変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
すいりき板は、出身研究室の掲示板(現在閉鎖)
専門用語を不定期掲載

Axial compressor

2018-09-04 19:46:10 | Compressor Aerodynamics
高(相対)マッハ数の圧縮機の設計が気にかかったので、
最近Compressor aerodynamicsを読んでいる。
気にかかった個所を記入する。

翼列で、一番重要なパラメータは食い違い角と弦節比になっている。
それらの後に、カンバ角(反り角)が続いている(P.135)。
カンバ線の形状、弦長に対する厚み比、厚み分布はこれらに対して重要な
パラメータにはなっていない。

DCAはC4系列よりも、入射角が変わった際の損失係数の上昇が小さくなっている(P.143)。

厚みが大きい方が、流量が変化しても損失係数が変化しないと考えられるが、
逆の傾向も報告されている(P.162)。
Caterの論文以外の二人報告されている。

通常の超音速翼列は、前縁の厚みは薄く、前縁領域の反りは小さくなっている(P.205)。

Unique incidence conditionは、角を回る超音速流れのPrandtl-Meyer関係を満たす
流れとなる(P.198)。
Unique incidence conditionは、Chokeと同一と表現されることもあるが、厳密には違う現象という
認識は持っておいた方がいい。

(P.219)
3次元の計算は、最終的な確認と特定の問題のある現象に留まっている。
その理由としては、コストだけではない。3次元の設計の戦略があったとしても少ないことや、
得られた3次元的な流れが満足するかどうかの経験が少ないことである。

RANS(レイノルズ平均ナビエ=ストークス方程式)

2017-01-21 21:55:35 | Compressor Aerodynamics
Compressor AerodynamicsのP.469で
気になる記述を見かけたので記しておく。

ターボ機械の流れは、
混合長モデルのような比較的簡単なモデルでも、
流れの大まかな特徴をよく予測できる。
その理由は、ターボ機械の流れは、
圧力差やブロッケージで主として決まり、
せん断応力や混合による影響は、はく離が大きくなるまでは、
比較的小さいため。
このような手法は、損失の定量的な予測には一般的には十分では見なされない、
ただし、実際の損失の変化における傾向は、よく予測できるかもしれない。

見方を変えると、
圧縮機やタービンは、大規模はく離を扱わないので、
LESでなくても、RANSでも十分な場合が多いようである。
圧縮機にRANSを使うと、定量的な効率の予測は無理でも、効率の変化する傾向を
予測することは可能なようである。
実際にこのような事例は報告されている。

Summary 6(要約)

2015-05-06 22:53:06 | Compressor Aerodynamics
N.A Cumpsty著Compressor Aerodynamicsについて、6章のまとめを書いている。

かなり役立つ印象はあるものの、
7章のdiffuserと対で考えないと要旨が分かりづらい個所があり、通して読んだ方が良さそうだ。
後、ナビエ・ストークスの式が分からんと、実感しづらいようにも感じる。

Summary 1(要約)

2014-11-24 15:36:22 | Compressor Aerodynamics
N.A Cumpsty著Compressor Aerodynamicsについて、順不同のまとめを書いてみる。
遠心圧縮機の設計をしているので、軸流圧縮機の話しは、あまり書かない。

2 General design considerations 一般的な設計上の留意事項

2.1 Introduction 序章

設計上、唯一の最も重要な決定は負荷をどうするかである。
これは通常、圧縮機の段数と回転数を決める事を意味する。
この初期設計は、広範な技能と商業上のデータベースを元にして行われる。
時折、初期設計に関心を払われないが、この初期設計により、破滅的な結果をもたらす場合がある。

軸流(axial)、斜流(mixed)、半径流(radial)の違いについても若干述べられている。
斜流は軸流と半径流に対し、実績が少ないので、利用が限られている可能性がある。
高負荷の半径流圧縮機は、軸流よりも一般に低効率と言われているが、完全にはっきりしていない。

