三日月ライト

主にまもうさのセーラームーンのオリジナル小説を置いています。
ご感想お待ちしております♪♪

ロスト・バレンタイン vol.5

2011-01-23 17:27:16 | まもうさ長編小説
「ほら、うさぎちゃんの大好きなイチゴショートだよ♪」

「わぁ…!!」

「さっすがまこちゃん、おいしそー!!イチゴ、もーらいっっと☆」

「あぁ~美奈子ちゃん、ちょっと!!ほら、うさぎちゃん、イチゴ取られちゃうよ!!」

「え!?あ、ダ、ダメ…」

「あー美奈子ちゃんクリームついてる、あぁちょっと…!!もう、ヒゲみたいになってるよ!!」

「ふふ、お鼻にもついてる。」

「え?あ、本当だ!!よぉしじゃあうさぎちゃんにもつけちゃおう。ほらっ!!」

「やぁ~!!ふふふ、あははは!!」



「随分と、今日はご機嫌みたいですね。」

廊下まで漏れる賑やかな声を聞きながら、俺は担当の先生と病室へ向かっていた。

「ええ、そのようですね。
お友達の方々がいつも賑やかにうさぎさんとお話してくださってるから、うさぎさんのほうも大分心を開いてきたようです。
この調子だと、元の記憶も近いうちに戻るんじゃないいかしら。」

「そうですか、それは良かった。」

「でもお団子のやつ、俺と衛さんにはまだビクつきますよ?超優しく接してるのに。」

隣を歩くセイヤくんが尋ねる。

「あらあら、じゃあ男性陣にはまだ慣れてないのね。セイヤさんはともかく、早く衛さんのことは思い出してもらわなきゃね。」

「そうですね、最優先でお願いします。」

「え!?何すかその“俺はともかく”って。ひでぇーなぁ。」


うさが目覚めて4日経ち、すべてが少しずつ元に戻ろうとしていた。
病室のドアを開けると、包帯が痛々しいだけのうさの笑顔が目に入る。


そうだ、もうこれで大丈夫。
この調子でいけば、うさの記憶はきっと戻る。

そして今までのように、少し甘えたあの声で、「まもちゃん」と呼ばれる日々も戻る。

大丈夫。

「ほらうさ、俺はりんご持ってきたからあとで食べよう。」

大丈夫。

「あと家から、このうさぎスリッパも持ってきたから。使い慣れてるやつのほうがいいだろ?」

…大丈夫。

俺は鞄から顔を覗かせた写真に目を落とした。
満面の笑みを浮かべたうさが、俺の腕に絡みついている。
うさが治ったら、またこの時二人で行った公園に。

そうさ大丈夫だ。
そして俺は、「焦らずゆっくりと」と仰っていた先生の言葉を思い出し、鞄の奥へと写真を沈ませた。



「衛さん。」

「?あ、先生。」

「うさぎさんも大分落ち着いてきたし、今晩にでも、事故前に持たれていた所持品をお見せして、記憶を戻す訓練を始めてみますね。」

「はい、ありがとうございますっ!!」

「ふふ、大丈夫。すぐに思い出されますよ。事故に遭ったのがバレンタインだったから、早く退院して、デート再開できるといいですね。」

「えぇ…ありがとうございます///」


あぁ、大丈夫だと、そう言い聞かせるように1日を終えた俺に、
悲しい選択肢が突き付けられたのは、その、翌日のことだった。






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