時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮に対するアメリカの陰険なプロパガンダ活動

2016-02-14 23:34:25 | 北朝鮮
アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーは、自国の言論状況を
「合意の形成」、「観客民主主義」という言葉で形容する(『メディア・コントロール』より)

民主主義社会のもう一つの概念は、一般の人びとを
 彼ら自身の問題に決してかかわらせてはならず、情報へのアクセスは
 一部の人間のあいだだけで厳重に管理しておかなければならないとするものだ。


 そんな民主主義社会の概念があるかと思われるかもしれないが、
 実のところ、優勢なのはこちらのほうだと理解しておくべきだろう」

アメリカでは未だに広島への原爆投下が歪んで伝えられており、間違った知識を持つ者が少なくない。
その影響はハリウッド映画のような娯楽作品にもにじみ出ている。

駄作と名高い『インディ・ジョーンズ4』では、
ソ連アメリカの原爆投下を冷蔵庫の中に隠れてやり過ごすというシーンがある。
(訂正:問題の箇所を見直したらソ連ではなく、アメリカの核実験施設での話だった)

私たち日本人にとっては「そんなんで防げるわけないだろ」と誰もが思う場面だが、
こういう常識を疑う表現が当たり前に行われるあたり、
いかにこの惨事に関する教育の実施がアメリカ国内で不足しているかが思い知らされる。

恐怖映画の金字塔である『ジョーズ』でも、サメ退治に参加する船長が
第二次世界大戦中、軍艦に乗り原爆の部品を届けたことを自慢げに語る場面がある。

このシーンの肝は、帰艦中に日本軍により撃沈され、船員の7割がサメに食われたこと、
つまり、サメを殺すこと=米軍の敗北という苦い歴史を払拭することを示唆する点にある。

サメに対する憎しみを表現したと言えばそれまでだが、
「理由などいくらでもあるだろうに、なぜインディアナポリス号の事件を」という疑問が残る。

アメリカ映画といえば、特撮映画の神といわれるレイ・ハリー・ハウゼンの最後の活劇である
『タイタンの戦い』もオリジナルはギリシャ神話を絶妙にアレンジした娯楽作品で、
 主人公である英雄ペルセウスも基本的には単独で行動するのだが、
 リメイクしたバージョンでは、おそらく海兵隊をモデルとした戦隊が主人公となっており、
 中東を想起させる砂漠地帯で次々と仲間を殺されながら、ついにゴルゴンの首を手に入れる。

(訂正:「海兵隊をモデルとした」→「おそらく海兵隊をモデルとした」
     公言されているわけではないので一応。
     また、海兵隊ではなく、一般的な米軍の小隊なのかもしれない。
     いずれにせよ、米軍の一隊をモデルとしたことに変わりはない)


神話の話が、なぜか神話風の戦争物語に変えられていたので、劇場で驚愕した覚えがあるが、
かくもアメリカ映画というのは米軍最強、正義の使者というイデオロギーに汚染されているわけだ。

イラク戦争において加害者であるはずのアメリカを犠牲者であるかのように描き出す
『ハート・ロッカー』や『アメリカン・スナイパー』が高く評価される社会。

『永遠のゼロ』がドラマ化されたり映画化される某国Jと事情は似たりよったりなのか。

さて、こういう状況の中、アメリカは北朝鮮の「プロパガンダ」に対抗するために
ハリウッド映画や韓国ドラマを収めたUSBメモリを北朝鮮国内に送り込む計画を立てた。

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米国、北朝鮮プロパガンダ対策のためフラッシュドライブを大量収集


ニューヨークの人権団体および非営利組織「フォーラム280」は
「フラッシュ・ドライヴス・フォー・フリーダム」キャンペーンの枠内で
北朝鮮プロパガンダに対抗するためフラッシュドライブの大量収集を始めた。


フラッシュドライブは北朝鮮戦略センターのソウル本部に送られ、
そこで欧米・韓国製の映画やTV番組を書き込まれる。のち、違法に北朝鮮に運び込まれ、
住民に配布される。このような形で、禁じられた欧米文化に親しんでもらおう、という企画だ。

以前は人権団体が市販のものを自費で買っていた。
年間10万個ほどのUSBメモリを集めることができたという。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20160213/1604694.html#ixzz408pMv8Ad

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お前たちがやっていることこそプロパガンダではないのか
という単純な疑問がここには存在しない。

