杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

日本酒を嗜む粋な女性たち

2010-09-17 11:47:09 | 地酒

 スーパー猛暑といわれた今夏の異常気象も、やっとひと段落ついたみたいですね。朝夕と真昼の温度差がグッと広がる、季節の変わり目のこの時期は、私にとって一年で一番、体調が狂う辛い時期でもあります。涼しいのに異様に汗をかいたり、後頭部がしびれるように痛くなったり、物事が思い通りに行かないとドーンと落ち込んだり・・・。友人から「ああ、それ、更年期だよ、気にしない気にしない」と励まされたりしています。

 

 

 

 先週のしのだ日本酒の会で準備をしていたとき、汗びっしょりになっていたのを心配してくれた萩原和子さん(篠田酒店)が、翌月曜の夜、ご自分の行きつけのスナックに誘ってくれました。昭和9年生まれで私の父と同い年なのに、ご自宅のある島田から篠田酒店ドリームプラザ店(清水)Photo まで毎日1時間以上かけて電車通勤し、職場では立ちっぱなしでつねにニコニコ接客している萩原さん、「篠田社長、大人しいから、自分の酒の会のときぐらいもっと目立ちなさいとハッパかけなきゃ!」と意気軒昂に語る姿には大いに勇気をもらいました。

 

 

 

 翌火曜は、浜名湖舘山寺のレストピア山崎さんに打ち合わせでうかがった後、久しぶりに樹木医塚本こなみさんにお会いしました。こなみさんは現在、P1000002 旧浜北市で農園を作り、さまざまな作物を育てています。樹木医として土に触れる姿は何度もお見かけしていますが、ご自分の農園で、初めて本格的に野菜づくりに取り組むこなみさんの表情は、いのちの源を育てる悦びややりがいに満ち溢れ、まったくのノーメイク姿だというのに、以前よりお若く、イキイキされています。こなみさんも還暦過ぎという御年、信じられません・・・。

 

 

 

 

 こなみ農園で収穫したてのサツマイモ、ゴーヤ、キュウリなどを持って、夜は豆腐料理『豆岡』へ。女将の岩崎末子さんは「昨年、お客さんが開店30周年と80歳の誕生祝いをしてくれたんですよ」と嬉しそうに語ります。女将さんの年齢を正確にうかがったのは初めてだったので、目がテン!になってしまいました。

 

 「今でも毎日寝る前に2合はお酒をいただくの、それが元気の源」とニッコリする女将。同い年で先に逝ってしまった栗田覚一郎さん(元県酒造組合専務理事)や松尾正弘さん(國香酒造前社長)の思い出話をひとしきりした後、こなみさんがボトル買いした國香純米大吟醸をいとおしそうに酌み交わしていました(私は車だったので麦茶でグッとガマンです・・・)。美しく年齢を重ねた女性たちが、日本酒をしみじみ味わう姿は、なんと粋だろうと見とれてしまいます。

 

 そうそう、『豆岡』には、いまだにアットエスの記事を見てきてくださるお客様がいらっしゃるとか。ご愛読、本当にありがとうございます!

 

 

Dsc_0001  翌水曜は、しのだ日本酒の会の吟醸王国しずおかノミの市ブースに貴重な本藍前掛けと手ぬぐいを出品してくれた『正雪』の神沢川酒造場にお礼にうかがいました。蔵の店先では99歳のお祖母様がシャンと座って迎えてくださり、女将さん(社長のお母さん)も現役で事務所を切り盛りしています。「義母は、代々のお客様リストがすべて頭に入っていて、◎◎さんは△ページの何段目、とパッと言い当てるんですよ」と女将さんは感心しきり。なかなか家を空けられない嫁と姑が、なんとか休みをもらって一緒に伊豆の温泉に行った話を嬉しそうにしてくださいました。

 

 ・・・日本酒が、女性の心身にどんな影響を与えるのかよくわかりませんが、少なくとも私の身近にいる酒と縁の深い女性たちは、揃いも揃って元気で長寿で美しい。・・・更年期だなんだと落ち込んでいる自分が恥ずかしくなります。

 

 

 やっと涼しくなって、グッと日本酒が美味しくなる季節を迎えます。私にとって更年期の治療薬は、日本酒を粋に美しく飲む同性と会うことかもしれません。もっと多くの粋女から、元気をもらいたいとしみじみ思う今日この頃です。