変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
すいりき板は、出身研究室の掲示板(現在閉鎖)
専門用語を不定期掲載

Four lines reveal the structure of global community(4行でわかる世界の文明)

2024-05-04 17:24:28 | 読書
2023年12月頃にKindleで読んだ“4行でわかる世界の文明”の感想を以下に記す。
 一番印象に残った内容は、日本人の行動様式の4行も出るが、他の文明とはじめから大きく異なるところである。第6章の4行でわかる、日本社会は、日本の問題点を浮き彫りにしているように感じた。
(1)自己主張する前に、まず相手の様子を見る。
(2)相手も、同じことをしている。
(3)このままでは、何も決まらない。
(4)そこで、みなで話し合って、決める。
 こんな調子で、物事を進めていると、うまくいかない事が多々あるのだろうと思った。なお、他の世界である「キリスト教」「イスラム教」「ヒンドュー教」「儒教」では、4行のうち最初の3行は共通となっており、4行目だけが異なる。
(1)まず、自己主張する。
(2)相手も、自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
キリスト教の人びとの場合は、
(4)法律があるので、解決する。
イスラム教の場合は、
(4)イスラム法があるので、解決する。
ヒンドゥー教の人びとの場合は、
(4)でも、人びとは別々の法則に従っているので、紛争にならない。
ちなみに、仏教では、
(4)真理があるので、紛争は回避できる。
儒教の人びとの場合は、
(4)順番があるので、紛争は回避できる。
 日本のことに話を戻すと、P.111の次の記述が、うまくいかない事が多々ある要因を示している。”陸軍も海軍もなくなったが、日本社会の組織の病理は、なくなっていない。人びとが所属する集団や組織への忠誠を優先し、本章冒頭の「4行モデル」が当てはまってしまう限り、この社会の宿痾は拭い去れないのである。” 決めた人も理由も判別しない決まりに従って、行動すると上手くいかないとも感じた。P.103の日本社会の基本的ルールは、冷静に見返すと怖いものがある。
“「反対です」と言わないと、同意したと見なす。これが、日本社会の、基本的ルールである。みなが同意すると、どんなことでも決めることができる。そして、その決定は、みなを拘束する。これも、日本社会の、基本的ルールである。”
 また、話し合いと権利と利益に関する話も、興味深い。こうしてみると、普遍性のある考えがない事が、日本人の行動様式の根底にあるように感じられる。普遍性のある考えは、宗教であり、それを本当の意味で日本が有していないことが、この行動様式に表れているのだろう。本書は、宗教で分類されていて、そういった切り口で解釈する方が妥当だと、読んだ後に気づいた。
 日本で、普遍性のある宗教が低調だった要因は、地理的に、文化や言語の異なる他民族との交流が少なかった事だと思う。他民族との交流が少ない場合は、普遍性は、さほど必要にならないためだと思われる。
 また、儒教では、忠よりも孝を優先する(P.89)という考えは興味深い、頭の片隅にとどめておきたい。
 本書を読んで、四大文明のうち、もっともグローバル社会に適しているのが、キリスト教の世界だと気づいた。イスラム教では、ムスリムと非ムスリムとの紛争を解決する一般的な原則をイスラム法では持っていない(P.60)。そのため、非ムスリムを含むグローバル社会には、イスラム教は適さない。ヒンドゥー教は、人びとを区別するので、色々な人びとで構成されるグローバル社会には適さない。儒教では、順番により、物事が決まる、そのため、相手によって行動が変わり、ルールか政治かが分かりづらい。儒教は、相手の多いグローバル社会には適さない。こうしてみると、文字で書かれていない普遍的な自然法(P.38)の存在を認め、それに従うというキリスト教の行動様式がグローバル社会に適しているように思う。
自然法が文字で書かれたユダヤ教やイスラム教と異なり、自然法の改良が可能な点が、キリスト教の行動様式の強みになると、感じた。
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