ひこにゃん×ひこにゃん ブログ 彦根にひとつだけの花

ひこにゃん それは古城に住まう心清きみんなのねこ

いちファンの綴るレポート&おとぎばなしのブログです☆

インターミッション Climax

2010-12-27 00:00:01 | 白いイナズマ
今年最後の更新、“インターミッション クライマックス”です。

12月27日、一年前の今日タイガーしゃんは彦根にやって来たそうです。
“【妄想】ひこにゃん”とタイガーしゃんの送り主さんへ捧げます。
















~さよなら
    タイガーしゃん~









2010年12月26日
彦根城 表御殿





「しゅごいご馳走でしたね、タイガーしゃん!」




「はい、美味しくて食べ過ぎてしまいました(笑)」




「最後の晩餐でしゅからね、秋子しゃんも腕によりをかけて作ってくりたみたいでしゅ♪」


「すっかり贅沢に慣れてしまいました(苦笑)
 国に戻ってからがちょっと心配です!」


「しょの心構えがありば大丈夫でしゅよ、タイガーしゃんは出来るトラでしゅ!」




「・・・・・・・・・」



「タイガーしゃんが来てから1年経ったんでしゅね~
 覚えてましゅか?初めて会った時の事・・・」


「もちろんです!」














「はじめまして、ひこにゃんでしゅ!
 お名前はなんて言うんでしゅか?」


「は、はい!
 タイガーと言います!」


「いい名前でしゅね、よろしくタイガーしゃん!」
















「ここに着いた頃のタイガーしゃんは、まだちっちゃかったんでしゅよね(笑)」


「そうだったんですよね~、月日が経つのは早いです!
 明日でお家元ともお別れなんですね・・・・・」


「タイガーしゃん!
 死に別れる訳じゃないんでしゅから!(苦笑)
 また絶対会いましょう、約束でしゅ!!」


「はい、きっとまた必ず!」


「今夜は徹夜で語り明かしましゅよ、覚悟して下しゃい!」


「えぇ望むところです!」




 












2010年12月27日




チュンチュン…




「スースー・・・」





















「カモン様、秋子さん、富さん、1年間本当にお世話になりました!
 このご恩は一生忘れません、ありがとうございます!」


「タイガーさんがいなくなると寂しくなるわね・・・」




「うむ、せっかく仲良くなったのに残念じゃのう・・・

 タイガー殿、ひこなんと3人で撮った写真が出来上がったから渡しておこう。
 それとこれは皆からの心ばかりの餞別じゃ、受け取ってくれ!」




「何でしょう?・・・広げてみてもいいですか?」


「うむ!」


バサッ!




「あっ!こ、これは!?」















1か月前、博物館展示室~



「見事でしゅ!」


「同じ物を関ヶ原で遠くに見た記憶があります!」




「あい、こりが井伊家の“纏(旗印)”と“馬印”でしゅよ、タイガーしゃん!

 長方形の大きいのが“朱地金井桁文纏”で
 ヒラヒラの付いてるのが“金箔押蠅取形馬印”でしゅ!

 どちらも大身の大名のみが持つのを許さりたもので、井伊家の主ここにアリ!
 と武威を示しゅ大事な目印でしゅ」




「じゃあお家元の近くに翻っていたら離れていても分かりますね!」


「うふふ、そりならはぐれてもタイガーしゃんに分かるかもしれましぇんね(笑)
 でもこりは両方とも彦根市指定の文化財でしゅ!
 いくらひこにゃんでもこりを持ち出したら大目玉でしゅよ(苦笑)」


「市長さんや館長さんにですか?」


「あい!」


「そ、それは怖い!(焦)」


「しょう、怖いでしゅよ~(笑)」



















「・・・・・あの時の!
 い、井伊家の“纏”じゃないですか、いいんですか!?」


「レプリカじゃがな(苦笑)
 お主は立派な井伊家の一員じゃ、国に帰るお主に貰って欲しくて皆で用意したのじゃ!」


「!・・・私が井伊家の・・・・・・
 こんなに嬉しい餞別はありません!
 皆さん、ありがとうございます!!」





「それにしてもお家元ったら何をしてらっしゃるのかしらねぇ・・・」


「タイガー殿が発つというのに、まさか寝ているのではあるまいな?」


「ジョー・・・・富さん、ちょっとお家元を探して来てもらえないかしら?」




「いいんです、私はこのまま発ちます!
 お家元とはゆうべたくさん話してお別れも済ませてありますから。

 それにお顔を見るのも辛いですし・・・・・

 お世話係さん、行きましょう!」


「いいのかい?タイガー」




「はい」


「・・・わかった、じゃあ行こうか」


「それじゃあ、皆さんお元気で!」


「元気でのう!」


「またいつでも遊びに来て下さいね!」


「ありがとうございます!」



バタンッ!

キュルル、ブウンッ!

ブウーーーーーン





「これで彦根城ともお別れか・・・・・・

 お家元とよく登った石垣も見納めだ・・・・・

 あれ!?」




「なんであんな所に馬印の“金の蠅取”が・・・

 あっ!!」






「タイガーーーしゃーーーーーーーーーんっっっ!!!」





「!!!!!!・・・・・・お家元!」




























「お家元・・・」









「お家元・・・」











「・・・・・・お家元っ!・・・・・・



 ウオオオォォーーーーーーッ、オオオオォォーーーーーーーーーーッッッ!!!」




「お家元、1年間本っっ当ーーーにありがとうございました!!!
 タイガーはこの1年のことを一生、一生忘れません!!!

 本当に、本っっっ当ーーにありがとうございましたっっ!!」
















「タイガーしゃん・・・

 こりからひこにゃん達はまた離れ離れになってしまいましゅけど
 たとえどりほどの山々と海で隔てられようとも、同じ空で繋がっている限り
 きっとまた会える日がやってきましゅよ!

 そりまでちょっと会えないだけでしゅ!


 この1年、ひこにゃんの方こしょ救われる事が多かったんでしゅよ!
 お礼をいうのはこっちの方でしゅ、ありがとう!

 シベリアに帰っても元気で!」
 





「タイガーしゃん、また会いましょう!!」




「お家元、またいつか!」













   







 






   おしまい



Your Song 儂の謳はそなたの謳 SO(b)

2010-12-09 12:40:06 | 彦根ノムコウ

           ~(a)より続き






旅立った二人を送り出した未来のお家元の脳裏には
最初に降り立った湖北の風景が思い出されました。


「思い出に耽ってる場合じゃないでしゅ、しゃて…」


お家元は緑のスカーフから赤い携帯を取り出すと電話をかけ始めました。
電話を掛けた先は、花しょうぶ通りの“しょうぶ屋”です。


「あいあい、ひこにゃんでしゅ!
 しょう、そのひこにゃんでしゅ!
 すみましぇんが、にゃんぶがいたらお願いしましゅ」


「もしもし」


「にゃんぶでしゅか?ご無沙汰してましゅ、ひこにゃんでしゅ。
 唐突ですみましぇんがお聞きしましゅ、にゃんぶは“刑部しゃん”でしゅね!」


「…………どういう意味かな?」


お家元は生まれ変わったにゃんぶこと、大谷刑部と再会していますから
その正体を認知してますが、この時点のにゃんぶはそんな経緯があった事は勿論知りません。
今の質問に警戒されているのが分かりました。


「実は今、この時間軸のひこにゃんとタイガーしゃんが“関ヶ原の戦い”に向かってましゅ!
 1時間後に2ヶ月半の旅から戻って来ましゅ。
 その時ににゃんぶにいて貰えたらと思ったもんでしゅから!」


「2ヶ月半……」


にゃんぶにはピンとくるものがあったようです。


「そう言うお主は誰じゃ?」


「ひこにゃんは3日後の未来から来たひこにゃんでしゅ!」


「……なるほど!
 詳しい事情はそちらで聴こう、30分で着く!」


「ありがとさんでしゅ、お待ちしてましゅ!」


にゃんぶは告げた時間通りに彦根城にやって来て、表御殿のお家元の自室に通されました。


「ひこにゃん!」




先ほど電話で話していた愛嬌のある声ではありませんでした。
その声は「ぬこ殿」といつも自分を呼んでいた“大谷刑部少輔吉継”その人の声です!