この章で述べている内容は、圧縮機の総合性能と一次元的な取扱いを関連付けるごく簡単な考えである。

2.3 The radial compressorの半径流圧縮機のまとめ

オイラーの式とすべり速度から、後向き羽根がサージ特性に優れることが書かれている。
また、後向き羽根は反動度が高く、インペラ出口の流速が遅くなるので、
効率の良いインペラでの圧力回復の割合が大きくなり、効率が高くなる。

空力に関する重要な形状の特徴として下記が述べられている。

1.カバーの有無(カバー付インペラかオープンインペラか)
・カバー付の利点
 軸方向の移動量が大きくてもインペラの先端隙間を小さくできる。⇒高効率、多段機では必須
 スラスト力を小さくできる。⇒強度上有利
・オープンインペラの利点
 カバーがない分インペラを高速で回転できる⇒段数の低減、小型化しやすい

2.インペラのインデューサーの有無
・インデューサー有の利点
 A.シュラウド側の曲率を緩やかに出来る⇒部分的な高速と低密度域の減少⇒高効率
 B.スロート面積を大きくできる⇒チョーク流量の増大
・インデューサー有の難点
 C.軸方向に長くなる⇒多段機では、軸が長くなり、機械的安定性が悪化する

3.インペラ出口で後向き羽根かラジアル羽根か
・後ろ向き羽根の利点
A.ディフューザーよりも高効率なインペラでの静圧上昇を大きくできる。⇒高効率
 B.サージ流量が小さくなる。
 C.インペラ出口付近流れのはく離が小さい。コリオリ力の影響で、流れがインペラの回転方向の逆向きに流れようとするため。(6章の遠心圧縮機で同種の内容が述べられている)
・後ろ向き羽根の欠点
 D.同じインペラの外周速でも圧力比が小さい(同一圧力比の場合、ラジアルよりも大きい外周速が必要)
 E.出口付近の曲げ応力が大きくなりやすい

4.入口案内翼が可変か固定か
・可変入口案内翼の利点
 A.インペラ入口の流れの向きを変えることで、処理流量と圧縮機の仕事を変えることが出来る。
 [ディフューザー羽根を可変にしても圧縮機の仕事は変えられない]
・可変入口案内翼の難点
 B.追加の損失がある

5.ディフューザーが羽根付(vaned)か羽根なし(vaneless)か
・羽根付ディフューザーの利点
 A.ディフューザーでの最大圧力回復が大きい用途に適す(広い作動範囲が必要としない場合)。
 B.非常に小さい比速度では、羽根なしよりも作動範囲が広くなる。
・羽根付ディフューザーの難点
 C.作動範囲が狭くなりやすい。
D. C.により、インペラとディフューザーの整合(matching)が重大な問題になりやすい。
   例としては下記の二点。
  1.ディフューザーの最大運転流量が、インペラの最小運転流量よりも小さい場合。 
  2.ディフューザーの最小流量が、インペラの最大流量よりも大きい場合。

良いインペラは次の特徴を持つ。滑り速度が過大にならないように十分な羽根枚数を持つ。
後向き羽根で、出口の高さが外径に対し、小さすぎない。
オープンインペラの場合は、静止太の隙間が十分小さい。
入射角が小さくなるように、入口付近を曲げている。
シュラウドの曲線がなめらかである事。
ディフューザーベーンを使用する際は、平均流れとの入射角を小さくなるように、
ディフューザーベーンを傾けている。

Overview
ここで取り扱っている流れは、二次元性や三次元性を有するが、本質的に一次元である。
(圧縮機の設計には、一次元的な取扱いが重要であることが示唆されている)
また、広範な経験と相関を要するにもかかわらず、一次元的な内容による圧縮機の概念設計が
行われている。

relative stagnation pressure 2(回転系の全圧2)

2014-03-09 22:39:20 | Compressor Aerodynamics
回転系で非粘性流体の場合、下記式が成立する。

∂W/∂t-W×∇×V=-∇I+T∇s

熱力学の第一法則と修正全エンタルピーIの定義式から、次式が成立する。
1/ρ×∇p+1/2×∇W^2-1/2×∇((ωr)^2)=∇I-T∇s

そうすると次式が成立する。

∂W/∂t-W×∇×V=-1/ρ×∇p-1/2×∇W^2+1/2×∇((ωr)^2)