ハフィントン・ポストの記事によると、
「韓国のドラマからハリウッド映画、朝鮮語版ウィキペディア、
 脱北者のインタビュー映像」等がUSBメモリーによって送られるらしい。


マイケル・ムーアの『華氏911』や
オリバー・ストーンの『プラトーン』が送られるなら歓迎したいがそれはないだろう。


『グアンタナモ、僕達が見た真実』という映画がある。
 
「タイトルの「グアンタナモ」とは、キューバ東部で、米軍基地が置かれている敷地。
 
 アフガニスタン侵攻後に捕らえられたテロリスト容疑者たちが送り込まれ、
 取り調べを受ける場所である。

 本作は、テロリストと勘違いされてグアンタナモに送られた青年たちの運命を、
 モデルとなった本人のインタビュー映像も交えて再現した、いわゆる「ドキュ・ドラマ」だ。

 イギリスに住むパキスタン人青年が、母親が見つけた相手と結婚するため、
 式を祝う2名の友人を伴ってパキスタンへ向かう。隣国アフガニスタンの状況を知った彼らは、
 何か援助活動をできればという軽い気持ちでアフガンに入ったところ、身柄を拘束されてしまうのだ。

  無実であるにもかかわらず、イギリスに潜伏していたテロリストと勘違いされる過程が、
 背筋も凍るリアル描写で展開。米軍側の虐待は、肉体的拷問はもちろん、大音響の密室に監禁し、
 イスラム教の信者にとって命より大切なコーランを捨てるなど、ショックを通り越していく。
 
 演じる新人俳優たちのまっすぐな表情と、モデル当人たちの淡々とした回想の相乗効果も、
 悲劇性を際立たせる。この映画が描くことすべてが真実であるなら、
 世界は本当に恐ろしい状況に陥っていることを実感するだろう。

 どんなニュース映像にも負けない、「映画」としてのパワーが、ここにある。(斉藤博昭) 」

この映画はイギリスで作られたが、
同様の作品はハリウッドで製作されていない。


代わりに作られたのが北朝鮮の金正恩暗殺を面白おかしく描いた『ザ・インタビュー』である。
この作品はCIAの協力の下、製作されたが、
これを風船にくくりつけて北朝鮮に飛ばすというキャンペーンが過去、行われている。

この人権団体の皮をかぶった政府のエージェントがおりなす体制転覆策動の参加者が
今回のUSBメモリ大量送付プロジェクトの中心者
らしい。さもありなん。

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アメリカの人権団体が、使わなくなったUSBメモリーの寄付を募集している。
欧米や韓国の映画・テレビ番組を詰め込んで、北朝鮮に持ち込むためだ。

~中略~

「Flash Drives for Freedom(自由のためのフラッシュドライブ)」と名付けられたこの企画は
「人権基金」と「フォーラム280」という2つの団体によるもので、狙いは、
 平壌の国営放送を通さずに北朝鮮の人に外の世界を見せることだ。

「USBメモリーは北朝鮮で利用可能なテクノロジーで、人々の情報伝達に使われています」
 人権基金の最高戦略責任者アレックス・グラッドスタイン氏はワイアード誌にそう語った。
「1つのUSBメモリーが誰かの人生を、文字通り変える潜在能力を持っているのです」

~中略~

グラッドスタイン氏といえば2015年にも、風船に「ザ・インタビュー」のコピー
約10,000本をくくりつけ、北朝鮮にばらまく計画を指揮したことで知られている。

「ザ・インタビュー」は、インタビュアーが金正恩を暗殺するという内容が
波紋を呼んだコメディー映画だ。北朝鮮はこの映画の公開に激怒し、
アメリカ政府と舌戦を繰り広げながら2014年には配給元のソニー・ピクチャーズに
ハッキング攻撃をしかけた。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/10/north-korea-usb-drives_n_9206480.html
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ハフィントン・ポストは北朝鮮の仕業と決め付けているが証拠はない。
アメリカ政府の主張をなぞっただけの見解だ。

これに対して北朝鮮政府は米朝共同の調査を提言したが却下された。

結果的に、この事件が良い宣伝になり、この映画は異例のヒット作になった。
アメリカのセキュリティ会社は、社内の人間がハッキングした疑いがあると主張している。

この事件で、どこが最も利益を得たのかを考えれば、誰が仕掛けたのかは明確だ。


送り込む映画には『ハンガー・ゲーム』、アメリカドラマで『デスパレートな妻たち』と
本当にそんなものを見て体制転覆につながるのか疑問に思うものが含まれている。

どうせ送り込むなら、私は是非とも『地獄の黙示録』か『誰も知らない基地のこと』をお勧めしたい。
前者は有名な作品なので、後者の紹介文だけを以下に載せようと思う。

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日本人が知らない米軍基地問題の常識

世界中の米軍基地で様々な問題が起こっている-
なぜ、基地はなくならないのか? なぜ、基地は増え続けるのか?