「刑部しゃん!」


お家元は刑部に分かるように事情を話し始めました。


「今この時間軸のお家元とタイガーしゃんが慶長5年の7月1日の湖北へ向かったんでしゅ。
 二人が向こうに行っている時間はこっちの時間では1時間でしゅけど
 向こうでは2ヶ月半の時間が経ってましゅ!
 あの“関ヶ原の戦い”があったあの日、刑部しゃんと別れた後の出来事を話しておこうと思いましゅ」


「儂が自刃した後じゃな………頼む、ひこにゃん」


「あい!」


お家元はあの日、息の続く限りに走って首を埋めはしたけれど
藤堂高刑に尾けられてしまい、あわやという所まで追い詰められた事、
それでも諦めずに言葉に訴え、湯浅五助が文字通り身を挺して防いだ事を伝えました。


「そうか……五助が………」


そして誰もいなくなった後も、夜になるまであの地を離れずに
藤堂高刑が約束を守ったのを確認してから戻ってくる事を告げました。


「お家元とタイガーしゃんはボロボロの状態で帰還しましゅ……
 どうか労わって上げて欲しいんでしゅ!」


「済まなかった……」


「あい、二人は一所懸命あの時代で頑張って…」


「違う!
 儂が言葉を向けたのはいない二人にではない、お主にだ!ひこにゃん」




「あい?」


「話から察するに、そなた自身戻ったばかりではないか!
 なのにそなたは他人事のように段取りに気を配っているが、そんな訳があるまい。
 どれほど心を削って戻った事か……
 儂はまずそなたにこそ礼を言わなければならぬ!
 ひこにゃん、よくぞ儂の近しい者達のために尽力してくれた!
 そなたがいなければ我が首も無残に晒されていたはずじゃ。
 済まなかった、そして深く感謝している、ありがとう!ひこにゃん!」


お家元はまだ記憶の新しい自分の事にもしっかりと気付いてくれていた刑部の言葉に
目頭が熱くなりましたが涙はこぼしませんでした。
未来のお家元の哀しみは3日前に刑部がいてくれた事で介抱に向かっていましたから
刑部が心配するほどではありませんでした。


「刑部しゃん、ひこにゃんなら大丈夫でしゅ!
 ひこにゃんが三日前に戻った時、その時に未来から来てたお家元が
 こうして刑部しゃんを呼んでくりてたんで、ひこにゃんの哀しみはその時に刑部しゃんに
 癒して貰ってましゅ!」


お家元はもうそんな弱い心の持ち主ではなく、この旅でまた一回りも二回りも逞しく成長していました!


「左様か…相分かった!」


刑部はお家元がそう言うのなら、これ以上触れては無礼と察して
言葉をこれ以上掛けるのを控えました。
お家元を一個の武士と認めていた証拠です。
刑部は別の話したかった話題を出しました。


「ひこにゃん、そなたが春に最初の“関ヶ原の戦い”から戻った直後、
戦國丸に来た時があったはずじゃ」


「あい」


「実は儂もあの時戦國丸におってのう、あの一部始終を見ておった」


「しょうだったんでしゅか…」


「あの時のお主はまだ儂に会っていないのが分かったので
 名乗り出ずにいたのだ。

 儂はお主があの時代に再び行く事が分かっていたので、その後もずっと待っておった…
 そして今日とうとうお主から連絡が入ったのだ」


「あの時に……」


「さらに加えるならばじゃが…
 儂が自刃してからしばらく後、自分が魂だけの存在になっていた事に気付いたのだ。

 その後、時代が刻一刻と変わり豊家も内府も消えていった。
 その後永きに渡って続いた幕府さえも消え、日ノ本は近代化を進めると
 外国と渡り合った結果、深い傷を負った…
 それでもこの国の底力は再び陽の目を見るまでに成長を遂げていった。

 儂はこの国の行く末を永きに渡って見続けてきた。
 “ある日”が来るのを心待ちにしながら……」


「“ある日”ってなんでしゅか?」


「“関ヶ原の戦い”のあった年から数えて410年後じゃ」


「今年でしゅね」


「そう、1600年の7月7日に垂井の陣でお主が来たと告げた年じゃ!」


「あっ!」


「儂はそなたに会える日を410年待っていたのだ!!
 そなたが2006年の4月に生まれた時、儂がどれほど心が震えたか知らぬだろうな(苦笑)
 そしていずれお主が過去へ行く日を心待ちとし、同時に儂は再び身体を得る機会を持ったのじゃ。
 儂は今日という日が来るのをずっとずっと待っていたぞ、ひこにゃん!」


「……………!!」


刑部の待っていた期間は尋常な時間ではありませんでした。
生まれる前から自分を待っている人がいたのです!

お家元が思っていた以上の心を携えて刑部がずっと存在していた事実を知りました!

人との繋がりというのは何て不思議な巡り合わせだろうと
お家元の頬を静かにひとしずくの涙が流れました。


「ただいま、刑部しゃん!」




「おかえり、ひこにゃん!」


「ふふふ……刑部しゃんが“おかえり”って今風に話しゃれると可笑しいでしゅね!」


「そうじゃな」




「ははははははははは」


今、二人は本当の再会を果たしました!








「そろそろ二人が戻って来る時刻でしゅ、刑部しゃん一旦部屋の外に出て貰ってもいいでしゅか」


「うむ」


刑部には襖の向こうで待機して貰い、お家元は定位置に座りました。
その直後、後ろで雫が滴る音と気配に気付きました。




「……戻ったでしゅ、お家元………

 歴史は?歴史は元に戻ってましゅか?」


待っていた未来のお家元は3日前の事が鮮明に蘇ってきました。
雨に濡れ…泥に塗れ…歴史を修復する事に全てを掛けていた二人の帰還は
何よりも未来のお家元の心を打ちました。

未来のお家元は戻った二人のひた向きさに震え、力を加減せず抱き締めました!


「確かめるまでもありましぇん!
 ひこにゃんは二人が味わった2ヶ月半の苦労を全て知ってましゅ!
 よく頑張ったでしゅ!よくぞ最後までやり遂げたものでしゅ!
 歴史はしっかりと守られてましゅよ!

 タイガーしゃん、苦労を掛けましたね。
 ありがとさんでしゅ、ありがとさんでしゅ!

 お家元!
 よくぞ最後まで諦める事なく踏み止まって戦ったもんでしゅ!
 どりほど辛かった事か、どりほど胸が詰まった事か!」


涙が止まりませんでした…
二人が泣く事を止めてまで頑張ったいた事が切なくて仕方ありませんでした。
自分にはその気持ちが分かり過ぎるほど分かっていたから尚更です!

