ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治著

2014年11月13日 | 日本とわたし
エネルギー基本計画に対する原発への賛否について、市民から届けられたパブリックコメント。
みなさんの中にもきっと、コメントを送られた方もいらっしゃると思います。
わたしも書きました。

そのコメント総数1万8711件を、朝日新聞が分類したところ、

原発反対がなんと、94.4%という結果が出ていたことを、ご存知でしょうか?

反対意見として、
●民意を反映していない
●地震国で安全と言えない
●使用済み核燃料の処分場がない

などの意見が多数を占めていました。

残りは、
その他4.5%
維持・推進1.1%


維持・推進の意見として、
●安定供給
●温暖化対策
が記されていました。

↓画像をクリックすると、大きくなります。






私が、原発事故のことで、すごく反省しているのは、
「原子力の平和利用」という言い方に、なんとなく甘えて、
これまでの生活を送ってしまったことです。

原子力の平和利用なんてない、
核というものは、人間とは共存できないものなんだということを、
事故で初めて自覚したように思います。

地震がまったくないような国なら、事情が違うかもしれませんが、
地震が多い日本では、とにかく原発稼働をやめてほしいですね。
地震が起こる限り、ずっと危険にさらされるわけですし、
事故のたびに、辛い思いをする方も出てきます。

「原発事故では、誰も死ななかった」などと、
平気な顔で言う人もいますけれど、
故郷を追われて行った避難先で、孤独に亡くなった方も、たくさんいらっしゃいます。

ですから、やっぱり私も、声を上げていかなければいけないと思っているんです。

吉永小百合さん





再稼働できない根拠

核のごみ満杯へ打つ手無し


↓引用はじめ

国内にある使用済み燃料は、2012年9月末時点で、少なくとも1万7千トン以上。
各原発の原子炉建屋内にある燃料プールの貯蔵占有率は、
福島第一、第二、柏崎刈羽、九州電力玄海、東海第二で、80%以上
六ヶ所村では98%に達してしまっている。

原発がもし、順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。

高レベル放射性廃棄物の最終処分では、場所すら決まっておらず、
使用済み核燃料が、国内の貯蔵能力を上回れば、事実上、原発の運転が不可能になる。


↑引用おわり



原発の苛酷事故から3年と8ヵ月。
事故直後からの数ヶ月の間に、大手の新聞テレビがどうも胡散臭いと気づき、インターネットや海外からの記事で情報を集め始めました。
それでも、とてつもなく大きなショックと混乱の中では、致し方が無い部分もあるだろうと、様子を見守りながら待つ気持ちもありました。
けれども…、
1年経ち、2年経ち、そして3年が経ち、
日本が、というよりも、日本を支配できる権力とカネを持っている者たちが、
この事故をまるで無かったかのように扱い、日本の市民にもそう思わせようとあれこれ画策し、見事にそれがうまくいっているのを見ながら、
ずっと考え続けていました。
いったい何が原因で、こんなにまで、どうしようもなく堕ちてしまっているのだろう。
いったい何が理由で、こんなにまで、何も変わらない、変えられないのだろう。

↓これだったんですね。



日米原子力協定とは?

1988年7月に交わした、原子力政策の密約。
有効期間は30年で、2018年7月に、満期を迎える。

第12条4項には、
「終了する前に、慎重に検討」とある。

第16条3項には、
「この協定が停止、終了した後も(ほとんどの条文は)引き続き効力を有する」とある。

しかし、協定を破棄させない限り、日本の脱原発運動はこれから先も、
原子力ムラに原発再稼働の権限を与えていくことになる。



この『日米原子力協定』について、とても分かりやすく説明されているのが、この本です。


http://www.shueisha-int.co.jp/archives/3236

ありがたいことに、立ち読みもできます!
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治著・集英社インターナショナル

http://www.shueisha-int.co.jp/pdfdata/0236/nihonhanaze.pdf



↓『立ち読み』より引用はじめ
ー前略ー

つまり「廃炉」とか「脱原発」とか「卒原発」とか、日本の政治家がいくら言ったって、
米軍基地の問題と同じで、日本側だけではなにも決められないようになっているのです。

条文をくわしく分析した専門家に言わせると、
アメリカ側の了承なしに、
日本側だけで決めていいのは、電気料金だけだそうです。



ー中略ー

「日米安保・法体系(上位)」 〉 「日本国憲法・法体系(下位)」
という関係は、一般の人には見えにくいものの、きちんと明文化されている問題です。
だから順を追って、ていねいに見ていくと、だれの眼にもあきらかになる。
しかし複雑なのは、さらにその上に、安保法体系にも明記されていない、隠された法体系があるということです。
それが「密約法体系」です。
つまり、アメリカ政府との交渉のなかで、どうしても向こうの言うことを聞かなければならない
しかし、これだけは、とても日本国民の目にはふれさせられない
そうした、最高度に重要な合意事項を、交渉担当者間の秘密了解事項として、これまでずっとサインしてきたわけです。
そうした密約の数々は、国際法上は、条約と同じ効力をもっています
ですから43ページ の図で見たように、
もともと、日本の法律よりも上位にあり、さらに砂川裁判最高裁判決によって、日本の憲法よりも上位にあることが確定している
約60年にわたって、そうしたウラ側の「最高法規」が積み重なっているのです。

