ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

進化と自然から学ぶということ

2010-08-20 00:01:59 | いい加減なモノ
 自然を尊ぶというのはまあ個人の自由だと思いますが、内実が伴っていなければ無意味ですよね。今回はそんなサンプルを見つけましたので突っ込んでみます。
ハーモニックトラスト

>病気にもならず、虫にも負けない、そんな強い生命が偉い!

基本的に生物とそれを作り上げてきた進化の歴史はそんなに甘くないです。昔、「福岡伸一の幻想を破壊してみた」でも書いたけど、進化は慈善事業じゃないんですよ。人間が食べやすいように品種改良してきた動植物というのは基本的に病気などの外敵に対する免疫が弱くなっています。具体例をあげるならハチ。養蜂で広く使われているセイヨウミツバチはダニなどへの耐性の面でニホンミツバチより劣っています。進化生物学的にいえば、免疫などに振り分けるリソースを削って、その分を人間の好みに合わせる方向に進化させています。何にもしないのに野菜の力だけで虫がつかないという野菜があったら、それは昆虫を忌避させるような物質を出していると思われます。いわば天然の殺虫剤に近いもの。
というかですね、それを突き詰めたらトリカブトやドクゼリみたいなほとんどの草食動物が忌避する毒草の類こそが一番偉いんじゃないですか?まぁ人間どころかセルロースならなんでもござれ、枯葉も食べちゃうシカですらめったに食べませんが。
自然に学ぶと言いながら自然のことを客観的に理解しようとしないのはどういうことなんでしょうね?

枯れる野菜と腐る野菜の見分け方

引用
あなたの周りの自然を見てみると・・・。
野を見ても山を見ても、腐っている場所はありません。すべては色づき、やがて枯れていきます。これはあらゆる植物に共通した現象です。
植物である以上は「枯れていく」、
これが本来の姿です。
自然の植物は「枯れる」のに、買ってきた野菜はなぜ「腐る」のか?自然の摂理に背いた結果ではないだろうか?そんな違和感を覚えます。
引用終わり

・・・・・・こいつはフィールドワークの経験がないのか?柿の実が熟れて鳥につつかれて地面に落ちて腐ったところを見たことがないんですかね。別に柿じゃなくても酵素や細菌に代表される分解者によって地面に落ちたりしたものが腐るくらいありふれていますが・・・。ただ、生きた葉だとタンニンなどが分解を阻害しているだけの話。
 お次は植物の基礎知識。

引用
農学の常識は、わずか1メートルにも満たない、土の層での、植物の育つ栄養分であるチッソ・リン・カリの足し算、引き算の計算の上に行われています。
しかし、岩場の松の木も、山の樹も、野の草花も、チッソ・リン・カリを補わなくても、育っている。
つまりチッソ・リン・カリ以外の何かによって、自然界のなんらかの仕組みによって育っているということが考えられるのです。
引用おわり

断言してもいいけど、この人植物に関する基礎知識すらないですね。リンや窒素は風によって運ばれてくる時もあるし、土中の細菌が固定することもある。また、マメ科植物が土中や空気中の窒素を細菌の力で固定するのは有名な話です。自然に学ぶと言いながらその自然に対する初歩的な知識すらない人間がこんなことを嘯くのは滑稽を通り越して戦慄を覚えます。この先もあるようですがいちいち指摘するのも面倒なのでここまでにします。

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4 コメント

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Unknown (さんにゃん)
2010-08-20 21:09:15
こんにちは。
ご紹介先のテキスト、田舎者の私にはあほらしくてとても読み通せません。適当なところで腐ってくれないと、それこそ自然の摂理がめぐらなくなるんじゃないのか。
まさか街路樹の手入れが、こんなトンデモを生み出すとは…(><)
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ですね (梨(管理人))
2010-08-21 10:47:04
さんにゃんさん
全くです。自然に学ぶというなら自然を見てくれよorzといつも思います。
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微妙に恥ずかしい (梨(管理人))
2010-08-22 10:49:56
>別に柿じゃなくても酵素や細菌に代表される分解者によって地面に落ちたりしたものが腐るくらいありふれていますが・・・。

正確には酵素自体は分解者じゃないだろ。やっちゃったね自分orz
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AAA (AAA)
2011-10-21 06:05:20
野菜が安全でうまけりゃそれでよし。
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