消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(98) 新しい金融秩序への期待(98) 変革の力(3)

2009-03-09 17:31:36 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)
  実際にCDSの値段はいくらなんだ、となってくると、倒産しなければ、清算しなければ支払額が確定しないのであります。ある程度の価値が残っていますからね。要するに、どれだけの被害があるのか誰も分かっていないということなんです。

  つまり、これは「シャドーバンキングシステム」と申しまして、闇でうごめく銀行なんです。闇でうごめく銀行なので、表の数値は誰も知らない。当局に報告する義務もない。このことによって、問題がここまで大きくなっても当局はなすすべもなく、傍観するしかなかったのであります。もっと、早くから規制をかけておけばよかったんですけれども、ご存知のように、投資銀行の大親分はゴールドマン・サックスであります。

  金融自由化をやった1999年、金融近代化法案をつくった、要するに、証券と銀行と保険との三つの壁をなくした、これがロバート・ルービンという財務長官でありました。彼はゴールドマン・サックスの会長から転身した人間であります。

 
そして、現在の財務長官・ポールソン。これもゴールドマン・サックス会長からの転身者でありました。「出来レース」と言ったら名誉毀損(めいよきそん)になってしまうんですが、そういう一つの権力構造がある。私はこれを「金融権力」と名付けているのであります。

  こういう金融権力構造がアメリカで定着していた。それで、世界の連中は「アメリカに追随しろ」というのでみんなアメリカに殺到していって、ひっくり返った。というのが現状なのであります。

  今月8日、G20と申しまして、世界20ヶ国・地域の金融機関が集まります。それから11月15日、ワシントンでBRICsを始めとして、世界の主だった金融国がやはり20ヶ国集まります。この連中がアメリカをつるし上げることは必至であります。「もっと規制をしろ」「ファンドなんかの存在を許すな」と。

  分りますか、ファンドがどんなものか。例えば、村上ファンドが世間を騒がせていたときに、誰がファンドの出資者であるか分からなかったでしょう。それで、実は日銀総裁(福井俊彦・当時の日銀総裁)が出資していて、「えー!」ということになって、みんな驚いたわけでしょう。世界を荒らしまわる、阪神電鉄を食い散らす、村上ファンド。阪神電鉄の方は全てデータが明らかにされなければならない。ところが、食い散らす側の村上ファンドは会員の名前一つ発表していなかった。こういう一方的なもの。これがアメリカの言う「透明性のある会計制度」だったんであります。

  それで、全ての会計は時価会計にするということであった。倒産しそうなときに、自分の持っている資産がものすごく低いというこの時価会計のために、日本の企業は相次いで倒産したのであります。ところが今、アメリカは時価会計を凍結しています。自分のところが危なくなったら時価会計はやめる。そういった色んなことでアメリカに対する信頼が絶望的になくなったんですね。特に、フランス、それからアメリカ寄りであったイギリス、これがアメリカに対して厳しく対応するようになってきました。

  そして、日本はどうか。麻生さんは11月15日にどう言うんでしょうね。「自由主義を守れ」ぐらいしか言えないんでしょうね。それで世界はみんなアメリカから逃げようとしているのに、日本だけが「アメリカばんざい」で尻尾を振っていくんでしょうね。これでまた日本の政権に対する信頼感がなくなるということだと思います。あそこで麻生さんが格好よくアメリカ批判をやってくれたら、ちょっとくらいは支持率が上がるんでしょうけれども、無理であろうと思います。

  ちょっと話が長くなりました。投資銀行がなくなったんだということ。これは世界史的に見れば起こるべくして起こったので、今、金融恐慌で非常に苦しいけれども、この危機を乗り切ると少しはましな経済システムに戻る可能性が強い。というように私は思います。ただし、主導権はフランス・イギリス・ドイツが持つであろうということで、日本は置いてきぼりをくうであろう、ということは予測できます。以上です。

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