尖閣諸島、竹島の領土問題で緊張高まる中韓関係を背景に、
長引く普天間基地移設問題に加え、オスプレイ配備、米兵による犯罪など
米軍基地をめぐる問題が連日、メディアをにぎわす。

だが世界に目をやれば、基地問題は日本だけの問題ではない。

現在、世界の約40カ国に700箇所以上の米軍基地が存在する。

なぜ、戦後60年以上過ぎても基地をなくすことができないのか?

本作は2007年にイタリアで起こった基地拡大への反対運動をきっかけに、
イタリアの若手監督2人がその謎を探る旅に出て制作したドキュメンタリー。

主な取材地はピチェンツァ(イタリア)、ディエゴ・ガルシア(インド洋)、普天間(沖縄)。
基地の騒音や兵士が起こす事故に苦しむ住民と専門家への取材を通じ、
横暴な米軍と膨らみ続ける軍産複合体の真実を暴いていく。

沖縄返還から40年を経た今、 一国の存在意義を揺るがす重要課題でありながら、
国民全員がその実態を把握しているとは言い難い沖縄基地問題。

本作はその入門編としても最適であり日本人が必見のドキュメンタリーだ。
(C)Effendemfilm and Takae Films
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なお、海外ニュースの翻訳記事を毎日アップしている
『マスコミに載らない海外記事』の最新記事
「簡単な10のステップで実現できるファシスト・アメリカ(日本?)」では、
ファシストの条件として、以下の10点が挙げられている。

1 国内と国外に恐ろしい敵を作り上げる
2 政治犯収容所を作る
3 暴漢カーストを育成する
4 国内監視制度を作り上げる
5 市民団体に嫌がらせをする
6 専断的な拘留と釈放を行う
7 主要人物を攻撃する
8 マスコミを支配する
9 反対は反逆に等しい
10 法の支配を停止する


まぁ、どこの国にも当てはまるような気がしなくもないが、
番号8「マスコミを支配する」は、まさに今回のニュースに該当するものなのだろう。

(問題は、こういう嫌がらせを政府と民間が結託して行っているところ。
 今回の運動も表面的には民間NPOの活動として報じられている。
 現代の「民主化運動」と称するプロパガンダ活動は、
 スポンサーがわからない(わかりづらい)システムが構築されている)


・追記

「情報が一部の人間によって秘匿されている」というチョムスキーの主張を読むにつれ、
 中国の南シナ海における動きを思い出した。

 いわく、中国は人工島を建造しようとしている、危険だという話だが、
 南沙諸島にある18の小島のいくつかは台湾やフィリピン、ベトナム、マレーシアが
 軍事占領し、すでに基地が建造されている場所もあるという事実が全く触れられていない。

 ちなみに、中国はどこの島も軍事占領していない。

 特にフィリピンの軍事占領は凄まじいもので、
 1978年までに18のうち7つの島を占拠した。

 なお、フィリピンは日韓同様、アメリカの属国である。


フィリピンは2014年にアメリカと軍事協定を締結し、
在比米軍を拡大すること、具体的には自国の基地を米軍に提供することを決定した。

フィリピンではマルコス軍事政権が86年に退陣し、民主化が進む中で
米軍の駐留に反対する声が叫ばれるようになり、1992年には全米軍が同国から撤退していた。

つまり、2014年の軍事協定は単なる協定ではなく、
一度は撤退したはずの米軍の再駐留が可能となるものだった
のである。

なお、この動きに対して反対派は憲法違反だと抗議し、裁判所に訴えたのだが、
フィリピン最高裁は上の協定を合憲と判断し、彼らの声を黙殺した。

こういう動きの中、
アジア最大の米海軍基地、スーピック基地の復活がはじまっている。

2015年には日本の事実上の軍隊とも共同軍事演習を開始し、協力体制が築かれつつある。

集団的自衛権を巡る動きは、このような南シナ海の動きに連動して起きているのだが、
これを指摘し、すでに日本はフィリピンと結託して戦争・紛争の準備をしている
と主張する人間がどれだけいるだろうか?大いに疑問である。


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