消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(101) 新しい金融秩序への期待(101) 変革の力(6)

2009-03-12 17:47:56 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

 ちなみに、わが日本は、100年以上続く会社が10万社を超えるんです。世界でこんなことはございません。世界では、せいぜい一つ二つぐらいであります。アメリカなんかほぼゼロに近いんじゃないかな。とにかく、会社が長期存続していくということは大変なことなんですよ。従業員を大事にしなければ絶対にだめです。

  それで、こういう風にお金をみんなでプールして、そしてそこで安定株主になろうじゃないかということですね。株式というのは参加証なんであって、それを売買することによって資産をつくるなんてことはもってのほかである。こういう社会をつくることによって、少なくとも労使一体型ができる。

  私は何だかんだ言っても労使一体でなければいけないと思っているんです。少なくとも、経営者は労働者に対して、安心感を持たせる。そして、労働者は経営者に対して、ものは言うけれども真剣にとにかく協力する。あらゆることに協力する。ということで初めて経済・社会というものは成り立つと思っています。格好よく「総資本対総労働」と言いますけれど、歴史的に全て破産してきたわけですからね。結局、やわな形かもしれませんけれど、労使の話し合いという場をつくっていく制度、これが私はESOPだと思います。

 実は、三洋電機が採用してくれたんです。ところがご存知の通り、ああいう状態になって、ご破算になりました。今度松下と合併するのかも分りませんけれども、ESOPの将来はどうなるんだろうか。実はパナホーム社で講演してきまして、その話を言って「がんばろうや」とやってきたんですけれど、この制度を真剣にわれわれは考えるべきじゃないか。

  特に中小企業の場合はやらなければいけない。中小企業の悲劇ははっきり申しまして、年齢ですよ、後継者の問題ですよ。創業者は随分年齢がいってしまっている。「この会社をどうするのか」というときに、頼むから売らないでくれ。従業員に渡してくれということ。従業員がその会社にいることによって、自分の生きてきた誇りというものがある。とにかく技術を磨いてきた。これが大事なんであります。

  アメリカ社会の情けなさというのは、熟練工を無視するということなのであります。新しければ新しいほどいいのであって、古くからいる社員とか熟練工というものを全部なくしてしまって、そういう連中のそういった作業は中国やインドやベトナムに任せたらいいということになって、熟練工が育つシステムではなくなっている。しかも、大学に入ったら、ハーバード大学なんて授業料580万円ですよ、今。そんなもの無理ですよ。私は自分の子どもでも行かせませんよ。そうすると、どういう連中が行くのかというと、お分かりのように、現在の麻生政権のお坊っちゃん内閣と同じものができていくんであります。2世とお金持ちが支配する社会というのはろくな社会じゃございません。

  大体、大統領候補の奥さんを見て下さい、みんな大金持ちですよ。例外なく。こんな連中たちが政治的指導者になるというのはやはり民主主義でもなんでもない。そうなってくると、全ての元凶というのは何かと言うと、株を売買することにある。

 となってきたら、その株を社会発展のために使っていく。そして、老齢のために引退を考えて、自社を売ってしまおうと考えている中小企業のオーナーたちが、そのESOP制度を利用することによって、株式は労働組合に買ってもらって、ご自身は引退いただく。ということになっていくんじゃないだろうか。こういう制度が私は日本でも緊急にいると思います。

  日本の96%は中小企業であります。日本の大企業が偉そうにできるのは、全部中小企業の持つ技術力です。これを勝手に安く使っていくから中小企業は悲惨なんであって、中小企業が独立するためには、増田さんがおっしゃったように、協同組合的なものをつくっていく。こういう流れを新しい社会運動として、われわれは展開すべきだというように思っています。

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