抱き締めた二人が次第に自分の隠していた感情に気付き始め
泣き出しました。

声を殺さずに大声で泣く二人、それがどれほど哀しみを孕んでいるかという証拠です。
いつしか未来のお家元は宥める役になっていました

 
「あい…あい…」




二人は泣いた労力で立っていられないほどでした。
呼吸をするのも忘れて泣いていたようで、むせかえる事がしばしばです。


「お家元、タイガーしゃん!
 会わせたい方がいましゅ、入って下しゃい!」


未来のお家元はにゃんぶに入って貰いました。


「二人が“タイム・スリッパ”している間に来てもらったんでしゅ」




刑部は帰還した二人に大いに感謝し、二人を抱き締めました。
二人を労いながら刑部は未来のお家元にも目配せをして力強く頷きました。

未来のお家元もそれに応えて頷き、静かに部屋の外へ出ました。


廊下では秋子さんがハンカチをクシャクシャに握りしめて泣いていました。


「お家元……」


「秋子しゃん、盗み聴きはよくないでしゅよ(苦笑)」




やっぱり!とお家元は苦笑しました。
でも聞かれていた事はお家元にはかなりの助けになっていたので
本気で咎めるつもりはありませんでした。


「お家元、秋子は……秋子は……何と言ったら言いか………」


「秋子しゃん、せっかくのお化粧が台無しでしゅよ(笑)
 二人の事はにゃんぶにお任せしゅれば大丈夫でしゅ。

 戻ったお家元とタイガーしゃんは雨に濡れて体が冷えてましゅから
 熱いお風呂と温かい食事の用意をお願いしましゅね。

 2ヶ月半の間、布団で眠る事も少なかったでしゅから
 フカフカの布団をお願いしましゅ」


「もちろんです、もう準備は万端整えてますもの!」


「流石はしゅーぱー家政婦・秋子しゃんでしゅ!(笑)

 3日後にバームクーヘンをお家元に渡して上げて下しゃいね。
 そりじゃあ、ひこにゃんは元の未来に戻りましゅ」


「お家元も晩御飯を食べていって下さいな!」


「ひこにゃんにはひこにゃんの世界の秋子しゃんがいましゅから大丈夫でしゅ(笑)」


「そうですか、本当にご苦労様でしたお家元!」




お家元はニッコリ笑って未来に戻って行きました。
お家元の永い永い旅が今本当に終わりを迎えたのです。








        おしまい



Your Song 儂の謳はそなたの謳 SO(a)

2010-12-09 12:32:51 | 彦根ノムコウ
“【妄想】ひこにゃん”に捧げます。







2010年9月某日
彦根城 表御殿

“未来のお家元、疾走る”編














「タイガーしゃん、そりじゃあちょっと3日前に行って来ましゅ!」




「はい」


“関ヶ原の戦い”から戻って3日、今度はお家元が3日前の自分達に大事を伝えるため
過去へと戻ります。


「しょれ!」


一瞬で時間を飛び越え、3日前の同じ場所である無人の自室にお家元は現れました。
時計の時刻は15時20分を刻んでいます。


「狙った時刻ピッタリでしゅ!」


ここは自分の存在する時間軸ではありませんでしたが、住み慣れた自室だったので腰を下ろしました。


「よいちょ」




すると庭に佇んでいたタイガーしゃんが焦りながら近づいて来ました。


「お家元、お稽古お疲れ様でした」


タイガーしゃんは部屋の時計を一瞥すると少々驚きました。


「????・・・お家元、まだ15時半前ですけど、どうかされたんですか?」


この時はこの時間軸のお家元がお稽古に出ている時間ですから
タイガーしゃんの心配は当然です。


「お稽古の方は心配ありましぇん!
 でもタイガーしゃんには先に説明しておきましゅね」


「???」


「タイガーしゃん、耳を澄ませて下しゃい。
 まだお弟子しゃん達の歓声が聞こえましぇんか?」


「………本当だ!
 どういう事ですか、お家元?」


「お家元はいつも通りお稽古をしてるって事でしゅよ、タイガーしゃん。
 ひこにゃんは3日後の未来からきたひこにゃんなんでしゅ!」


「未来から“タイム・スリッパ”してきたお家元という事ですか!?」


「あい、
 今お稽古に出てるお家元には心配事があるはじゅなので
 その解決のためと、ある頼み事を聞いてもらうために来たんでしゅ!」


「そういう事ですか!」


「あい!」





15時40分頃、逞しい足音と共に(笑)廊下を歩いて来る者がいます。


ガラッ


「ただいま、タイガーしゃん!」




「あい!」





ビクッ!




「そりゃあそーですよね・・・」




懐かしいやり取りでした。






その後、3日前のお家元に“タイム・スリッパ”を伝授し、5分後に戻って来るよう頼んで
二人をまず彦根寺の住職の元へと送り出しました。


「ま、問題ありましぇんよね、
 5分後には無事に戻って来てくれるはずでしゅから。

 ・・・・・・・・・・問題は戻ってからでしゅ」




お家元は今回来た本当の目的である“2度目の関ヶ原の戦い”行きを思い浮かべていました。


「ひこにゃん、ちゃんと説明出来ましゅかね……」


その辺がちょっぴり不安なお家元です(苦笑)
その時、部屋の襖をノックする人がいました。


トントン!



「お家元、失礼しますね」


「あい、何でしゅか?秋子しゃん」


「晩御飯のリクエストがあったらお聞きしようと思って」


「秋子しゃんにお任せしましゅ!
 ただ出来るならオカズを1~2品増やして上げて下しゃい。
 きっとお腹を空かせて戻ってくるはずでしゅから!」


「ふふふ、分かりました」


「そりと3日後にお礼に行かないといけない方がいるんで
 たねやのバームクーヘンを用意して貰いたいんでしゅが・・・・・」


「では3日後の朝に焼き立てを買って参ります」


「あっ!そりから~・・・・・」


「お風呂も沸かしておきましょうね」


「!・・・すみましぇんね!」


パタン


「・・・話した事ないのに、秋子しゃんは全てご存じみたいでしゅね…
 まるでお家元がこりから長い旅に出るのを知ってるみたいでしゅ」




秋子さんが引いた後、お家元は部屋の本棚にある“ぬこでもわかる関ヶ原の戦い”を手に取り
重要なページを開いて確認しました。


「やっぱり……
 ひこにゃんがいる3日後の本の記述は元に戻ってましゅけど
 この3日前の本の記述には、刑部しゃんの首は見つかった事になってましゅ!
 この世界のお家元が1600年に行かないと、この記述は変わらないんでしゅね……」


お家元が本棚に本を戻した直後、二人は戻って来ました!


「しょれ!」


「おかえりなしゃい、キッカリ5分でしゅ!・・・・・・お家元、首尾は?」


グッ!




「そりは重畳でしゅ」




お家元は刑部達と行動していた時に使った言葉遣いが抜けておらず
古い言い方で答えました(笑)


「あい、こりで心残りは全て清算でしゅ。
 お家元、未来からの援軍どもでしゅ」


「・・・・・・・・・・」


まだ帰る訳にはいきませんでした、本題はこれから話すのです。


「・・・・・・・どうかしたんでしゅか?」


「・・・ひこにゃんが今回来たのは”タイム・スリッパ”の伝授と”切り株”を
 届けに行ってもらうのが本当の目的ではありましぇん。
 実はもっと大事な用があるんでしゅ!

 ちょっと失礼しましゅね」


お家元は再び本を取り出し、今回来た本当の目的を二人に打ち明けました!
過去のお家元は驚愕し、どうすればいいか未来のお家元に尋ねました


「変わってしまった歴史は元に戻さなければいけましぇん!
 お家元、にゃんぶの名誉を護るため、再び関ヶ原へ向かって下しゃい!」




でも過去のお家元は簡単には引き受けてはくれませんでした。
自分がこの時感じた不安をお家元は思い返して当然だと思いました。

過去のお家元は成功への不安を吐露しました。
お家元は結果を教えられない不文律を守って最後に大事な言葉を言いました!
その言葉は土壇場で過去のお家元が立ち直るキッカケになる重要な言葉です!