定常の静止座標系の渦なし流れ(∇×V)では、次の量が保存されることになる。

∫(dp/ρ)+1/2×W^2-1/2×(ωr)^2

これが回転系の全圧ということになり、オイラーの法則もこれから導出できる。
エネルギーの保存を示しているが、エネルギー式ではなくオイラーの式(運動方程式)から
導出されていないことには注意が必要と思われる。

surge

2013-04-30 10:57:51 | Compressor Aerodynamics
サージは、圧縮機において、流量と圧力が右上がり特性で発生するものと
説明されるが、なんとなく理解できていない面があった。

N.A Cumpsty著Compressor Aerodynamicsに書いてあった
説明でなんとなく理解できたように感じた。

次のような内容が書いてあった。
流量と圧力が右上がり特性になるというのは、
負のばね定数をもつばねを有することにつながる。
負のばねになるので、系が不安定になる。

負のばねがどんなものかを考えてみた。
反力が変異方向と同じ向きに働く、つまり、いったん力をかければ、
どんどん変形が進んでいき、止まることを知らない。
運動方程式で考えると、振幅が指数関数的に増えていく状態となる。

たまに思うのだが、日本語よりも英語の方が、文献の質と量が充実しているので、
そちらで学習した方が、能力向上にはいいかもしれない。
専門知識と英語の能力が必要で、読む速度が遅い点が問題で、それを乗り越えられるかが、
重要ではある。

振幅を圧力や流量と考えれば、系が不安定になるということは理解しやすいように思う。

polytropic efficiency

2012-11-23 13:16:22 | Compressor Aerodynamics
検索キーワードに多かったようなので、記載しておく。

理想気体の場合は、ポリトロープ効率ηpは次式となる。
ηp=(γ-1)/γ*ln(p2/p1)/ln(T2/T1)

状態が1から2に変化するとする。
pは絶対圧力(Pa)、Tは絶対温度(K)、γは比熱比。

圧力比が小さい場合は、断熱効率とポリトロープ効率は近い値になる。
より実際に近い効率と言う事で、断熱効率よりも
ポリトロープ効率の方が使用されることが多いようである。

matching

2012-10-14 21:50:47 | Compressor Aerodynamics

2.General considerationでの
matchingについて、少しまとめてみた。

圧縮機では、密度が変化するので、密度変化を考慮した設計が必要不可欠である。
ただし、流れ(境界層)により、密度変化が変わるので、予想は難しい。

特に、多段機の設計点以外(off design)での運転が困難になることが、多い。
ガスタービンによく用いられる一定絞り状態
m√[Cp(T02-T01)]/Ap02での計算例が出ていた。

この場合は、80%回転数で運転しようとすると、サージに突入する結果となっていた。

対策として、設計状態で若干迎え角をつけることと、静翼を可変構造にすることが挙げられていた。
前者は設計点の状態が悪くなるが、低回転数での運転が可能となる。
後者の方が、改善は大きく、効率がかなり改善される結果となっている。


圧縮機では、失速しないように、ブロッケージ等の翼列の性能を予測する必要があるが、
設計点ですら不十分である。
また、非設計点においても、失速しない運転を要求されるが、設計点よりも
精度は劣る。
このような不確実性の回避には、高価な開発計画が必要となる。
また、可変構造の静翼は、このような不確実性の回避に有用と述べられている。

inducer

2012-09-09 20:44:01 | Compressor Aerodynamics
N.A Cumpsty著Compressor Aerodynamicsを通勤の車内で読んでいるので、
まとめのようなものを書いてみる。

2.General considerationにおいて、
centrifugal compressorの幾何的に重大な項目が述べられていた。

1.インペラが、カバー付か否か
2.インペラが、軸流に似たインデューサーを持っているか。
3.インペラの羽根の出口が、半径方向を向いているか、後傾角をもっているか
4.入口案内翼があるかどうか
5.ディフューザーベーンか、ベーンレスディフューザーかどうか

性能に与える影響が大きい項目であり、見た目でも分かりやすい項目である。
こういう着眼点は、大事なように思う。