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いかにしておじさんは幽霊達と母胎の穴で息を引き取ったか

2011年05月10日 00時01分11秒 | CINEMA
昨年のカンヌ映画祭でタイ映画史上初の
パルムドールを獲得した「ブンミおじさんの森」。
監督はアピチャッポン・ウィーラセタクンという一回じゃ覚えきれない名前の人。
タイ映画というと今まで「マッハ!」とか「チョコレート・ファイター」みたいな
ムエタイ映画のイメージしかありませんでしたよ(笑)。


農園を営むブンミは腎臓を患っており自らの死期が近いことを感じている。
ある日義理の妹ジェンと夕食を取っていると、
突然食卓に20年前に死んだ妻フエイが幽霊となって現れる。
驚きながらも昔話に花を咲かせていると、
その直後に現れたのは森で行方不明になり猿の精霊となった息子ブンソン。
彼等はブンミの死期を悟って集まったのだった。
ブンミはやがて森の奥へと分け入っていく、自分がかつて生まれた森の中へ。

ストーリーだけを追うとかなりエキセントリックな物語に思われがちですが、
非常に奇妙な心地よさを感じさせる作品。
本作が示すのは生と死、前世と今世が渾然一体となった東洋的死生感。
死んだら天国に「行く」のではない。
あるのは死者も生者も完全に地続きの世界。

切り取った風景が郷愁を誘うのは、それが変わることのない美しさに満ちているから。
後半訪れる洞窟の中に輝く星空の眩さといったら!!

後半葬儀を終えて疲れはてたジェン一家のやり取りが続いた後、
唐突に衝撃的なシーンが現れます。
だがこの作品はそんな驚きもまるで生活の一部分であるように流れていく。

ラストに流れるPenguin Villaの「Acrophobia」がいつまでも耳に残ります。
人間も自然の中の一部なんだという事を再認識させてくれる一作。



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