「お家元には力の限りと知恵を尽くして頑張って欲しいんでしゅ!!」


この言葉は過去のお家元の脳裏に知らず知らずのうちに深く刻まれ
2ヶ月半後に藤堂高刑と遭遇した時に発動する言葉となりました!

未来のお家元が仕掛けた大事な大事なタイマーです。


「・・・・・正直自信はありましぇんけど、行きましゅ!自分で蒔いた種でしゅからね」


「そりでこそお家元でしゅ!」


分かっていた答えでしたが、未来のお家元には嬉しい返事でした。


「・・・・・無理難題ばかりでお家元には苦労を掛けてしまいましゅが・・・・」




自分が経験した苦労をこれから長期に渡って掛けるかと思うと未来のお家元は気が引けました。


「何言ってるんでしゅか(笑)
 お家元が通った道をひこにゃんが通らないで済ます訳にはいきましぇんよ!」


「頼もしいでしゅ、流石はお家元でしゅ!」


本当でした。
出発の準備を整えた過去のお家元とタイガーしゃんに未来のお家元は言います。


「お家元、全てが終わったら1時間後の18時に戻って来て下しゃい」


二人が向こうで頑張っている間に、こちらでもやるべき事に必要な時間です。
二人が未来のお家元の目の前から1600年に向けて旅立って行きました。


「頼みましゅ!お家元、タイガーしゃん!」







             (b)に続く~

インターミッション XXXIII(b)

2010-12-06 00:55:12 | 彦根ノムコウ
            ~(a)より続き






4人は肺が破裂するかの如く走り続け、戦場の怒号が微かに届くかというぐらいの
距離まで達して埋める場所の目星を付けました。


「ここへ埋めよう!」


「タイガーしゃん!
 人の手で堀っては埒があきましぇん、頼みましゅ!」


「はい!」


タイガーしゃんは言われた場所の土を、その逞しい前脚と爪でみるみる堀り
あっという間にその体躯が半分隠れるような大穴を掘りました。


「こりでどうでしゅか、五助しゃん」


「充分じゃ!」


五助と三浦は穴の底に丁重に刑部の首を納めて合掌すると
急いで掻いた土を戻しました。
土を全て戻し叩いて固めていた時、風向きが変わり
自分達が来た方から風が吹き始めました。


風向きが変わった瞬間、タイガーしゃんの全身に激しい緊張が走り毛が全て逆立ちました!
人と鉄と血の臭いが風に乗って届いたからです!


ほぼ同じ瞬間、お家元は後方20mほどの樹木から数羽の鳥が飛び立ったのに気付いていました。
まるで何かに驚いて飛び立ったかのように感じたからです。

二人はその樹の辺りを同時に注視しました。


「タイガーしゃん…」


「はい…」




最早間違いはありませんでした。


「しょの樹の下に潜んでいる者、出てきなしゃい!
 そこに居るのは分かっていましゅ!」


樹の下の茂みから音もなく鑓がゆっくりと立ち、一人の武士が立ち上がりました。
その具足は返り血や泥で汚れ、兜の前立ては折れており
鑓には激しい戦闘を物語る血と脂が鈍く光っていて
兜の下の窪んだ奥の目は血走り、戦闘で昂ぶったままなのが分かります。


絶望的でした!


細心の注意を払いながら移動したつもりだったのに追跡を防ぐ事が出来なかった!
自分達はこの時の為だけにに“タイム・スリッパ”したはずなのに
全てが水の泡になってしまった!

お家元は最早覆す事が不可能な状況になってしまったと、己の無様な行動を呪いました。


「あぁ…」


三浦喜太夫は両膝を折ってへたり込み、湯浅五助は無念そうに拳を握りしめ
顔には深い絶望の色が濃く出ていました。


お家元は五助・三浦の様子を見て胸が張り裂けそうになりました。
この二人の絶望は自分などより遥かに深いものだと思ったからです。


「(ひこにゃんが来たせいで歴史を変えてしまって……
  五助しゃん、三浦しゃん…ごめんでしゅ!
 ひこにゃんのせいで、ひこにゃんが無力だったせいで……)」


その武士は茂みから出ると一歩一歩近づき、堂々と名乗りました。


「某、藤堂家家臣・藤堂高刑(とうどうたかのり)と申す!」


お家元はブルッと全身が震えました!
この者こそこの場に居合わせる事が数多い史書に書き残されている者だったからです。
変わった歴史を修復するのはもう不可能なんだ……とお家元を更に深い絶望が支配しました。


「藤堂高虎殿の甥の高刑殿か…」


「その方らも名を名乗られよ!」


「……大谷家家臣・湯浅隆貞…」


「!…なんと大谷刑部殿の腹心である湯浅殿か!?
 それでは今埋められていた首らしき物は……」


藤堂高刑はそれで全ての状況を把握したようです。
埋められた首の価値は、間違いなく今日の戦で最大最上の手柄となる物です!


「(お家元、ごみんなしゃい!!)」


お家元は自分に細かく注意して振る舞うように訓戒した未来のお家元に心の中で謝りました。
さらに不甲斐ない自分を悔みました。
そのお家元の心の中に、この旅に出る前の光景が浮かびます。


“「お家元には力の限りと知恵を尽くして頑張って欲しいんでしゅ!!」”


未来のお家元はそう言っていました。
その言葉が浮かんだ瞬間、お家元の心に消えかかっていた火が再び揺らぎました!


「(ひこにゃんは本当に出来る事を全部やったんでしゅか!?
  未来を知るひこにゃんには何よりも強力な武器があるはずでしゅ!)」


お家元はこの藤堂高刑という人物がどのような者か知っています。
未来の情報を駆使して戦う事こそが、お家元の武器なのです!
お家元の中で再び大きな炎が燃え上がりました!


バッ!!

「しょなたは武士か否か!」


お家元が突然大声で問い掛けました!
直訳すれば“あなたは武士ですか?それとも違いますか?”という意味です。
あまりにも場違いで、この場にふさわしくない問い掛けに全員が耳を疑いました。


「お家元…?」


「ぬこ殿…?」


タイガーしゃんや五助ですら理解出来ない言動でした。
問い掛けられた当事者の藤堂高刑は、ただでさえ戦場での雰囲気を引きずっていたので
その馬鹿馬鹿しい質問に苛立ちました。


「その方は儂の姿かたちを見て、武士に見えぬのか!
 そんな節穴な目は捨てるがよい!!」


バッ!!

「今一度、問いましゅ!
 しょなたは“五徳”を持った真の武士か、否か!」




お家元が発した質問はもちろん額面通りの外見を指した言葉ではなく、
“あなたは仁・義・礼・信・智の五徳を持った武士ですか?”という意味でした!


全員がハッと気付きました!これは極めて真面目な質問だったからです!
この質問に対して答えは一つしかありません、イエスです。
自分はそうじゃないなどと、名立たる者ほど答えられない質問でした。


「いかにも!」


藤堂高刑は嘘を言う必要もなく、逡巡せずに堂々と答えました!


「しょうでしゅか……
 ならば改めて願い奉りましゅ!」


お家元はその場に素早く土下座しました!


