吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

『いつも「時間がない」あなたに(欠乏の行動経済学)』早川書房(2017年1月15日発行)

2017-12-29 23:23:33 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 題名を観て思わず手に取った。


 そうなのだ。私にはいつも時間が足りない。
 かの文豪は臨終に際して『もっと光を』と言ったそうだが、今や誰もが『もっと時間を』と言って死んでいく。

 これは、葉巻を吸う灰色の男たちが時間を盗んでいるのではない。もっと根本的な原因がありそうだ。
 と、思ってこの本を手に取ったのだが、これは目先の時間不足を解決するハウツー本ではないのであった。

 ・・・で、少ない時間を活用できるようになる本ではなく、読むためにますます時間を必要とするタグイの誠に恐ろしい本なのだ(しかも悪いことに学術的な本でありながら、とてもオモシロイ)。

 この本は人間の行動における根本的な性向を明らかにした本なのだ。すなわち『欠乏』に対して人はどういう行動を取るのか?を見事に解き明かしている。

 『マルクス経済学はなぜ破綻したのか?』を考えたことがありますか?

 『資本主義が高度に発達すると社会主義の萌芽を生み、やがて共産主義革命が起こる』との予言は見事に裏切られ『資本主語が発達していない国において共産主義革命が起こった結果、共産主義国家は何だか訳の分からない圧政国家になってしまった』のです。一般的には『マルクス経済学は人間を経済人としてしか捉えなかったために破綻した』と言われます。

 『人間は経済人としてのみ行動するものではない』との反省からマスローの『欲望の階層体系』とかマックス・ウェーバーの『価値自由(ウェルトフライハイト)』なる概念も登場しましたが、結局『人間の行動はよく分からん』という結論しか得られていませんでした。

 この本は『欠乏』の観点から『人間の行動とは?』という問いに回答した、おそらくは初めての本なのです。

 『欠乏』に直面した人間は(生物として当然)欠乏を埋めようと行動します。このとき、その人間にとっての最優先事項は『欠乏の解消』になり、それ以外の事項が『トンネリング効果』によって意識の外に追いやられるのです。

 そればかりでなく、意識に『欠乏の解消というプログラムを常に走らせている状態になった人間』は『ビジー状態になったパソコン』のようにパフォーマンスが著しく低下します。この結果、貧しい人間は(発揮できる能力が低下して)より貧しくなり、時間のない人間は(作業能率が低下して)ますます時間が無くなる、というのがこの本の主張する主な内容なのです。

 こうした悪循環の罠に陥らない方法についても豊富な実例とともに検証し、解き明かしてくれます。

 結果として、まさに忙しい現代人必読の本になっています。オススメです。





ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む(第2章)

2017-12-29 06:25:45 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護



 (承前)←第1章を読みたいヒトはこの文字列をクリック!

 さて、第2章に取り掛かることにします。
 前回、事実(センテンス)と事物(モノ)について規定されたワケです。『世界を構成しているのは事物ではなく事実である』という発想の転換があったワケですが、ここで事態と対象という新しい言葉が登場します。今後の理解のためにこれらの言葉を解説しておきます。

2.01 事態は、対象(事柄、事物)が結合したものである。

2.011事態の構成要素であることができるのは事物にとって本質的なことである。

 対象は事柄と事物を含んだ概念ということです。
 事柄の説明は特にナイのですが『対象とはモノとその状態である』という風に理解しておきます。
 さらに、ここで事態とは事実を含む概念であると説明されます。
 事態のうち『そうである』ものが事実で、事態は『そうでない』ものまで含んだ概念です。



2.04 現実になっている事態たちの総体が、世界である。

2.05 現実になっている事態たちの総体によって、どういう事態が現実になっていないのか、ということも規定される。

 ここまでは前回のおさらいって感じです。

 で、新しい概念が示されます。

2.1 私たちは事実の像をつくる。

 像ってナンだ!?パッと思いついたのはプラトンによる『洞窟の比喩』でした。


※『洞窟の比喩』我々が現実だと思っているものは真(イデア)の世界の影にしか過ぎない。

 当たらずとも遠からずです。

 これは現実を表現するためにはその写像が必要なのだ、ということ。

 例えば夕暮れの菜の花畑を、蕪村は『菜の花や月は東に日は西に』と詠んだけれども、
 
 ある人はこの風景を写真に撮り


 また、ある人はこれを歌にする。


 これらは現実の像である、という訳です。これで、ようやく第三章に読み進むことができます。

3  事実の論理像が考えである。

3.001「ある事態を考えることができる」とは、私たちがその事態の像をつくることができる、ということである。

3.01 真の考えの総体が世界の像である。

 ここで、この章の最初に示した集合論的な図()の緑色の部分のことだと分かったらOKです。
 簡単ですね(ホントか?・・・・)。

 (つづく)←凝りずに第3章を読みたいと思ったヒトはこの文字列をクリック!。


レストラン『ル・プティ・シェル』のクリスマス・ランチ

2017-12-25 12:37:34 | 日々美しいものに触れようよ

 クリスマスは年末の挨拶を兼ねて行きつけの『ル・プティ・シェル』へ行ってクリスマス・ランチを戴くのが恒例。

 今年もクリスマスらしいお品を用意してくれました~!

