消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(46)新しい金融秩序への期待(46)排出権市場創出批判(1)

2009-01-05 02:46:42 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)


   我々の責任なんですが、経済学、経済の話を聞く人が少なくなっています。教育の話は人がすぐ集まりますが経済は全くだめです。私達の語り方が下手なんだろうと思います。しかし、新自由主義とか新古典派経済学とかが出てきまして、アンチ新自由主義、アンチ新古典派の人間にとっては住みにくいということになってしまいました。

   多くの大学、首都圏大学もそうです。私のいた福井県の大学もそうです。全国レベルにおいて教授会の自治が奪われております。県知事が理事長を指名します。理事長が学長を指名します。学長が人事権を握ります。教授会は蚊帳の外。これが全国規模で進行しています。ハーバード大学でも随分もめてまして、反体制派の学者の首切りがおこっています。チョムスキーががんばっていますがどうなりますか。一斉総粛清ということですから。そのために私のように65歳すぎた年寄りの意義があるんかな。いまさら首になってもしれとる。若い人は私のようなことを発言すると永久に教授になれない。若い人を代弁して発言さしていただきます。

   もうひとつ。皆さん、環境の問題とかサミット問題とかいろいろ今日、お話し伺ったんですけどまず、皮膚感覚として身についていないんじゃないかな。まだ言葉が実感をもって受け止められていない感じが致しました。 そういうことを理解できるような話にさせていただきたいとおもいます。

 グローバリズムとは何か。要するに六本木ヒルズです。今度の洞爺湖サミットです。つまり庶民たちが聞かせてとか、どんな会議?とか、訪ねて行ってもガードマンに阻止されてしまいます。これを経済学ではゲイティッド・コミュニティといいます。塀で囲まれた小さな集まり。お金持ちクラブであります。そこの住民たちは徒歩では移動いたしません。ヘリコプターで移っていって、天から降ってきて、また次の所へ行く。これがグローバル化ということです。グローバル化とは、我々が自由に出入りできるという意味ではなく、我々の立ち入りを禁止して、武力で支配している狭い世界、そこで活動している、超金持ち集団たちの小さなコミュニティ。それが全世界に点在するようになったことがグローバル化なのです。洞爺湖の地は管理しやすい。住民の立ち入りはできない。

   そういったところで世界の活動が行われている。途中は真っ暗闇で何もない。例えば石油が大問題になっています。中東で、アラブで、砂漠の中で石油が発見されるだけでも大変なのに今南米に熱い視線が注がれている。非常に豊かなアマゾンに石油がある。シェブロンなどが石油基地をつくっていく。森林を切り開き、廃棄物を川に流し、住民たちは生活の糧を奪われていく。

   我々はあなたがたのために薬を作っているとごまかして、そういった基地を拡大していく。石油は資源を節約できる。さらに道路を建設することによって人々の移動がスムーズになっていく。あるいはダムをいっぱい建設することによって水力を利用することができる。あらゆる面で環境が改善されますよ、つまり石炭とか木材を使わず、石油という便利な物を使うことによって、炭酸ガスも廃棄量も減る。それをサミットで削減目標にした。エクアドルだったら、削減目標を達成できる。国内では、日本は削減目標を達成していない。そして、日本が削減枠を買う。商社がそれを仲介する。商社たちは、早い目にエクアドルの石油採掘基地の排出権を買い、そして高値で日本企業に売りつける。これは儲かる商売です。環境問題がクローズアップされているのは、それを口にすることが一番いい金もうけの材料になるからです。ここをきちっと押さえておいてください。環境、炭素排出権ビジネス。これが巨大なものになっています。つまり最も環境改善というか、炭酸ガスの排出を少なくできる可能性があるのは途上国です。その途上国でいろんな事業を先進国企業が起こすのです。バイオマス事業とか、エタノール生産とか、我々が食べていく食料をエネルギーを変えていく所に投資していく。

   当然、現地の人間でなく、先進国の人間が投資してもうけていきます。平和な形で田畑が収集されているわけではなくて、それこそエンクロージャムーブメントですね。昔の囲い地を作って追い出していって、住民たちをけちらしていって、外部から言葉が通じない外国人労働者を連れて来て、現地住民との接触を絶って、ブラックウォーター社のような民兵組織を雇って、操業の安全をはかる。そこで得た環境ビジネスを先進国の排出権をクリアできないところに売っていく。とてつもない大きな商売です。