「今ここに埋めたのはお察しの通りの方のものでしゅ!
 あにゃた様が真の武士であるならば、ココに埋めた事をどうか黙っていて欲しいんでしゅ!
 この方は病で崩れた己の身体を何よりも恥じていたんでしゅ!
 この上はどうか人目に晒す事なく、静かに眠らして欲しいんでしゅ!
 後生でしゅ!どうか!どうか!何卒お願いしましゅ!!」


お家元はこの藤堂高刑が義を弁えた人物だと知っていたので、その心に訴えようと賭けたのです!
タイガーしゃんが、三浦が、五助も続けて土下座をしました。
お家元の懇願は全員の総意だったからです!


「………」


藤堂高刑は押し黙っていました。
分からなくはない頼みでしたが、都合が良い頼みとも云えます。
その藤堂高刑の葛藤に最初に気付いたのは湯浅五助でした。


「藤堂殿!
 ただでとは言いませぬ、某の首を代わりに差し上げ申す!
 その代り、どうか我が主の首だけは他言せずに頂きたい!
 どうか伏してお願い申し上げる!!」


「何!?
 御身の首を差し出すと申されるか!?」


「いかにも!」


「五助しゃん!?」


五助はお家元に口を挟ませないように制しました。
放っておいたらこのぬこはその役目も引き受けかねません。



「相分かった!
 そなたらの願い、この高刑確かと承った!」


そこまでの覚悟を示す武士の願いに応えなければ武士だと云う資格はありません!


「忝い!」


五助は藤堂高刑の言葉に安堵しました。





「五助しゃん……」


「ぬこ殿、そなたのお蔭じゃ。
 これで殿の名誉は守られるであろう!」


「でも、でも五助しゃんが……」


「儂は元々一人助かろうなどと思うておらなんだ。
 これで儂は皆に恥じる事無く再び会えるというものじゃ!

 喜太夫、介錯を頼む!」


「旦那様…」


三浦喜太夫は泣いていました。

五助は手早く具足を脱ぐと、藤堂高刑に一礼して腹を切りました。





三浦は泣きながら両手で主の首を恭しく差出し藤堂高刑に渡しました。
高刑は布に包んで鑓に担いで立ち上がると


「湯浅殿との約定、確かとお約束致す!」


そう告げました。


「お願いしましゅ!」


お家元は期待を込めてずっと頭を下げ続けていました。


「御免!」


藤堂高刑は去り、三浦喜太夫も生き残るのを良しとせず関ヶ原に戻って行きました。
こうしてお家元とタイガーしゃんの二人以外、誰一人残りませんでした……


















この日の戦は周知の通り、家康率いる東軍の大勝利となりました。

そしてその日の夜、刑部が使っていた藤川台の小屋に雨を避けるため家康が入りました。
その陣小屋には今日の戦に参加した諸将が次々と目通りを願ってやって来ました。

家康は引きも切らない諸将全てに上機嫌に対応し、
それぞれの誇る働きに対して細やかに褒め称えました。



そんな中、主君であり叔父である藤堂高虎と共に藤堂高刑もやって来ました。
藤堂高刑は湯浅五助の首を持って、家康の前に罷り出ると


「この首は大谷刑部の腹心中の腹心、湯浅五助のものではないか!
 いや素晴らしい、高虎殿は良き甥御を持たれたのう!」


「恐れ入りまする!」


「高刑殿と申されたな、
 儂が聞くところによれば、刑部の輿はそのまま残っていたそうじゃ。
 とすると刑部は自刃した可能性が大きいのだが
 湯浅五助ほどの重臣ならば、その首の行方を知っている筈じゃ。
 高刑殿はそれについて何か聞いてはおられぬか?」


「確かに存じております!

 されど某は湯浅殿と刑部殿の首の所在を決して明かさぬと誓ってその首を討ちました。
 たとえ内府様の御言葉といえども他言する事出来ませぬ!
 もしお赦し戴けぬというのであれば、如何様にもご処分下されますように!」


「刑部の首の在り処を明かしたならば、本日一番の手柄は正しく其処元のものじゃが
 それでも言えぬか?」


「平にご容赦のほどを…」


「うむ、見上げた心掛けである!
 天晴れなる振る舞いじゃ、高虎殿は真に良き甥御を持たれたものじゃ!
 我が鑓と佩刀をお譲りしたいが受け取っていただけるかな?」


「有り難く頂戴いたしまする!」


藤堂高刑は湯浅五助との約定を守って家康の元から退きました。








「叔父上、申し訳ありませぬ」


「何を言う、家康公は上機嫌だったではないか。
 案ずる事はあるまい」


「相済みませぬ…」


雨の中、藤川台の陣小屋から自陣へ戻る道すがら
目の前に只ならぬ気配を感じた二人は太刀を構えました!


「何奴!?」


「むっ、そなた達は…!」


二人の前に現れたのはお家元とタイガーしゃんでした。


「五助しゃんとの約定を守って頂き感謝しましゅ」


お家元は今しがた陣小屋で為されたやり取りを知っている風でした。


「礼には及ばぬ。
 儂は生涯他言致さぬ、其の方らも安心するがよい」


お家元は一礼すると雨の降る闇の中へと消えて行きました……


「高刑、あの者らは何者じゃ?」


「某も存じませぬ…
 ただ刑部殿や湯浅殿とは浅からぬ者達だというのは分かりました。

 ……叔父上、儂は刑部殿と湯浅殿の墓をこの地に建てたいと思うのですが…」


「良き考えじゃ、儂も手伝おう!

 高刑、良き敵に出会ったのう」


「はい」








































それから410年が過ぎました…


彦根城表御殿の自室で未来のお家元は二人の帰りを待っています。
時刻は午後6時になりました。


後ろに気配を感じた未来のお家元が振り返ると、お家元とタイガーしゃんが
410年前から戻って来たところでした。
二人は雨に濡れて雫が滴たったままで、全身泥で汚れていました…


「戻ったでしゅ、お家元…」




戻ったばかりのお家元は帰還した事を告げました。


「お家元、歴史は?歴史は元に戻ってましゅか?」


戻ったお家元達の関心はそれだけでした。

未来のお家元は二人がたった今まで味わっていた辛酸が
どれほどのものか知っています。
自分自身、帰還から3日しか経っていないので
それは二人と全く変わらない想いでした!

未来のお家元は二人を抱き締めました!力いっぱい抱き締めました!


「確かめるまでもありましぇん!
 ひこにゃんは二人が味わった2ヶ月半の苦労を全て知ってましゅ!
 よく頑張ったでしゅ!よくぞ最後までやり遂げたものでしゅ!
 歴史はしっかりと守られてましゅよ!

 タイガーしゃん、苦労を掛けましたね。
 ありがとさんでしゅ、ありがとさんでしゅ!

 お家元!
 よくぞ最後まで諦める事なく踏み止まって戦ったもんでしゅ!
 どりほど辛かった事か、どりほど胸が詰まった事か!」


未来のお家元は号泣しながら二人を抱き締め続けました。
逆に戻ったばかりの二人はまるで泣く事を忘れているかのようです。

それでも号泣する未来のお家元のせいで二人は次第に涙が溢れてきました。
二人は悲しくなかった訳ではありません。
あの立派な戦友達の前で泣くのは失礼とし、また大事を心得ていたので
胸の奥にしまっていただけでした。


「ひぐっ……ひっ、ふえぇ~~~」


「うっ…うぅ~うおぁ~~~」


「ひぐっ、ひぐっ…信勝しゃんが…戸田しゃんが……
 平塚しゃん…刑部しゃん…五助しゃん、そりにみんにゃが~~~みんにゃが~~~~!!
 ふえええええええぇぇっっ!うえええええええええええええええーーーーーーーーーっ!!!」


「あい…あい…」




戻ったお家元とタイガーしゃんは堰を切ったように泣きました!
1600年では一切泣く素振りも見せなかった二人でしたが、今は誰憚る事無く
声を上げて泣きました!