ー中略ー

大気や水の放射能汚染の問題は、
震災前は、「汚染防止法の適用除外」によって免罪され、
震災後は、「統治行為論」によって免罪されることになった
わけです。
このように、現在の日本では、官僚たちが、みずからのサジ加減ひとつで、国民への人権侵害を、自由に合法化できる法的構造が存在しているのです。

ー中略ー

問題は、こうした協定上の力関係を、日本側からひっくり返す武器がなにもない、ということなのです。
これまで説明してきたような法的構造のなかで、憲法の機能が停止している状態では。
だから、日本の政治家が、「廃炉」とか「脱原発」とかの公約をかかげて、
もし万一、選挙に勝って首相になったとしても、彼にはなにも決められない。
無理に変えようとすると、鳩山さんと同じ、必ず失脚する。
法的構造がそうなっているのです。

ー中略ー

日米原子力協定という「日本国憲法の上位法」にもとづき、
日本政府の行動を許可する権限をもっているのは、アメリカ政府と外務省だからです。


ー中略ー

エルサレムで、1961年に始まった、ナチスの戦争犯罪者アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、
『エルサレムのアイヒマンー悪の凡庸さについての報告』という作品にまとめた有名な哲学者、ハンナ・アーレント。

そのアーレントが問いかけた、きわめて素朴で本質的な疑問、

つまり、大量虐殺の犠牲者となったユダヤ人たちは、
「なぜ、時間どおりに指示された場所に集まり、おとなしく収容所へ向かう汽車に乗ったのか」
「なぜ、抗議の声をあげず、処刑の場所へ行って、自分の墓穴を掘り、裸になって服をきれいにたたんで積み上げ、射殺されるために整然と並んで横たわったのか」
「なぜ、自分たちが15.000人いて、監視兵が数百人しかいなかったとき、死にものぐるいで彼らに襲いかからなかったのか」


それらはいずれも、まさに、現在の日本人自身が問われている問題だといえます。
「なぜ自分たちは、人類史上最悪の原発事故を起こした政党(自民党)の責任を問わず、翌年(2012年)の選挙で大勝させてしまったのか」
「なぜ自分たちは、子どもたちの健康被害に眼をつぶり、被曝した土地に被害者を帰還させ、いままた原発の再稼働を容認しようとしているのか」
「なぜ自分たちは、そのような『民衆を屈服させるメカニズム』について、真正面から議論せず、韓国や中国といった近隣諸国ばかりをヒステリックに攻撃しているのか」


そのことについて、歴史をさかのぼり、本質的な議論をしなければならない時期にきているのです。

↑引用おわり


ものすごい内容です。
でも、このものすごい闇が、ずっと隠され続けてきたことに、やっと気づくことができたのです。
そのことは、とても大きなことだと思います。
矢部氏はその、闇の深さを、わたしたちに分かりやすく説き、それを知り、考え、理解した上でどうすべきか、こう話してくださっています。


↓引用はじめ
『うまく目的地にたどりつけるかどうかは、正直わからない。
ただ自分たちは、それぞれの持ち場で、最善をつくす義務がある
そして、崩壊し始めた「戦後日本」という巨大な社会を、少しでも、争いや流血なく、次の時代に移行させていく義務がある
おそらくそれが、「大きな謎」を解くための旅をしている人たちの、共通した認識だと思います。
私もまた、そういう思いでこの本を書きました。
本書が、みなさんにとって、そうした旅に出るきっかけとなってくれることを、心から願っています』
↑引用おわり



わたしたちには、
崩壊し始めた「戦後日本」という巨大な社会を、
争いや流血なく、それぞれの持ち場で最善をつくし、
次の時代に移行させていく義務がある。

たとえ、うまく目的地に辿り着けないとしても、
わたしたちの社会の闇に潜む「大きな謎」を解くための旅に、
一歩足を踏み出さないといけない。


『原発』も『基地』も、日本の政治家には何も決められないのです。
そんなことにならされた密約(隠された法体系)をまず理解し、ではどうしたらいいか考え、知恵を絞り、出し合い、
それぞれの持ち場で、それぞれのできることで、最善を尽くす。
もうこれは、個人だけ、その地域だけ、日本だけの問題ではありません。
だからこそ、まずは日本のすみずみまでに、そしてさらには国の枠を超えて、声を行き渡らせていかなければなりません。
そして、日本全体の声、世界全体の声にして、
アメリカという着ぐるみを着た支配者や、すでに出来上がってしまっているシステムに、ノーを突き付ける。
そして、支配という鎖を断ち切り、システムを浄化し、日本が本当の『戦後』を歩める国になるよう、
未来を受け渡すわたしたちが、とにかくあきらめずに、義務を果たす。

がんばりましょう!