三日月ライト

主にまもうさのセーラームーンのオリジナル小説を置いています。
ご感想お待ちしております♪♪

ロスト・バレンタイン vol.6

2011-01-23 17:27:35 | まもうさ長編小説
-それではこちらに、お名前をお書き下さい。-

-えっと・・・登録できる文字に、制限は?-

-ございませんよ。ただ、やはりみなさん、比較的短めのお名前をつけていらっしゃいますね。-

-短め・・・かぁ。じゃあやっぱり下の名前だけかなぁ。-

-ふふふ、どなたかへのプレゼントですか?-

-え?あ、はい・・・実は///-

-この日付に見られるものをご所望・・・ということは、恋人へのプレゼントですね?-

-えへへ。・・・はい、そうです。-

-とてもお喜びになりますよ!ロマンチックで美しい、この世でたった一つのプレゼントです。-

-だと良いんですけど。あとは当日、雨が降らなければ。-

-きっと大丈夫。それに、当日以外にも、場所を変えればまだチャンスはありますし。-

-そうですね・・・。あ、はい・・・じゃあ、この名前で。-

-かしこまりました。お名前は・・・ー


-“・・・”ですね・・・-




「ん・・・」

うっすらと目を開けると、見慣れない天井がおぼろげに映る。

見慣れない?

・・・いや、違う。
ここは、病院の中。
私は交通事故にあって、5日前に目を覚ましてから、ずっとここにいる。

「あら、月野さん。ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」

この人は、いつも面倒を見てくれる看護婦さんだ。
病室には、他に人はいないみたい。

あの人たち・・・えっと確か・・・
レイさんに亜美さん、まことさんと美奈子さん・・・
それから、あの大人っぽい人たち。
はるかさんと・・・みちるさん、えと・・・せつなさん、だっけ。

あの人たちは、もう帰ってしまったんだろうか。


「あの・・・その・・・みんなは?」

「ん?あぁ、お友達のこと?
それなら、皆さんさっき帰ったわよ。
月野さんが起きたら渡して下さいって、おいしそうなお団子もいただいてます。」

あの人たちは、目を覚ましてからの毎日、
いつも何か甘い物をおみやげに持って私を訪ねてくれていた。

“うさぎの大好きなお店のだよ”なんて言って、
おみやげを手渡してくれながら、“元気になったら、また一緒に行こう”と笑ってくれて。



なのに私は、
“大好きなお店”のことも、“一緒に行った思い出”のことも、
ましてや、“うさぎ”と呼ばれる私のこと自身、うまく思い出せないでいた。

それから・・・。


「あ、それから。
ちょうど10分くらい前に、衛さんもお見えになってました。
ふふふ、“起こしちゃ悪いからまた来ます”って言ってたわ。月野さん、幸せ者ね。」


・・・そう。

思い出せないことはまだある。
いつもお見舞いに来てくれる、二人の男の人。

二人とも、私にとても優しくしてくれるのに、なんでかな。
二人の顔を見ると、すごく頭が痛くなって、
思い出しそうだった何もかもが、ぐちゃぐちゃと渦を巻き始める。


「あの人は・・・私の・・・。」

答えを出そうとする度に、頭の奥がズキズキ痛む。
なのに考えることをやめてしまうと、今度は胸が締め付けられる。


いろんな記憶がごちゃまぜになる。


“ゼッッタイ、遅レチャダメダカラネ”
“ホラ、ヒトリデ行ッタラ危ナイヨ”
“オ名前オ書キ下サイ”
“危ナイッ!!”


私は誰?あの人は誰?


あとちょっと・・・
待って、思い出しそう。
でも違う・・・わからない・・・

私は・・・



“カシコマリマシタ。オ名前ハ・・・”

“・・・ッタスケテ、オ兄チャンッ!!!!!”



あの人は・・・



トテモ大切ナ、ヒトダッタッテ気ガスルノ。





「う・・・」

「あらあら、月野さん、大丈夫?
無理しなくたっていいのよ、ゆっくりでいいの。
ほら、横になって。」

頭が痛い。胸が苦しい。

「あ、そうだ・・・。
先生からね、良い物を預かっているんですよ。」

わからない。思い出したい。

「ほら、これ。」

どうしたら、思い出せるのか。

「・・・これ、月野さんが事故のとき持っていたバックの中身。
ちょっと汚れちゃってるけれど、全部無事よ。
これを見て、少しずつで良いから、記憶を整理していきましょう?」


「・・・これ・・・私の、もの?」

「えぇ、そうよ。
お財布にお化粧ポーチ、定期入れにキャンディ。それに手帳。」


・・・これしかない。
私の記憶を、たぐり寄せてくれるもの。

私はおもむろに、広げられたものたちに飛びついた。


[つづく]





web拍手を送る


コメントを投稿