二人はしばらく未来のお家元に縋りついて泣いていましたが
やがてその腕から崩れ落ち、畳に膝を付きました。



「お家元、タイガーしゃん!
 会わせたい方がいましゅ、入って下しゃい!」


ガラッ


「二人が“タイム・スリッパ”している間に来てもらったんでしゅ」




そこに立っていたのは“おおたににゃんぶ”でした。

未来のお家元は自分だけではなく、前回の関ヶ原からの帰還の時のように
関わった当事者に立ち会って貰うのが、戻って来る二人には必要と感じて
花しょうぶ通りの“しょうぶ屋”に連絡を取って来て貰ったのです。

未来のお家元が二人に帰還する時間を指定した訳がこれでした!

そしてにゃんぶ自身もこの日が来る事を心待ちにしていました!
彼もまた、みつにゃんやさこにゃんと同じくこの時代に生まれ変わっていたので
未来のお家元から連絡を受けた時には、一も二もなく応じ
彦根城へ駆け付けてくれたのです!

にゃんぶは涙の止まらぬ二人の前に立つと、


「ひこにゃん、タイガー殿、
 訳は全てこちらのひこにゃんから聴いた。
 よくぞ無事に戻られた!

 二人のお蔭で儂の首は誰の目に触れる事もなく、あの地で土に還っているはずじゃ!」


その声は半日前まで聞いていた刑部の声そのものでした!


「五助の最期も聴かせてもらった…
 二人のお蔭で五助もきっと喜んだ事であろう…

 あの日あの場にいた皆に代わって言わせてほしい。

 礼を言うぞ、忝い!!

 ありがとう!ありがとう!!」


「刑部しゃん!」


今度は刑部が二人をしっかりとしっかりと抱き締めました!

刑部はこの時代に肉体を得るまで、この近江の空に魂を漂わせながら
410年間、お家元とタイガーしゃんの帰りを待っていました。
そして今日とうとうその願いが叶ったのでした!








お家元達はこれ以上ない成果を上げて“2度目の関ヶ原の戦い”から戻る事が出来たのです!





















~3日後



秋子さんがお家元の所に白とオレンジの市松模様の紙袋を持って来てくれました。


「お家元、お礼に持って行かれるという“たねやのバームクーヘン”ですよ」


「すみましぇん、秋子しゃん!」




お家元は自室にこもりました。


「タイガーしゃん、そりじゃあちょっと3日前に行って来ましゅ!」




「はい!」



お家元は3日前の自分達に全てを託すためと、自らがナビゲーターの役目を
果たすために過去に向かいました。











    おしまい
           







 ※次回おまけで3日前に旅立ったお家元の視点での“スピンオフ”が加わります。


インターミッション XXXIII(a)

2010-12-06 00:53:08 | 彦根ノムコウ
”【妄想】ひこにゃん”に捧げます。






Your Song 儂の謳はそなたの謳

慶長5年(西暦1600年)9月15日
美濃国 関ヶ原 正午過ぎ

最終章
 ~刑部・殉じた者達、もうひとつの武士たちの謳~















今まで参戦しなかった後ろめたさを払拭しようという必死な思いからか
松尾山を駆け下りて行く小早川勢は、激しい雄叫びと戦意を表に出して麓に殺到しました!

ずっと温存されていた小早川勢の士気と体力は並外れて高く
相手になる軍勢は気の毒というしかありません。

小早川勢は戦闘で前に出ていた大谷勢の後背を突くルートを選択し、
疲れ切った大谷勢を山上からの攻撃で蹂躙しようという狙いです。

この戦闘に参加したタイミングと位置から考えると、これは取り得るべき戦術の中では絶好の策です。
側面や後方から、また登り方向から攻撃を受けた軍勢ほど惨めなものはありません!


大谷勢は小早川勢の正に格好の餌食で、山から駆け下りた勢いそのままに襲われる所でした!



その瞬間!


「放てーーーーーーーーーーっ!!!」


パパパパパパパパパパパパパッッッッ!!!!!!!!


側面から攻撃を受けたのは小早川勢の方でした!
鉄砲隊による近距離一斉射撃です。


「ふ、伏兵か!?」


思わぬ攻撃を受けた小早川勢は被弾した兵が次々と倒れ、勢いが止まらぬ後続の人馬が殺到し
混乱を来たしました!


「そのまま」


伏兵の将は容赦しない命令を続けました!


「放てーーーーーーーーーーっ!!!」


パパパパパパパパパパパパパッッッッ!!!!!!!!


続けての銃撃に被害は拡大し、馬は仁王立ちになり兵は狼狽えました。
伏兵の将は勿論、大谷刑部です!


「おのれ、小早川!」


「太閤殿下の恩を忘れおって!!」


自分達のやや後方で起こったこの戦闘に気付いた平塚為広と戸田勝成は激しく憤り
前面の藤堂・京極・織田勢よりも小早川勢に敵対するため、軍勢を取って返しました!


混乱した所に平塚・戸田隊の攻撃も受ける形になった小早川勢は算を乱して


「退けーーーー、ひと先ず退けーーーーーーーーっ!」


松尾山を最後まで駆け下りる事が出来ないばかりか、また山の中腹へ向かって一旦退く事となり
小早川勢の初動は見事に封じられました。
けれど今度は平塚隊と戸田隊に危険が迫ります!
軍勢を返した事により、前面の藤堂・京極・織田勢が攻め寄せて来たからです。

その時、自軍から一騎の騎馬武者が駆け出しました!
両軍の間に馬を走らせた騎馬武者は次の瞬間大音声で


「我こそは石田家家老・嶋左近が一子、嶋信勝なり!
 武勇に名立たる藤堂勢に、我との一騎打ちに応ずる将はおられぬか!」


源平の合戦の頃のように名乗りあって一騎打ちに臨むべし、という心算のようです。


「信勝殿!」


「むぅ…!」


平塚と戸田はその無謀な行為に臍を噛みましたが、その時信勝は二人の方向にだけ見えるように
掌を払いました。


「(今のうちに…)」


信勝は時間を稼ぎ二人に態勢を整える時間を作って貰うため一騎で進み出たのです。
最もそれが全てではなく、この先の運命を察した信勝は
晴れ晴れとした戦場で最期を飾ろうと思ったのかもしれません。
おそらくこちらが正解でしょう、信勝は左近に戦場での振る舞いを
徹底的に叩き込まれた立派な武人です!
平塚と戸田はその武者ぶりを認め、すぐさま軍勢を立て直しました。



「これは如何した事か!?
 音に聴こえた藤堂勢に、この若輩者と一騎打ちに及ぶ意気のある将がおられぬのか!」


信勝は心にも無い挑発をして藤堂勢をけしかけました。
すると藤堂勢からゆっくりと一騎の騎馬武者が進み出て来ました。


「“鬼の左近“の倅なら相手にとって不足無し、某がお相手仕ろう!」


「名をお聞かせ願いたい!」


「藤堂家家臣、藤堂良政!」


「(敵将・藤堂高虎殿の従兄弟で“若江八人衆”の玄蕃頭殿か…)
 これは願ってもない相手!いざ!!」


二人は鑓を構えて向き合うと馬の歩みを徐々に早めてぶつかりました!

ギャリーーーーン!!

