時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

英仏の欺瞞に満ちたシリア空爆 (対テロ作戦の真のねらい)

2015-12-07 00:11:52 | 中東
イスラム国(IS、ダーイシュ)を支援していた国として
アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア等が挙げられるが、
先のパリのテロ事件を口実に、この内の半数以上がシリアへの空爆を強化し始めた。

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英国は、シリアにおけるテロ集団ダーイシュ(IS、イスラム国)への攻撃を強化する意向だ。

英国のマイケル・フェロン国防相は、ダーイシュ(IS)に対する攻撃作戦を展開中の空軍機が
離発着するキプロス領内にある「アクロティリ」英空軍基地を訪問し、次のように述べた。

「我々は、ダーイシュ(IS)への攻撃をさらに強める。
 英国政府は、テロリストらの司令本部や彼らの資金源に対する軍事攻撃を求めている。」

2日夜遅く、英国議会は、シリアにおける軍事作戦への自国の参加を承認した。
これを受けて2日から3日にかけての深夜、ダーイシュの陣地への初の攻撃が実施され、
3日から4日にかけての深夜も、作戦は続けられた。

英国防省は、標的となるのは、シリア東部の油田地帯の施設だと伝えた。
なおイラク領内のダーイシュの陣地に対する作戦は、国際有志連合の枠内で2014年から行われている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151205/1276136.html#ixzz3tYJyoQOU

シオニスト政権イスラエル軍の戦闘機が、シリア南部のダマスカス郊外をミサイルで攻撃しました。

パレスチナのゴッツ通信によりますと、
イスラエル軍の戦闘機は、4日金曜、数台のトラックを攻撃しました。
イスラエル当局は、これらのトラックは武器を運んでいたと主張しています。

シオニスト政権の戦闘機は、
これまで何度も、さまざまな口実を用いては、シリア領土を空爆しています。


これ以前に情報筋は、シオニスト政権が、
シリアのテロ組織ISISやヌスラ戦線に武器や資金を提供していることを明らかにしています。

http://japanese.irib.ir/iraq/item/60366
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以前から指摘していることだが、シリア政府はこの空爆を許可していないし、
そもそも、これら国家はシリアに無断で爆弾を落とし、場合によっては誤爆もしている。

当然、国内でも反対の声は大きい。
例えばイギリスでは国民の約半数(3000万人)が空爆に反対している。

英国のキャメロン首相は空爆に反対する人々を「テロリズムの味方」と規定した。
彼の理屈では、3000万の市民がテロリストの支援者ということになる。

だが、忘れてもらっては困るが、そもそもテロリストを経済的軍事的に支援してきたのは
米英仏・列強侵略トリオおよびイスラエル・トルコ・サウジの中東侵略トリオだ。

イランラジオのキャラミー解説員は次のように語る。


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ISISによるパリ同時多発テロの後、
 まずはフランス、それに続いてイギリスとドイツがシリアでのISISとの戦いに入りました。

 ~中略~

イギリスとフランスは、
シリアのISISに対する空爆を自国の安全を保障するものとみなしている中で、
この5年間、テロの危険の拡大とこれらの国でのテロリストの活動を事実上黙認していました。


イギリス、フランス、ドイツは、シリアとイラクの
ISISの拠点に対する空爆によりアメリカの対テロ連合の作戦に参加していますが、
この連合は基本的に、2014年12月の結成時から多くの曖昧な点を含んでいます。
 
この連合のこれまでの行動は、ISISの弱体化や消滅の助けにはなっていません。

シリアやイラクのISISの拠点に対するアメリカ率いる連合の偏った攻撃、
対ISIS作戦の一方でのこのグループへの支援は、この連合の存在を見せかけのものにしています。

アメリカの対ISIS連合の失敗の経験に注目すると、
イギリスとフランスのシリア空爆への参加が実を結ぶことはないでしょう。
 
なぜなら、この攻撃は、
シリアのアサド合法政権との調整によって行われていないからです。


シリア領空でのイギリスとフランスの利己的な動きが、イギリス国防大臣の言うように、
イギリスやヨーロッパの他の国々の街中を安全にすることはないでしょう。

なぜなら、アメリカの対ISIS連合の存在にも拘わらず
パリの街頭がISISの攻撃に晒されたからです。


テロとの実際の戦いは、シリアの現政権と軍隊との協力にかかっています。

ロシアとイランによるテロとの戦いでのアサド政権への協力は、
この悪しき現象との闘争の真の戦線を示しており、
シリア各地へのISISの影響力を弱めることにつながっています。
(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/60420)
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シリアのアサド大統領は、
大統領はイギリスとフランスのシリア空爆は違法で無意味なものだとし、
「イギリスとフランスは、シリアのテロリスト支援の筆頭にいる」と述べた。

