風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

渡部先生、吠える(上)皇室伝統

2012-06-08 00:58:07 | 時事放談
 渡部先生とは、上智大学名誉教授の渡部昇一さんのこと。先日、講演会でナマの声を聴く機会があり、ただでさえ過激な方が、人目を気にする必要がないばかりか、聴講生は渡部先生のファンだらけの環境で、期待に応えるという意味でも、言いたい放題(笑)・・・と言っても、いつも書籍や雑誌に書かれている内容そのものであり、肩に力が入っていない分、言い回しが軽くて、なかなか面白かったので、サワリだけでも紹介したいと思います。
 渡部昇一さんとの出会いは結構古くて、勿論、昔も今も、面識はありませんが、1982年秋に教科書問題が外交問題に発展した時に遡ります。当時、教科書検定で「侵略」を「進出」に書き換えたと、私の家でも朝日新聞を購読していたので、そのように教えられたのでしたが、渡部昇一さんは、今は亡き「諸君!」という保守系の雑誌で、そのような事実はなかったことを検証し、「萬犬が虚に吠えた」と刺激的なタイトルをつけてマスコミ批判を展開されたのでした。以来30年、ノンポリの私としては、折に触れ、渡部昇一さんの歴史観や国家観を通して、保守の論説とは如何なるものかを勉強してきました(笑)。
 講演では、いろいろなテーマを渉猟されたのですが、前回のブログで皇室のことに触れたので、今回は女性宮家の問題を取り上げます。
 先ずは、若かりし頃、ドイツ留学された時に、同じ敗戦国でありながら、全てにおいて、例えば食事事情から水道や冷暖房などの生活インフラまで、当時のドイツは日本に勝っていた・・・という想い出話から始まりました。確かに、敗戦と言っても、ドイツではヒトラー政権が崩壊し、ベルリンの街は廃墟になり、文字通りの無条件降伏を受け入れざるを得なかったのに対し、日本では元首たる天皇はご健在でしたし政府も機能しており、軍が武装解除に応じただけのはずでした。そこで渡部昇一さんは、お国自慢をしようと考えますが、なかなか良いアイディアが浮かびません。思いあぐねた挙句に至った結論が、「皇室」だったと言います。日本の「皇室」は、いわば旧家である、欧州をはじめとする成り上がり者の王家とは違う、世界広しと言えども万世一系の王を戴く国はない、と(私の世代なら、理解できなくはありませんが、戦後憲法で謳われる象徴としての天皇のイメージが強いため、「皇室」とストレートに主張するのは憚られ、皇室伝統(とは、サヨクが天皇制と呼んだのに対抗して、谷沢永一さんが命名されました)を、真綿のような日本の伝統的な神道世界で包んでしまいます)。
 折しも、三笠宮寛仁親王がお亡くなりになりました。スポーツ振興や障害者福祉問題や青少年育成をライフワークとして精力的に取り組まれ、皇室のあり方として一つの典型を示され、僭越ながら鑑とすべきだろうと思います。ご冥福をお祈り致します。さて、その三笠宮寛仁親王は、小泉内閣時代の2005年11月、首相の諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が女系天皇を容認する皇室典範の改正に向けた提言をまとめた際、男系継承維持を主張されて波紋を広げたそうです(今朝の日経新聞)。渡部昇一さんも、講演会で、同提言に対して、天皇家をなきものにするものとして激しく批判されました。皇室伝統を振り返ると、かつて女系から生まれた女帝はなく、常に男系の女帝であること、その後はやはり男系が継ぐこと、つまり家系は男系であるからこそ辿ることが出来ること、もし女系天皇を認めてしまうと、中国や韓国に乗っ取られる恐れもあること、そして米(コメ)に対して特別の思い入れがある日本人にとって、タネが大事であるように、タネを重んじるのが皇室であること(それに対し、タネはどうでも良くて、娘によく出来た番頭を嫁がせる関西商人の家産相続や、武士の世界(藩)を対比されていました)、皇室は要らないという発想が出て来たのはロシア革命以来のことであり、社会主義者でもそれ以前の人にそのような発想はなかったこと、等々を大袈裟ではなく静かに強調されていました。
 私は、先ほども触れた通り、皇室に対する思い入れという意味では、渡部昇一さんに及びもつきませんが、それでも古来からの日本のありようとして、この伝統を守って行けたらそれに越したことはないと、素朴に思います。戦後、1947年に、悪意あるGHQ指令により皇籍離脱した11宮家を復活すべきじゃないかとも思います(その内、東伏見、山階、閑院、梨本家は既に断絶し、男系として続いているのは、それ以外の家系にあたるそうですが)。
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