激しい金属音が鳴り二人が鑓を合わせて擦れ違いました!
互いの腕は痺れ相手の力量が並々ならぬものだと認識し合いました。

今一度!もう一度!さらにもう一度!
数度に渡って鑓を合わせましたが勝負はつきません。
この勝負の模様が目に届いている者達は、魅入られたように戦闘を中断して注視しました。

信勝は次第に上がってきた息の中、静かに微笑みました。
次を最後と心に定めたようです。

再び鑓を合わせようとした寸前に信勝が鑓を捨てました!
それを見た藤堂良政も鑓を捨て、二人は両腕を掴み合って馬から転げ落ち
腕ずくでの組み合いになりました。
上になり下になり首を絞め合いながらも最後まで意識を保っていたのは信勝でした。
藤堂良政は落ち、信勝は佩刀でその首を一気に掻き切ると高々とその首を掲げ


「藤堂玄蕃頭良政、討ち取ったり!」


と大音声で勝ち乗りを上げました!
が、それも束の間…


「主の仇!!」


と吠えた藤堂良政の従者達から背中を数か所同時に刺され、何本もの鑓や刀を受けたまま
信勝は大量の血を吐き前のめりに倒れました。

信勝は“流石は嶋左近の息子よ!”と周囲の者達を唸らせる見事な最期を見せつけて
戦場に散りました。







信勝の死は大谷勢に更なる力を与える事になりましたが、その死の直後と同時に
更なる絶望的な出来事が起こりました。


小早川勢への裏切りに備えて刑部が配していた四隊の内の一隊である脇坂安治隊が寝返り、
導かれるように他の三隊も続け様に大谷隊に向かって来たのです!

寝返ったというのは正確ではないかもしれません。
脇坂安治は開戦当初から藤堂高虎と通じて、家康の味方に転化する機会を窺っていました。
そして他の三隊にも東軍に味方するように熱心に口説いていたのです。
土壇場でその機会が巡ってきた脇坂隊は小早川勢を牽制する事なく
そのまま大谷勢と敵対する姿勢をここで明らかにしました!


その者達は昨日まで各地を転戦して回った同じ組下の見た顔、知った顔ばかりでした。
この動きを見た瞬間、平塚為広・戸田勝成・大谷吉勝・木下頼継はほぼ同時に覚悟を決めました。


「我らが命運ここに極り!」


目の見えない刑部もその光景を確認した湯浅五助から耳にすると
やはり同じ結論に至りました。
後は各々が思い思いに振る舞うのみです。


勢いを得た小早川隊は再び山を駆け下り打ち掛かって来ました!
加えて四隊と、元々の藤堂・京極・織田隊からの猛攻を大谷隊は全て受ける事になりました。
結束の固い彼らも次第に分断され、各個に押し包まれて数を減らしていきます。





戸田勝成は家来を叱咤激励しつつ自らも鑓を振るって目の前の敵兵を
次々に叩き伏せていきました!


「皆、奮え!!
 各々名乗って打ち掛かれ!!」


戸田勝成は家臣達が名もなく埋もれて死んでいくのが不憫でそう命じました。


「そこに見えるは武蔵守殿(戸田)に相違なし!
 雑兵の手に掛けるは気の毒なれば、旧知の某(それがし)がお相手仕らん!」


「懐かしや、津田信成殿ではないか!
 冥途の土産にその首頂戴出来るとは有り難し!」


こんな状況でも戸田勝成の口上には豪胆さが溢れていました。

二人が即座に鑓を突き合うと、その様は周囲に手出しを許さぬような壮絶な気迫が漲ったものでした。
戸田の打撃で津田の兜が飛び、津田の突きで戸田の袖(具足の肩当)が吹き飛ぶという
正に死闘です!
しかし二人の体力差は歴然で終始前線で働き続けた戸田勝成の息は上がり
その隙を見逃さなかった津田信成は戸田の肩を鑓で貫通させ、遂に膝を崩しました!
しかし戸田勝成は膝をつく刹那、津田の腕を籠手ごと切り付けていて
二人は引き離されるようにしてお互い倒れたのです!

本来ならここで津田が戸田に止めを刺すのが礼儀ですが
津田も深手を負っており叶いそうもありません。

この時、戸田隊を囲んでいた織田長考隊(織田有楽斎の長庶子、織田信長の甥)の中から
高名な戸田勝成の首を自分が取ってやろうと
半ば横取りの態で進み出て来た織田家の家臣・山崎源太郎なる者が刀を抜きました。

礼を欠いたその振る舞いに、瀕死の状態にも関わらず戸田勝成は


「将たる者の首を取るには守るべき法と礼がある!
 汝が如き軽薄な振る舞いに及ぶ者に、その覚悟があろうか!!!」


野獣の咆哮に似た激しい叱責に、山崎何某は恥じて引き下がりました。
そのやり取りを聞いていたこの隊の主・織田長考が進み出て


「我が家臣の無礼な振る舞いをお許しあれ。
 この勝負を見届けた某に武蔵守殿の最期をお任せ願いたし!」


「有楽殿のご子息か…
 不肖勝成、河内守殿(織田長考)にお頼み申す!」


「承わる」


津田信成からも承諾を得て作法に乗っ取り、織田長考は戸田勝成の首を落としました。
この日最期まで武士として振る舞い続けた“謀才俊雄の英士”戸田勝成の死は
多くの武将達の胸を打ちました。






この嶋信勝と戸田勝成の死をお家元とタイガーしゃんは見ていません。
二人は刑部が引き連れた600人の精鋭と共に、小早川勢を最初に退けた地点の
狭隘地にいたからです。

もし二人が見晴しのいい藤川台に残って信勝と戸田の死の瞬間を見る破目になっていたら
いくら逞しく成長した二人でも、とても耐えられる光景では無かったはずです。
そうなればどんな手段を講じても、二人が心を抉られた傷は癒される事は無かったでしょう。







そして平塚為広も絶望的な戦いを強いられていました。
平塚は特徴的な十文字の鑓を振るい、討った者の首もそのままに次々に迫る敵を相手に
終わらぬ戦いを繰り広げていました……

息は上がれども休む暇は与えられず、最早自分がどこに居るのかも定かではありませんでした。
一瞬意識が飛びかけた時に、怒声と共に掛かって来た相手を
ほとんど反射的に突き殺しました。

この局面でも付き従い残っていた近習に


「この首を打て!それと紙(短冊)と筆を!」


受け取った紙にスラスラと一首したためると、


「この句とその首を持って刑部殿に届けよ!」


近習は頷くと刑部の元へ走って行き、その姿を見届けた平塚は田の畝に座り込みました。
そこへ小川祐忠の家臣・小川甚助なる者が現れ


「平塚因幡守様とお見受けいたす、いざ!」


「さても急わしいものよ…よかろう、掛かって参れ!」


平塚は鉛のように重くなった腕に最後の力を込めて数合鑓を重ねると、やわら鑓を置き


「これまでじゃ……
 この首打って手柄とするがよい…」


平塚は首を差出し、この地で命を散らしました。








同刻、刑部は駆け付けた倅・吉勝と木下頼継を説得していました。


「父上、我ら兄弟、殿(しんがり)仕る!
 早々に落ちて下され!」


「そなた達こそ若い命を粗末にするでない。
 儂はここで腹を召す故、そなた達こそ落ちるがよい。
 秀頼様はご健在におわされる、この後は儂の分もご奉公してくれ」


「何を仰せられます!ならば我らもここで…」


「聞き分けよ!」


「ですが…それではあまりにも……」




「聞き分けなしゃい!吉勝しゃん、頼継しゃん!
 父上の最期の機会を台無しにしゅる気でしゅか!!
 三成しゃん、小西しゃん、宇喜多しゃんも既に落ち行く覚悟でしゅ!
 楽な道を安易に選ぶのは将足る者とは言えましぇんよ!」