実際、英仏は武装組織への支援を止めていない。
これについてモスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ氏は次のように説明する。


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ところでここ数日、ダーイシュの石油インフラへの爆撃に英仏が加わった。

英仏の動機は異なる。
オランド仏大統領はテロリストらに
先日のパリへの攻撃の見せしめを行う断固とした姿勢を示そうとしている。


キャメロン英首相にはダーイシュに対する勝利者のひとりとなり、
シリアの将来を決める権利を得たいという目論見がある。


キャメロン氏はオバマ氏と同様、シリアの将来をアサド氏抜きで描いており、
米国と同じように現シリア政権に反対して戦う他の武装集団をテロリストとして認識することも、
これに攻撃を行うことも拒否している。



それだけではない。
反アサド派にアサド体制転覆を、またはシリア領土の一部を強奪するのを幇助するため、
米英はどうやら今、NATOの陸上部隊をシリア領内に送り込むことをたくらんでいるらしい


言い方を変えると、
テロリストらには西側が嫌うアサド氏をどかすことが出来なかったため、
西側のテロリスト庇護者らは今度は自ら乗り出して国家テロを起こそうとしている
ことになる。

テロを相手にした戦争に加わるにあたり、
日本が絶対に理解しておかねばならないのは、このゲームの非常におかしなルールだ。

テロリストと認証されるのは
欧米や他の「文明国」に攻撃を仕掛けた人間だけであり、
シリア、ロシア、中国にテロ攻撃を行う者らは
自由や民主主義を勝ち取ろうと立ち上がった「文明人」と見なされる。


問題なのはこうした「戦士(文明人)」らは
よくコントロール下から外れてしまい、欧米の一般市民を殺害しはじめるということだ。


もし日本がテロリストを「悪者」と「善玉」に仕分けるとすれば、
日本も裏切り者らの標的になりかねない。こうした裏切り者は
西側から資金と援助を喜んで受け取りながらも、やはり西側の文明、
これに日本も相当するのだが、これを敵ととらえ、勝利を手にするまで戦うべしと考えている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151205/1275551.html#ixzz3tYQTcpzA
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イワノフ氏は「コントロール下から外れてしまい」と述べているが、
私はイスラム国といっても一枚岩ではなく、列強が同組織の派閥抗争を利用して、
親NATO派を支援しながら反NATO派の拠点を攻撃しているのではないか
と考えている。

実際、これまで歴史的に列強諸国家は、
自分たちに従う「レジスタンス」を利用して邪魔になりそうな「ゲリラ」を潰してきた。

典型的なのがインドネシアの事例で、スカルノ政権を転覆したスハルトは
アメリカのお気に入りだったが、彼が真っ先に着手したのが国内の共産党党員の虐殺だった。

コンゴではアメリカとベルギーは、後に「アフリカ最凶の独裁者」と呼ばれるモブツを支援し、
当時国民に人気のあったルムンバを暗殺、政権を掌握した。
モブツはこの功績を称えられ、ケネディから功労勲章を得ている

モブツはルムンバと同じ組織に所属する人間だった。
スターリンとトロツキーのそれが典型的だが、組織である以上、派閥の抗争は避けられない。
歴史的に列強は常にグループ内の対立を煽り、巧みに利用して自己の支配を拡大させてきた。

ISISは巨大な組織で、シリア、イラク、アフガン、トルコと広範囲で活動している。
当然、派閥はあるはずで、今回の英仏の空爆もまた、ISIS組織内の反米、反仏派を一掃し、
自分たちの言うことだけを聞く人間に実権を握らせようとしているのではないだろうか?

無論、これは推論にすぎないのだが、パリの事件以前に、
ヌスラ戦線へのロシア軍の空爆を「穏健派の攻撃だ」と非難する一方で、
アフガンのタリバンを「反政府組織」と称して撲滅に励んでいた様子を見ると、
同じアルカイダ系でも敵と味方をその時々の都合で区別している気がする。

実際、彼らが攻撃しようとしている組織は、
ISIL→ISIS→IS→ダーイシュと日本維新の党並みに次々に分裂・統合・改名しており、
ダーイシュを攻撃することはダーイシュと敵対する過激派の援護へとつながるのである。

列強に逆らわないテロリストを支援し、体制を転覆させ、自国に有利な軍事・経済協定を結ぶ。
19世紀から続く列強の帝国主義は健在だ。グルジアやウクライナの教訓を私たちは忘れてはならない。

留意すべき事実は、こういう狡猾で残忍なゲームの仕掛け人が民主主義国家だということ
民主主義は完全無欠の政治システムではない。そのことを忘れ、善悪二元論で他国を貶め、
独善的な態度で非西欧型国家を攻撃しつづける姿勢は断じて許すわけにはいかない。


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