杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

長寿企業の条件

2010-04-09 13:58:06 | ニュービジネス協議会

 昨日(8日)は(社)静岡県ニュービジネス協議会西部部会総会が、浜松駅前のアクト研修センターで開かれ、行政書士法人アスカ総合事務所の岸本敏和理事長に興味深いお話をうかがいました。私が好きな、長寿企業、伝統企業Imgp2100 のお話です。

 

 

 世界中で、創業200年以上続く会社は7750社あるそうです。マイスターの国ドイツは約800社、オランダは200社、建国250年ほどのアメリカにも14社あるそうです。逆に歴史のあるインドは3社、中国は9社しかありません。「会社」という組織がアジアに少ないのは仕方ないのか・・・と、思ったら、とんでもない。わが日本は世界で断トツの3100社!すごいなぁ~ニッポン。100年に1度の大不況と言われる中、こういう数字を見ると元気になりますね!

 

 

 こちらが日本の長寿企業ベスト10。*09年東京商工リサーチ調べ

① 金剛組(大阪市)・木造建築工事 創業してからなんと1431年!

② 池坊華道会(京都市)・生花茶道教授 同1422年

③ 西山温泉慶雲館(山梨県早川町)・旅館ホテル 同1304年

④ 古まん(兵庫県豊岡市)・旅館ホテル 同1292年

⑤ 善吾楼(石川県小松市)・旅館ホテル 同1291年

⑥ 源田紙業(京都市)・袋物製造 同1238年

⑦ 田中伊雅(京都市)・宗教用具製造 同1121年

⑧ ホテル佐堪(宮城県仙台市)・旅館ホテル 同1009年

⑨ 朱宮神仏具店(山梨県甲府市)・宗教用具小売 同985年

⑩ 夏油温泉(岩手県北上市)・旅館ホテル 同875年

 

 

 当ブログでも何度か紹介した世界最古の企業「金剛組」。西暦578年創業で、聖徳太子が四天王寺建立のため百済から招いた宮大工が始祖で、平成18年に倒産しましたが、「金剛組を潰したら関西の恥や!」と救済の手を差し伸べた高松建設の傘下で再出発しています。

 他、さすが創業1000年を超える企業となると、仏具関係や旅館が多いんですね。

 

 一般に「長寿企業」とは、創業100年ぐらいの会社を指します。日本で現在、創業100年以上の会社は、東京商工リサーチの09年9月調査では約21.000社あるそうで、数でいえば1位東京、2位大阪、3位愛知、4位京都、5位新潟、7位兵庫、7位静岡という順。静岡の企業もなかなか長寿ですね! ちなみに新潟、兵庫が多いのは「造り酒屋」が多いからだそうです。

 

 業種で見ると、卸小売業が9924社、製造業が5709社、建設業1864社、旅館飲食業が828社、不動産業が732社という順(09年9月データ)。不動産業が多いというのは意外に感じましたが、岸本氏曰く「土地建物があると、銀行からお金が借りやすいので身の丈以上の事業をしようとする。賢い経営者は、所有と経営を分離している。土地建物を本業と切り離し、別の管理会社に移して、身軽な状態で本業に専念する環境を作る。それで結果的に不動産管理会社も長生きできている」とのこと。

 

 

 岸本氏は、「長寿企業には、確たる経営理念があり、過去の歴史を教訓にしている。それが身の丈に合った堅実な経営につながっている」と語ります。「最近では会社の上司が、自分の会社の経営理念や過去の歴史を若い社員にちゃんと語っていない。社内の飲み会や社員旅行が減り、語り合う場がない。行き過ぎた個人主義、能力主義や成果主義の弊害だと思う。最近の新入社員は、むしろ、職場の飲み会やレクリエーションに積極的で、会社のことをもっときちんと知りたいという欲求が強いんですよ」。

 

 

 …お話を聞くうちに、創業100年以上の酒蔵を記録に残す私の挑戦も、酒蔵に勤める若者たちのモチベーションを高め、会社の長寿につながるといいなぁと心底思いました。

 

 

 よく、会社の平均寿命は30年といわれます。1984年に日経ビジネスが発表した論文が根拠になっているそうで、30~40代で起業した創業者が経営を安定させるまで25~30年かかるとして、創業者自身が60~70代になった時、後継者がきちんと育っていないとダメだ、という意味ですね。

 

 ところが寿命30年説というのは今から25年以上も前の話で、最近では「10年説」だとか。事実、恐ろしいデータを教えてもらいました。

 

 

 創業5年で生き残っている会社はなんと15%、創業10年続くのは10%、30年では2%、50年では0.7%、100年生き残れるのは0.3%なんですって・・・。

 何か新しいビジネスを始めても、85%の人は生き残れないなんて、すごい時代に生きているんだな~と背筋が冷たくなりました。いや、離婚する夫婦が増え、「バツイチ」が自分の履歴の汚点にはならなくなったように、事業に失敗したり会社をつぶしたりすることも、そんなにクヨクヨせずに済む世の中になったというべきか・・・。

 

 

 結局は、自分は社会に出てからの30~40年、どう生きるか、生ききるか、なんですね。昨夜のようなお話は、若い人たちにじっくり聞かせたい、と思いました。