RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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驚くべきリアル スペイン、ラテンアメリカの現代アート -MUSACコレクション-

2014-04-24 21:30:00 | 美術
見てきました

東京都現代美術館

会期は2014年2月15日から2014年5月11日。

慶長遣欧使節団派遣400周年を記念し、2013年および2014年には、「日本スペイン交流400周年事業」として、様々な催しが行われています。
この展示はその一環。
スペインの90年代以降の作品にフォーカスしたカスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションから「驚くべきリアル」をテーマに27作家の作品が展示されています。

撮影可能でした。
撮ってきた写真とともにお気に入りをご紹介します。


ホルヘ・マキ「血の海(詩)」
糸かな、と思ったら細く切ってつなげた紙片。
よく見るとブエノスアイレスの事件と犯罪専門誌「cronica(クロニカ)」に掲載された警察の事件報告を行ごとに細く切ってつなげたもの。

中央で束ねられている部分は同じ言葉「charco de sangre(血の海)」と。
「彼は大きな血の海に横たわっていた」
「その死体は血の海と化した歩道の上にあった」
など事件は異なるのに、同じ状況がある、という。。。
ブエノスアイレス、すごく怖いイメージがあるのですが…ますます怖い。
そういった状況への問題提起、でしょうか。


ディアンゴ・エルナンデス「分断されたリヴィングルーム」
真っ二つに切断された家具を左右対称に配置。
作家はキューバ出身。
日用品を本来と異なる文脈で利用し、比喩的に共産主義国家におけるプロパガンダや愛国主義を問うスタイルだそう。
革命後も思想的分断や亡命などの問題が続くキューバ。
ワイヤーによってかろうじてその姿を保っているリヴィングルームは、もとのようには機能しません。。


カルロス・ガライコア「なぜ地はこんなにも自らを天に似せようとするのか」
そう、これは夜空ではなく大きな夜景の都市模型。
タイトルにうなずきます。
地上にある人口の星空。
幻想的ですが、なにか矛盾しています。


ミゲル・アンヘル・ロハス「聖女1」
コロンビア・アンデス山脈の霧がかかった森林という幻想的な景色。
そこに白い斑点と文字。

よく見ると斑点はどくろ。
文字はスペイン語で「天よ、上より水を注げ」という意味の聖書の一説。
ここでいう霧はコロンビアの麻薬生産を撲滅するために政府がアメリカ支援のもと、環境や人体に有害な除草剤を空からコカイン農場へ散布した作戦を想起させるのです。
この事実を知ると一気に幻想的な景色の見え方が変わってきます。


ホルヘ・ピネダ「無邪気な子供」
壁の中に隠れてしまっている子供。
かくれんぼでもしているのかな、と思いきや。
作家の出身はドミニカ。
育ったときは独裁政権崩壊後の相次ぐクーデターとアメリカの軍事介入で情勢がゆれ、民主化とそれに続く新自由主義経済化によって目まぐるしく変わる時代でした。
展示室の壁を使ったインスタレーションが多く、社会的マイノリティを取り上げたものが多いそうです。
この作品はコロンビアで50年以上続いた内戦とそれにより暴力が日常化した日々に言及したもの。
さて、この子供はかくれんぼをしているのか、それとも身を隠そうとしているのか。。


エンリケ・マルティ「訪問者たち」
ずいぶんとバランスの悪い人形。
マルティはモデルを常に親しい人から選んでいるそうですがこの作品も友人(同一人物)を模したもの。
この作品は移動遊園地をテーマとしたMUSACでの展覧会「瓶の中の精霊」のために作られた作品。
彼はそこで映画館や小部屋や迷路を作り多頭男や蛇女といった見世物を展示。
この3人はその見世物を見て回る人、つまり観客として作られたもの。
皮肉たっぷりです。

このほかにもあったのですが、映像作品などもありました。
チラシに使われている馬に乗った男性の作品も映像作品。
フェルナンド・サンチョス・カスティーリョ「馬に捧げる建築」
これはマドリード自治大学の哲学科の建物がフランコ政権時代に建てられたとき、デモ鎮圧のための警官隊の馬が構内に入りスムーズに動けることを意図して設計された事実に想を得ています。
馬が滑って転倒するように学生たちはビー玉などを投げ、抵抗したそう。
すごい事実です。
この作品の中ではスーツの男性が馬にまたがり大学の講義室、廊下などを歩き回る作品。
おもしろいかったです。

また、ハビエル・テジュス「保安官オイディプス」はソポクレス作のギリシャ悲劇「オイディプス王」を西部劇にアレンジしたもの。
彼は精神病患者とのコラボレーションで映像作品を作っているそうですが、これもまたしかり。
この作品ではオイディプスは統合失調症として描かれています。
能面をかぶった人物たちが繰り広げる世界はなんだか奇妙でなんだか怖い。
でも、おもしろかったです。
映像作品では一番楽しく見れたかな。

以上になります。
スペインやラテンアメリカ諸国の現代アートに触れる機会ってそうそうない。
そしてこういったもので取り上げていないと知らない事件などもあります。
そういった意味でも面白かったです。



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