聞き分けぬ二人をお家元は叱りつけました!
優しく諭す時間はありませんでした。


「しかし……」


「頼継、ぬこ殿の申す通りじゃ。
 父上、これにてお別れにございます!
 ご武運を!」


「…父上、御免仕る!」


二人は戦場から落ちて行きました。






「…ぬこ殿、済まぬな」


「……いえ」




刑部とお家元達の元には、既に嶋信勝と戸田勝成の討死の報せが届いており、
今また平塚から辞世の句と首が届いたところでした。


「殿、我ら一同小早川勢に一矢報いたくお許しを戴きに!」


残った全ての兵達が刑部の元に最後の挨拶に罷り越しました。


「殿にお仕え出来た事、我らが生涯の誉れにございました!」


「我ら簡単には討たれはしませぬ、心おきなく!」


「そなた達……」


「では御免!」


兵達は寡兵ながらも最期の意地を見せつけようと、燃えるような気概を持って
松尾山に向かって行きました。
彼らの中にはただの鑓の一突きや、一発の銃弾で倒れる者は一人もおらず
目を剥き歯を喰いしばり、恨むの籠もった言葉を口々に吐いて山上を睨みながら
最期は土を引っ掻きながら倒れていきました。

そんな者達の標的になった者が心穏やかに余生を送れるものでしょうか…

かくも大谷勢は一人残らず松尾山にしがみつくように果てて全滅しました。




兵達が去った後、その場に残ったのは刑部、湯浅五助、五助の従者・三浦喜太夫に
お家元とタイガーしゃんでした。
刑部は落ち着いた口調で


「ぬこ殿、今日までのそなたの厚意、どれほど言葉を尽くしても礼が言い足りぬ」


「しょんな……」


「そなた達が来てくれた事で、我らはどれほど救われた事か……
 礼を言う、忝い!」


刑部にはお家元が何の目的でこの時代に来たかなど、この後に及んでは最早どうでもいい事でした。


「五助、かねてからの手筈通り
 この首敵に渡さぬよう人知れず埋めてくれ」


「はっ!」


「絶対に!絶対に敵の手になど渡しましぇんから!!」




五助と交わしていた会話に割り込んでくるなど、ぬこ殿らしくもないと
一瞬考えた刑部でしたが、その違和感で刑部は気付きました!


「(そうか!そなたはその為に来てくれたのだな!
  儂の首が晒されぬように、そなたは早くから現れたのだな!)」


刑部はお家元がこの時代に来た本当の目的に気付いてくれました!
この二ヶ月半に及んだお家元の活躍は仮初めのもので、今日この時の為だけに来た意味に気付き
刑部は身が震える程に感動しました。


「…儂は果報者じゃな」


刑部の見えぬ目が嬉しそうに細まりました。

刑部が自らの腹に刀を突き当て掻っ切ると、苦しまぬように素早い挙動で
湯浅五助は鮮やかにその首を切り離しました。

その一部始終が行われている間、お家元は背を向けて見るのを避けていましたが
重たい物が地面に落ちる鈍い音を背中で聞きました。

五助の従者・三浦喜太夫は手頃な布で素早く包み頑丈に縛り上げると
持ち上げた布に鮮血が広がり、恐ろしいまでの生々しさがありました。


「五助しゃん、三浦しゃん!
 一刻も早く少しでも遠くに埋めるんでしゅ。
 殿(しんがり)はひこにゃんとタイガーしゃんが引き受けましゅから!

 タイガーしゃん、追跡者がいない事を確認しながら
 二人に付いていきましゅよ!」


「はい!」


馬を使わず少しでも離れた場所へ埋めようと皆は全力で駆けて行きました。
折しも向かい風の中でした…








            (b)へ続く~



号外ひこにゃん・ザ・ラスト

2010-12-01 21:02:52 | 彦根にひとつだけの花
羽生水郷公園で執り行われた“ゆるキャラ(R) さみっと in 羽生”の様子が
参加された方々が熱心なレポートをあげてくれていたお陰で
現地へ足を運ぶ事が出来なかったにも関わらず、その一端を窺い知る事が出来ました♪
なんて便利な“インターネッツ”!(笑)



もはや古くなった11月の記憶のカケラを私もやり遂げようと思います。
“1119 後篇”です













2010年11月19日 後篇
彦根城 博物館玄関前
ラストまでまっしぐら!弾丸ファイター編





この日の最後の登場となる博物館に場所を移し、ご家中の宰領役である
お兄さんの取説に耳を傾けます





やがて奥の木戸が音もなく開き、その方はもう舞い降りていました!









もちさんが現れる場にスピーカーから流れるようなBGMは一切ありませんが
この光景を見た瞬間の全ての方の胸の内にはフルオーケストラの大演奏が
鳴り響いた事でしょう!





心の中の指揮者が髪を振り乱してオーケストラの演奏を最高潮に導きます!(笑)





「あいあい、ひこにゃんでしゅ」




日陰ですら目に光を宿して全ての方に視線を配る細やかさ!




初っ端は“ようこそ旗”!
歓迎しようとする意気込みが強過ぎて、もちさんはいつも旗の向きを確認せず
一目散に突き出します(笑)

「よーこしょ!」




「あわわわ」




「よーこしょ!」




この日3回目の登場にも関わらず、この回もちさんが発揮したフィジカルは
指先の隅々にまで行き渡った最高のモノでした!
この回一番キビキビしてたんです、もちさんは!





この回は一際黄色い声援を捧げる方々がいらっしゃって
声掛けと悲鳴が途切れませんでした

もちさんが端からセンターに戻ろうとした時に
今一度振り向かせようと「回れ~右!」と声が掛かりました。
その瞬間、もちさんが鮮やかに回れ右をしました!

チャッチャ!





願いが届いた方々は狂気乱舞、無理もありません。
もちさんの“回れ右”はしっかりした3挙動で腕を遊ばせないように
バデーに吸い付いたままの教本のような“回れ右”でした♪

その流れでもう一度「回れ右~♪」と背後から声が掛かると…


チャッ!




クルッ!




ピタッ!




切ない声援が上がります!
そして「こっち向いて~」という声援には…

クルッ!




「まま間違えたでしゅ!」




背中を向けてしまった事を恥じるもちさん(笑)
さらに「踊って~」というリクエストが飛びました!

「そ、そりは~‥‥‥」




耳に届いた声援には精一杯応えようと繰り出したのは…

「しょれっ!
 ひっこにゃん、ひっこにゃん♪」




「ひっこにゃんにゃん♪」




「こんにゃもんでどうでしゅかね…」




満点以上の活躍です!






次のパフォ、ハートぬいのキャッチボールの見本がご家中同士で示されます













「こんにゃ感じでしゅ」




「皆さん、ひこにゃんがハートを投げてくれるんで投げ返して頂けますか?」

喜ばない訳がありません(笑)











「バッチくるでしゅ!」




「ナイしゅ!」




「ちゅぎは~」




「しょれっ!」




完全に視線の先ではない方向へ放り投げるもちさん!
ノールックパスはポイントガード並みです(笑)





「今度こしょ!」




がしっ!




「う~ん、みなしゃんイイ球を放りましゅね」




「お陰でひこにゃん、エラーが少ないでしゅ♪」




「しょーいえばそろそろお腹が……」

そうですね、名残惜しいけどもちさんの空腹を妨げるのは本意じゃありません!





元来た木戸へ引き上げて行ったもちさん、お別れの刻です





コクン、コクン!




「そりじょあ」





最後の回で疲れもあるはずなのに、最高のパフォーマンスで締めくくってくれたもちさん!
流石です、満足!



“1119” 完了です!






この回お気にのポーズ(笑)