「・・・・・!!!」
うさが、音にならない悲鳴を上げているのがわかった。
“全ての能力を奪う”というヤツの言葉通り、カクンと膝の力が落ち、掲げる両手もけだるくだらりと落ちていく。
それでも必死に俺を守ろうと、顔だけは下げずに前を向いていた。
「・・・うさ・・・!!」
ヤツの掌に、うさの力が神秘的な光となって吸い込まれていくのがわかる。
それなのに、俺は自分の非力さを見せ付けられるがごとく動けない。
足に力を込める・・・
動け!!!頼む、動いてくれ!!
行かなくちゃ・・・うさを守らなきゃ・・・
頼む、頼むから・・・
俺からうさを奪わないでくれ。
その時、ヤツの眉間がわずかに動いた。
「・・・?どういうことだ・・・?」
ヤツはひとりごちて首を傾げる。よく見ると、掌から小さく煙のようなものが上がっている。
・・・今だ!!!
俺はそう確信し、鉛が詰められたように重い上半身を起き上がらせた。
「う・・・さ・・・」
両手に残された少しの力だけを頼りに前へ進む。
ひどい突風に煽られた爪の先に、じわりと血が散っていくのが見えた。
「・・・うさ・・・うさぁ・・」
一歩、また一歩と、苦しそうに俺を守るうさへ近づく。
そしてついに、
「うさっ!!」
うつろな目に涙を溜めて、力なく立ち尽くしていたうさを抱きしめた。
その刹那だった。
「うわぁぁあああ!!!」
ヤツの掌が、雷をまとったように光り、焔に包まれたようにただれ始めた。
苦しそうに顔を歪めるも、開かれた掌は硬直したように、依然として俺たちの能力を奪う。
「ぐぁぁあ・・・ど・・・どういうこ・・・だ・・・力が・・・吸収・・・し・・・きれ・・・」
全身の力が抜ける。視界が曇り、声も出なくなってきた。
うさだけを、ただ両手で包み込むように抱きながら、奪われていく体温と、遠ざかり始める意識を必死で食い止める。
―言葉じゃ・・・―
あぁ。あの時と同じ体勢だ。
この体勢だと、俺はうさの顔が見えないから。だから少し嫌なんだけど。
それでも。
こうして二人一緒にいるだけで、いつも本当に温かかった。
トクン・・・トクン・・・と聞こえる鼓動が、自分の心音と重なって、
やがてほんの少し大きな音になって聞こえるのが、ものすごく、心地よかった。
愛してる。
その、大きすぎて、深すぎて、伝えきれないほどの気持ち。
溢れ出ては満たされる気持ちだけど、俺はこうしているだけで、
言葉よりも確かに、感じることができていた。
そう・・・俺がどれだけ、うさのことを愛しているのか・・・
―言葉じゃ、言えないんだよ。―
そんなことは、伝えられるものじゃない。伝えようとするものじゃない。
そんなことは、二人でいればわかることなんだ!!
最後の力を振り絞り、ヤツの掌に視線を刺す。
すると、大きさに耐えかねた器が音を立てて割れるように、ヤツの掌が粉々に砕け散った。
【つづく】
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うさが、音にならない悲鳴を上げているのがわかった。
“全ての能力を奪う”というヤツの言葉通り、カクンと膝の力が落ち、掲げる両手もけだるくだらりと落ちていく。
それでも必死に俺を守ろうと、顔だけは下げずに前を向いていた。
「・・・うさ・・・!!」
ヤツの掌に、うさの力が神秘的な光となって吸い込まれていくのがわかる。
それなのに、俺は自分の非力さを見せ付けられるがごとく動けない。
足に力を込める・・・
動け!!!頼む、動いてくれ!!
行かなくちゃ・・・うさを守らなきゃ・・・
頼む、頼むから・・・
俺からうさを奪わないでくれ。
その時、ヤツの眉間がわずかに動いた。
「・・・?どういうことだ・・・?」
ヤツはひとりごちて首を傾げる。よく見ると、掌から小さく煙のようなものが上がっている。
・・・今だ!!!
俺はそう確信し、鉛が詰められたように重い上半身を起き上がらせた。
「う・・・さ・・・」
両手に残された少しの力だけを頼りに前へ進む。
ひどい突風に煽られた爪の先に、じわりと血が散っていくのが見えた。
「・・・うさ・・・うさぁ・・」
一歩、また一歩と、苦しそうに俺を守るうさへ近づく。
そしてついに、
「うさっ!!」
うつろな目に涙を溜めて、力なく立ち尽くしていたうさを抱きしめた。
その刹那だった。
「うわぁぁあああ!!!」
ヤツの掌が、雷をまとったように光り、焔に包まれたようにただれ始めた。
苦しそうに顔を歪めるも、開かれた掌は硬直したように、依然として俺たちの能力を奪う。
「ぐぁぁあ・・・ど・・・どういうこ・・・だ・・・力が・・・吸収・・・し・・・きれ・・・」
全身の力が抜ける。視界が曇り、声も出なくなってきた。
うさだけを、ただ両手で包み込むように抱きながら、奪われていく体温と、遠ざかり始める意識を必死で食い止める。
―言葉じゃ・・・―
あぁ。あの時と同じ体勢だ。
この体勢だと、俺はうさの顔が見えないから。だから少し嫌なんだけど。
それでも。
こうして二人一緒にいるだけで、いつも本当に温かかった。
トクン・・・トクン・・・と聞こえる鼓動が、自分の心音と重なって、
やがてほんの少し大きな音になって聞こえるのが、ものすごく、心地よかった。
愛してる。
その、大きすぎて、深すぎて、伝えきれないほどの気持ち。
溢れ出ては満たされる気持ちだけど、俺はこうしているだけで、
言葉よりも確かに、感じることができていた。
そう・・・俺がどれだけ、うさのことを愛しているのか・・・
―言葉じゃ、言えないんだよ。―
そんなことは、伝えられるものじゃない。伝えようとするものじゃない。
そんなことは、二人でいればわかることなんだ!!
最後の力を振り絞り、ヤツの掌に視線を刺す。
すると、大きさに耐えかねた器が音を立てて割れるように、ヤツの掌が粉々に砕け散った。
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