ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

武田邦彦の「生物多様性のウソ」を読む

2011-06-24 21:27:58 | 武田邦彦
  武田邦彦が6月の初めに「生物多様性のウソ」という本を出しました。読んでみた結論から言うと、池田清彦以下の質で参考にできる部分は皆無です。論拠を示さない発言が多くまともに取り合う価値もないし、買う必要もありません。これを読んでどうしても気になったら立ち読みで済ませましょう。
とはいえ、どこがおかしいのかよくわからない人、違和感はあるけれど言葉にできない人、実際にこの理屈でからまれてきた場合の対処法がほしい人はいると思います。
ここでは、そういった人をターゲットに武田邦彦の事実認識、論理のおかしいところを指摘していきます。
それでははじめていきましょう。

P12
「東京23区の自然は破壊されているかと?」と聞かれて「自然は豊かに残っています」と答える人はいないでしょう。皇居を除けば東京23区はコンクリート・ジャングルで大型の野生動物などは全く生きていくところがありません。


しょっぱなからトバしてくれます。まず、東京タヌキ探検隊のタヌキ・ハクビシン・アライグマの目撃情報の集計によると、練馬区や杉並区、新宿区などでタヌキが多く見られるようです(詳しくはリンク先参照)。皇居以外でも大型の動物がいないわけではありません(こう書くとタヌキは中型動物とかいう人も来るかね)。
また、外来魚類の投棄が多くタマゾンとすら呼ばれる多摩川でも近年では天然アユの遡上が確認されています(多摩川のアユ、推定遡上数が過去最高を記録!)。アユは川と海を行き来する回遊魚ですから、川と海の両方の環境が整わなくては生息できません。むろん、侵入してくる外来生物などはありますが、一方で環境は改善されている部分もあります。
また、P20とP28にはそれぞれ生物の属の数と絶滅割合を示したという図が出てきますが、これが奇妙です。まず出典が明らかにされていません。何のデータをもとに作ったのか全く分かりません。読者がより深く理解したい場合、出典を示さないのは非常に困ります。それらしき文献を自分で調べ、判断しなければならないのですが、仮に武田氏に「こういうこと?」と聞いても武田氏が「違う」と答えたらやり直しです。
どうして武田氏は読者に意地悪をするのでしょう?
さらに、もう一つ問題があります。武田氏はこのように主張しています。


P21~22
自然界の中には時々、遺伝的に弱い「種」ができこともあり、そのような種は短い期間に絶滅します。しかし、「属」となると複数の種を含みますので、容易には絶滅しません。そこで長い歴史を見るときは「属」で整理する方が適当です。


しかし、P28ではこのようなことを書いています。


上のグラフは先に示したグラフと同じ時間の幅のものです。
カンブリア紀が始まってから3億年余り続いた古生代では、グラフのピーク(鋭い山のようになっているところ)が多く見られます。このピークは「生物種の数がどれくらい絶滅したか」を示すものですから、古生代にはしょっちゅう、生物の大量絶滅があったことがわかります。


先に示したグラフというのはP20の生物の属の数を示したというグラフのことです。
なぜ武田氏は長い歴史を見るときに適当であると自分から主張している“属”ではなく“種”で絶滅割合を評価しているのでしょう?武田氏の言葉を借りるなら、種は短い期間に絶滅するものもいますから、属で評価するより過大評価になりそうなものですが。
第一回目はこのくらいで終わります。さて、梨のSAN値は予定していた批判をすべて終えるまで持つでしょうかw




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31 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
梨、大好きなのに。 (ひろ)
2011-06-28 16:19:34
他人の批判をご自分のブログに載せるって、何様のつもりなんですか?
恥ずかしいと思わないのですか?
悲しいですね。
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はじめまして (SOTO)
2011-06-28 18:14:36
武田邦彦は政治的存在と化し、今や冷静な批判に対して政治的立場から擁護論が展開される存在となりつつある。
だからと言って、批判がはばかられれば、益々武田邦彦の害が広まることになります。
正直なところ、武田邦彦が土建業界や釣り道具業界などと結託し、その妖しい権威性を利用して業界の代弁者のように振る舞い始める危険性がどんどん増しています。
商売根性丸出しの武田邦彦に対して、真面目な立場からの批判が今程必要とされる時はない。
今後とも冷静な立場での武田邦彦批判をご継続頂きたく応援させて頂きます。
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Unknown (マルボロマン)
2011-06-28 20:12:38
ひろさん

そういうあなたが書かれた事も他人の批判ですよ。
あなたは何様ですか?
あなたは恥ずかしいと思います?