 新自由主義とは市場価格

   新自由主義では、価格は市場によって決定されるとされている。それはウソです。市場で価格が決められるわけではない。市場を通さずにステータスのある人達が作ることによって、値段が決められている。その値段によって人々が買わされていく。

  たとえば、サブプライムローンが非常に大きな問題になりました。金融マンですら2年前まではサブプライムローンという言葉を知らなかったはずです。サブプライムローンの一番の問題は価格がマーケットを通さずに、売り手によって勝手につけられていることです。売り手によってつけられていく、それに箔付けするのが格付け会社です。つまり、売るべき商品に点数をつけるんです。あなたはトリプルAだとかBだとか点数をつけることによって、お金をもらうんです。これが格付け会社。正しくは格付け機関というのです。金もうけがなんで機関と言わなあかんねんということで、私は、格付け会社という言葉を使っています。その親玉、ムーディーズ、S&P。この2社が全世界の証券の75%のシェアをもっています。しかもアメリカ政府はこれに、「国民的に認知された格付け機関」という称号を与える。長い間、それは、3社だけでした。そして5社になり今は7社になっているかもしれませんけど、少なくとも、数は非常に少ない。そのうちの上位2社が全世界の75%のシェアを持ち、アメリカで金融商品を売買するには、このお墨付きを与えられた機関から格付けしてもらわなければならない。こういったことを推進するのが新グローバリズムなんです。価格を通さずに権威でもって、つまりムーディーズの権威、S&Pの権威で商品を売る。それ以外は売らさない。

   抽象的には、価格が市場で決められるべきであるということは正しい。売りと買いで価格が決まるというのは、だれも独占価格を設定することはできないことを意味する。売り買いの妥協点が価格。だれも介入できない。これが本当の民主主義です。しかし、世の中には、そんな価格などない。上手にマーケットを通さずに価格付けしていくテクニック。これが新自由主義だということを理解しておいてください。

   彼らは仲良しクラブを作ります。エリートたちと知り合いになります。権力と知り合いになります。一握りの連中たちが集まって会議する。ですから原住民たちを恐れて、必ず、サミットは人里離れた所で、警備の楽な所でやります。世界の重要な定権は、我々がアクセスできないようなところであるなされる。

   キーワードは、権力から遠い人達はもう売り買いに参加できない。会員制クラブが権力である。

  ファンドの話をします。ヘッジファンド。年率40%位の利益を上げます。それを10〜20年つづけます。私達の定期金利は、1%前後ですよ。んですね。105円の手数料の方が高い。

   一方でファンドの参加者たちは年率40%利益を得ている。多くの人々はこのクラブには参加できません。クラブは言う。会員外の人は駄目です。ファンドは50人を上限といたします。ただし、出資は一人100億円です。福井日銀総裁が村上ファンドに投資していた。1000万円。ウソつけ。1000万円位で参加さしてくれるファンドなど、世界のどこにあるんだ。とてつもない高いお金を出さなければ会員にはなれません。

  お金持ちは自己責任で行動するから失敗しても助けてといわない。だから当局は彼らが失敗しても、大やけどを負っても知らん。そのかわり一切秘密にしてよろしい。そういうことになる。我々が小口で預ける銀行は、貧乏人からお金をあずかってるんだから、下手に運用してやけどをしないように、当局は監視するんだと。監視するから1円の細かい金も明らかにしろ、これがプライベートとパブリックの意味です。プライベートというのはヘッジファンドです。秘密にすることをプライベートといいます。パブリックは皆の目にさらされている。株式公開のことをパブリックオファーというのは、そのためです。村上ファンドが阪神電鉄を買収しようとしたときに阪神電鉄は帳簿の細かいところまでて明らかにしなければならないのに、買収する側はすべて秘密。今から阪神を買収し、阪急に売り付けるからそのとき利益は折半しますので、買収資金を出して下さい。こうしてお金を集める。これがファンドなんです。

  そういったことが許される社会が金融の自由化です。そのシステムをアメリカが作ったのが1990年代。いやだと抵抗していたのが日本の大蔵官僚でした。日本の大蔵省は、通産省と違いまして、かなりアメリカから距離をおいていました。アメリカは、その大蔵省をつぶさなければならなかった。そして、完ぺきにつぶすことに成功したんです。金融庁を作った。竹中平蔵がしゃしゃり出た。小泉のやったことはアメリいかに媚びるポチ以外のなにものでもない。我々が銀行がやばいと思って、いって郵便局に逃げ込んだら、郵便局も民営化です。


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