレットから)
紫式部の源氏物語の中の夕顔を題材にしています。
(月百姿:大物海上月
:展覧会のパンフレットから)
平家物語や吾妻鏡などをベースにした能楽の
「船弁慶」(ふなべんけい)を描いたものです。
登場人物は、源義経、弁慶、静御前、平知盛
などで、華やかで劇的な構成です。
(月百姿:はかなしや 波の下にも人ぬべし
つきの都の 人や見るとて 有子
:展覧会のパンフレットから)
「源平盛衰記」の「有子入水事」を描いています。
徳大寺実定が、厳島神社に参籠した際に目を
かけられた内侍有子でしたが、所詮は叶わぬ恋と、
最期は住吉津の沖で海に身を投げました。
(月百姿:吼噦(こんかい)
:展覧会のパンフレットから)
狂言の演目の「釣狐(つりぎつね)」を描いて
います。
表題の「吼噦(こんかい)」は「釣狐」の
ことです。
猟師に一族をみな釣り取られた老狐が、猟師の
伯父の白蔵主(はくぞうす)という僧に化け、
猟師のもとへ説教しに行きます。
白蔵主は、狐は本来は神であること、退治された
狐の執心(しゅうしん)は、人間を取り殺す殺生石
(せっしょうせき)になること、等を語って猟師を
脅かします。
この恐ろしい話を聞いて、猟師は、狐釣りを
止めると誓います。
説教が上手くいったと喜んだ老狐は、帰路、
小歌を歌いながら跳び回るうちに、罠を見つけ、
餌に引き寄せられます。
餌に我慢できなくなった老狐は、「仲間を
釣られた敵討だ。身軽になって食べてやろう」
と理屈をつけて、僧への変身を解いて
しまいます。
そのため、老狐は罠にかかりますが、見回りに
来た猟師と渡り合ううちに、罠を外して、
逃げていきます。
次頁の絵は、(月百姿:賊巣の月 小碓尊
(おうすのみこと:特設ショップで購入した
絵葉書から)ですが、小碓尊は、のちの
日本武尊(やまとたけるのみこと)のこと
です。
(月百姿:嫦娥(じょうが)
:特設ショップで購入した絵葉書から)
中国の神話では、后羿(こうげい)という弓
の名手が活躍しますが、后羿は、最後は、
上に描かれている妻の嫦娥に裏切られ、
弟子の逢蒙(ほうもう)によって殺されます。
(月百姿:朝野川晴雪月 孝女ちか子
:特設ショップで購入した絵葉書から)
浅野川(金沢市)は、犀川を男川と喩えられる
のに対して、女川と称されています。
幕末、加賀藩の湖の干拓事業を請け負った大富豪
の銭屋五兵衛は、加賀藩から湖に毒を流したとの
疑いをかけられ牢に繋がれました。
五兵衛の長男の喜太郎も連座で囚われ、喜太郎の
娘ちかは、上の絵の様に、雪の浅野川に
飛び込んで、父の喜太郎の赦免を願いました。
(銭屋五兵衛については、
「バスで行く奥の細道:金沢」を見てね。)
(月百姿:卒塔婆の月
:特設ショップで購入した絵葉書から)
小野小町を主人公とする「小町物」の代表的作で、
能楽の金剛流では、卒塔婆小町(そとばこまち)
という題目です。
また、月百姿以外の上の絵の様な月岡芳年作品も
一部展示されています。
(風俗三十二相:天ぷら
:浮世絵展のパンフレットから)
(風俗三十二相・天ぷらについては、六本木・森
美術館「おいしい浮世絵展 」を見てね。)
展覧会を見終わって、美術館の下の階の熊本名産
の馬刺しの店で、焼酎で一杯やるのを楽しみに
していたのですが、コロナのため長期休業の
貼紙が・・・
残念!