ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第27回 Vina Ventisquero@「キャッチ The 生産者」

2009-03-08 10:02:44 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年10月11日)

第27回  Aurelio Montes  <Vina Ventisquero>

前々回のアドルフォさんもそうでしたが、
チリはどうして若いイケメンのワインメーカーが多いんでしょ?と思わず頬が緩んでしまうくらい、これまたステキな、 ヴィーニャ・ベンティスケロのアウレリオ・モンテスさんが来日しました。



<Aurelio Montes > (アウレリオ・モンテス)
チリの首都サンチャゴ生まれの31歳。
カトリック大学卒業後、オーストラリアなどでの研修を経てベンティスケロ入社。
現在は同社のワインメーカーとして活躍中。
チリの名門モンテス社のオーナーで醸造長のアウレリオ・モンテス氏は実父。

注)外国では父と息子が同じ名前ということがよくありますが、アウレリオさん父子も同じ名前です。



アンデスの氷河の懐に抱かれて

ベンティスケロは、チリの農産業のリーダー的存在のアグロスーパー社が1998年に設立した新しいワイナリーです。食肉やサーモンなどの加工で培われたアグロスーパーの完璧で衛生的な管理システムのもと、計1500haという広大な畑から1500万ケースの高品質ワインを生み出しています。

“ベンティスケロ”とは、スペイン語で“氷河”、“雪渓”の意味。
なるほど、ラベルにはアンデス山脈の壮大な氷河が描かれています。

この氷河の雪解け水がブドウ畑に恩恵をもたらし、豊かな実りを約束します。
ベンティスケロのワインは、まさにこの氷河が育んでいるのです。




Q.ベンティスケロ設立に当たってのコンセプトがあると聞きましたが?
A.ベンティスケロでは“環境への配慮、環境とのバランス”を大事にすることを企業コンセプトとしています。
当社は非常に近代的かつ大きなワイナリーですが、まず外観は周りの自然に溶け込むようにしています。また外観だけでなく、そこに生えていた木はそのまま残したり、鷹を使って害鳥を追い払うなど、環境とのバランスに最大の注意を払い、排水を浄化して水の再生利用も行っています。さらにはISO9001、ISO14001、HACCPなどの国際規格も取得しています

Q.では、ベンティスケロのワインづくりのコンセプトは?
A. “偉大な醸造家はいない。あるのは偉大なブドウだ” です。
良いブドウがないと、いくら腕の良い醸造家でも良いワインはつくれません。
ブドウは畑で育ちますから、良いワインというのは畑から始まっているわけです。

そこで、当社では所有する畑の土壌を調査し、それぞれの土壌の性格を把握してマッピングを行っています。それによって、どの区画にどの品種のブドウを植えたらいいのかがわかります。土壌の質を知ることで、質の高いワインを生み出すことができます。

このようにして、我々は各ヴァレーの最高の区画の中からそれぞれのブドウに最適な畑を自分たちで選んでいます。

Q.各ヴァレーに合うブドウ品種を教えてください。
A.カサブランカ・ヴァレー:冷涼な気候ですので、白ワインに理想的な土地です。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤のピノ・ノワールにも適しています。

マイポ・ヴァレー:地中海性気候で、赤品種、特にカベルネ・ソーヴィニヨンに適しています。

アパルタ・ヴィンヤード:コルチャグア・ヴァレーの中にあります。赤品種に適しています。小さい区画ですが、特にプレミアムワインをつくることのできる最高の品質の畑です。

ロロル・ヴィンヤード:ここもコルチャグア・ヴァレーの中にあり、当社の新しい区画です。現在は土壌の調査中ですが、白ワイン用のブドウを植えています。

Q.ベンティスケロは非常に高いテクノロジーを誇っているということですが?
A.はい、テクノロジーにおいては世界NO.1ともいえる設備が整い、最高の環境でワイン生産を行っています。
しかし、テクノロジーだけではありません。我々従業員全員が、品質についてきちんと理解しながら働いています。ブドウづくりから醸造、瓶詰め、出荷、営業を含め“優秀なチームの力”があるからこそ、クオリティの高いワインが生まれます。

Q.なるほど。高いテクノロジーと素晴らしいチーム力で、過去3年のチリ国内のコンクールでは最多受賞(メダル数180)だそうですね?
A.メダルは、ワイナリーにとってもワインメーカーにとっても大切なものです。我々が正しいワインづくりをしていることの証明になりますからね。

今後も、競争率の高い世界のワインの中で常に選んでもらえるようなワインづくりをしていきたいと思っています。
ですが、個人的には、ワインというのはやっぱり“楽しむもの”だと思っています(笑)

Q.ウルトラプレミアム級のワインの噂を聞きましたが?
A.現在のトップレンジはプレミアムワインの“グレイ”ですが、この秋に、
ウルトラプレミアムワイン“パンゲア”(PANGEA)2004年をリリースします。

パンゲアは“超大陸”という意味です。2億5千万年前、地球上の5大陸はすべてひとつの大陸にまとまっていたといわれ、“超大陸”と呼ばれていました。

このパンゲアには、オーストラリアのペンフォールドで28年間働いていたワインメーカーのジョン・デュバル氏を招聘しました。デュバル氏はオーストラリアの最高峰ともいえるシラーズの“グランジ”を生み出した人物です。
パンゲアはシラー種を使ったワインであること、また、デュバル氏はシラーの最高の造り手であり、私の父の友人でもあったことから、彼がこのプロジェクトに必要だと思ったのです。