他人の批判を自分のブログでやっちゃいけない世界をお望みですか?
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Unknown (梨(管理人))
2011-06-30 01:12:50
ひろさん
どうやら自分は良くて他人はダメというよくわからない特権階級にいる方のようですね。
僕は数年前から根拠なき発言に対し批判していくという姿勢ですが今更ですか?
大好きというくらいなら昔から目を通しているはずでしょうけど。あからさまにばれるウソは止めた方がいいですよ?
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Unknown (よう)
2011-06-30 14:33:25
特権階級というコメントを読んで、少し思うところがあるのですが、梨さんが、本気で他者を批判しようという心構えをお持ちなら、武田邦彦さんと同じように、名前と顔を出した上でやらないと、アンフェアでしょう。

梨さんは、自分は名前も住まいも公表はしないが、そのくせ他者批判はしたい、と思っているようです。しかしそれは、結局、物陰から石を投げているに過ぎません。

根拠なき発言に対して批判をするのは結構ですが、梨さんという存在自体に根拠がないのでは、どうしようもありません。それこそ、特権的な位置からいいたいことだけをいっているだけです。

それでは結局、誰に何の影響も与えることはなく、ただバリケードの向こうから石を投げている卑怯な奴がいる、というだけで終わってしまうことでしょう。

梨さんがご自身の立場を賭けて批判に挑む覚悟でおやりになるときは、また私も本名を提示してコメントに参加させていただこうと思います。
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Unknown (マルボロマン)
2011-06-30 16:44:03
ようさん、袈裟を奉って拝みますか?
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Unknown (逢坂)
2011-06-30 16:59:54
ようさんの言葉をお借りすれば、優れた匿名批判はバリケードの向こうから的確に石を命中させているという事です。
バリケードの先からぶつけるよりも高度な技術ではないですか。
匿名、実名なんてどうでも良い事ですよ、大事なのは内容。
ペンネームで優れた批判をしてこられた方は少なくないですよ。

>梨さんという存在自体に根拠がないのでは、どうしようもありません。
バックナンバーを全部読まれての発言ですか?
十分な根拠になりえると思いますよ。
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どこまで笑わせる気ですか? (梨(管理人))
2011-06-30 21:44:18
ようさん
実名批判をするようになれば論理矛盾もせず論理的思考能力が上がるのでしょうか?
肩書が内容の確実性を100%裏付けないことくらいはここの読者には周知の話かと思いましたがそうでもないようすね。
矛盾の指摘に対し、匿名実名に論理をすり替えるのは何の意図がおありで?
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根拠は? (C-D)
2011-06-30 21:53:42
ようさん

「匿名での他者批判はアンフェアである」というようさんのコメントを読んで少し思うところがあるのですが、武田氏の場合は、その名前で稼いでいるのですから、批判されるリスクもその稼ぎに含まれているのではないでしょうか。
しかし、我々一般人はそうではありません。なのに、一般の我々が匿名で武田氏を批判することがなぜアンフェアになるのか、その根拠は何なのでしょう?
白を黒と主張する人の意見に、「それは白ですよ」と言うのにさえも、いちいち実名を出さなければいけないのでしょうか。
大体、成りすましが可能なネット上で実名を出したところで、普通の人にはそれが本人かどうかを確かめる術なんて、ほぼ無いじゃないですか。
何だか微妙に一般論に摩り替えようとしていますが、私には、おかしなことををおかしいと言うのに実名か匿名かが問題になるとは思えません。
何かこうした意見表明は実名で無ければならぬという客観的な根拠があるのなら、ぜひ教えてもらいたいです。
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Unknown (はな)
2011-07-01 23:17:26
ひろさん、ようさん、理解します。
管理人さんたちは、相変わらず重箱の隅がお好きなようで。挙句の果てに、他人の重箱までもかって感じがします。(ここはイメージなので)
やっぱり、個人がネットで実名だしても意味がないとかどうのではなく、批判する姿勢になにか問題があるのではないかと。
まあ、何を言っても無駄でしょうけど、ブログの冒頭に、「ここは、ちょっと変な科学者の間違いをつついたりして、内輪で楽しむ場所ですので、一見さんお断り」くらいの案内があってもよいのではと思いますよ。
それを知らないと、ちょっと感じ悪くなるので。いっそのこと、「あげ。。。」みたいなのってどうでしょうか。
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