 アミューズのスープとサラダは省略(・・・って写真撮り忘れただけです。ゴメン)。

 前菜:鮪のブッシュドノエル風(今回のイチ押し・・・中にはアボカドが詰まってます)


 魚料理:鰆のポアレ(リゾット付き)


 肉料理:ロ-ストポーク(青リンゴのジュレ付き)


 デザート:苺のサンタさんが何とも言えず可愛い!


 お味はモチロン、この盛り付けには『お見事!』っていつも驚かされます。
 今年も、研ぎ澄まされたシェフの極ワザを見に行って新鮮な気持ちになって帰るのでした。


スターウォーズ『最後のジェダイ』おまけ

2017-12-20 08:22:20 | 映画・ドラマを観て考えよう

 コメントのお返事に代えて、スターウォーズ『最後のジェダイ』会場でゲットしたガシャポンを披露するのだ(私生活は書かない方針なのだが、ちょっとだけ)。



 余計なものが写り込んでいるが、左下に見えるデス・スター、これじゃ!(ミレニアム・ファルコン狙いだったが、ただ丸い玉がでてきたときには驚いた)。

 『えー!500円も出してコレ!?

 しかし、デス・スターの中にYウイング・ファイターのキットが・・・。



 おおおお、フォースの力だ!(違う!・・・たぶん)。


 追記 最初の写真に写り込んでいるのは電子レンジで使うお一人様用肉まんスチーマー(なずなさん、見てる~!)

    関西人の家にはこれとタコ焼きプレートは必須なのじゃ!
    何せ『551のあるとき~↑ないとき~↓』を地でやる民族だからして。


スターウォーズ『最後のジェダイ』

2017-12-18 08:10:34 | 映画・ドラマを観て考えよう

 あらゆる面で予想を裏切る展開だった!



 以前から『スターウォーズ=源氏物語』説を展開している私ですが、今回は見応えがありました。
 『スターウォーズ=源氏物語』説とは、アナキン・スカイウォーカー(ダース・ヴェイダー)が光源氏とするならば、レイが薫大将で、カイロ・レンは匂宮、今は銀河の覇権という浮舟を巡って争っているワケです。

 因果はめぐる糸車、いにしへの賤の苧環繰り返し昔を今になすよしもがな・・・と繰り返される争いはエピソードV『帝国の逆襲』からエピソードVI『ジェダイの帰還』に至る光と闇の対決を忠実になぞって行く。ただし、これは『もし、あの時〇〇が〇〇していたら』という、前回実現しなかったパラレルワールド的ストーリーが30年の時間を隔てて繰り返されるという、ありえなかった未来を孫子(まごこ)の代で演じている物語です。で、永年のファンには既視感ハンパない。記憶を掘り起こして『そうそう、あの時はこうだった』という50代以降のヒトには自分自身の青春時代が蘇る映画になってます。

 特にミレニアム・ファルコンが救援に駆け付けるシーンは涙、涙ですっ!(滂沱~!)。

 菊花の契りを守って肉体を消滅させるルークがファースト・オーダーの残党(といっても反乱軍よりはるかに強大)と闘うシーンは場内に失笑が起こるほどの無敵ぶりです。私も『いくらフォースの力が強くてもそれはナイだろ!』と思ってましたが、ちゃんと納得の行くタネ明かしが用意されています。

 今回は反乱軍はほぼ壊滅という打撃を受け、エピソードV『帝国の逆襲』以上にメタメタにヤられます。観た方は(私も含めて)もうヤキモキしてるでしょう!あー、フラストレーション溜まるぅ!完結編を観なくてはとうてい死ねません!完結編が待ち遠しいっ!

 最後のシーンでモップをライトセイバーに見立てて星を見上げる少年、誰もが『あれは私だっ!』と感じたことでしょう。
 僕はこんな辺境に生まれて小さい世界しか知らないけどアタマの上には無限の星空が拡がって、胸にはイッパイの希望がある!未来の可能性も無限にあるっ!観たヒトな皆、そう信じる心を取り戻した映画なのでした!

Queen The Hero