パンゲアは、長い間かけて生み出した、良いブドウと良いワインメーカーの産物です。
それが分かれている大陸が融合した元の姿と重なり、“パンゲア”という名前が生まれました。

パンゲアはアパルタ・ヴィンヤードのシラーから生まれたウルトラプレミアムワインです。
チリでウルトラプレミアムと呼ばれるワインはいくつかありますが、シラーからつくられるウルトラプレミアムはパンゲアが初めてです




* 熟成期間18ヶ月。
* わずか800ケースのみの限定品で、2004年が初ヴィンテージ。

Q.あなたは、チリがのようだと言いますが?
A.首都サンチャゴは南米で最も近代的な都市ですが、その他の土地に目を向けると、チリは多くの自然に囲まれています。北の砂漠、南の南氷洋、東のアンデス山脈、西の太平洋と、四方を自然の壁で囲まれて孤立しています。まるで島のようじゃありませんか?(笑)そのおかげで病気も入ってきません。

また、四季がはっきりし、雹害もなく、昼夜の温度格差が大きい、といった好条件が整っています。そこにさらに磨き抜かれたテクノロジーも加わるのですから、チリにはプレミアムワインが生まれて然るべき充分な条件が揃っているのです。





<テイスティングしたワイン>

Vina Ventisquero Classico

“クラシコ”シリーズは、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーの4アイテム。

どれも素直な果実味が生きているワインで、ほどよい凝縮感とコクのある味わいが楽しめます。
中でも、スッキリとしたクリーンなシャルドネが好きな人は、このクラシコのシャルドネがオススメ。

この価格(標準小売価格1000円)で楽しめてしまうクラシコは、毎日飲みたい人には嬉しいシリーズでしょう。




Vina Ventisquero Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの5アイテム。

レゼルヴァの中で私のイチオシが “ソーヴィニヨン・ブラン”
爽やかで心地良く、ソーヴィニヨンの個性をやさしく感じながら、1杯、また1杯・・・と、自然とグラスが進みます。
週末、ちょっとしっかりとしたワインを飲みたいなという時には、レゼルヴァが満足させてくれるはず。


Vina Ventisquero Gran Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの6アイテム。

グラン・レゼルヴァ以上は手摘みで収穫します。
フレンチオーク(シラーはアメリカンオークも併用)で12ヶ月前後樽熟成させているので、重厚感があります。オークのニュアンスがまだちょっと勝ち気味なものもありますが、時が解決してくれることでしょう。

このグラン・レゼルヴァは、 次から“Vina Ventisquero Queulat”(ケウラ)という名前&新ラベルになります。




Vina Ventisquero Grey
メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの4アイテム。

パンゲアがリリースされるまでは、このグレイがベンティスケロのトップワインでした。フレンチオークで15ヶ月熟成後、さらに12ヶ月瓶熟成させています。
その分、グラン・レゼルヴァよりも落ち着いたエレガントさが備わっていて、
手の込んだ料理と合わせて特別なときに飲みたくなるワインです。

“Grey”(グレイ)は パイネ国立公園にある氷河の名前から
“Queulat”(ケウラ)は ケウラ国立公園(やはり氷河が有名)から
名付けているそうです。



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インタビューを終えて

チリの名門ワイナリーのオーナーを父に持つアウレリオですから、お坊ちゃまかも?と思っていたのですが、会ってみると とてもエネルギッシュな好青年でした(外見はたしかに“王子系”ですが・・・)。

偉大な父の元を離れ、超巨大で超近代的なワイナリーのワインメーカーとして手腕を発揮しているアウレリオのバランス感覚は最高で、きちんとした理論に基づきながら、情熱的なワインメーキングをしていることがヒシヒシと伝わってきました。 
ベンティスケロには6人のワインメーカーがいます。彼らのチームワークが非常に良いのはもちろん、栽培や営業などの他のスタッフとの信頼関係もかなり厚く、アウレリオが何度も「チームの力」と繰り返し語っていたのが印象的でした。




チリへの回帰

一時のブームが去って以来、日本でのチリワインの人気はいまひとつという状況が続いていますが、この『キャッチ The 生産者』ではもう何度もチリワインが登場しています。そして、毎回「また素晴らしいチリワインに出会えた!」と、驚かされています。

それは、アウレリオのような若い世代のワインメーカーがチリワイン界の中心になってきたからでしょう。彼らは近代的な技術や理論をしっかりと学び、世界の銘醸地で修行を積み、世界の味や消費者の嗜好も知っています。

“チリワインといえば濃いチリカベ”という時代はもう終わりました。

チリの風土を見据え、そこに合ったブドウから土地の個性、ブドウの良さを最大限に引き出そうというワインづくりがされるようになってきました。
我々も、そうした新しいチリワインともう一度しっかりと向き合ってみようじゃありませんか。

取材協力:アンデス・アジア株式会社   

(ホームページ http://www.ventisquero.com/english/


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