ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

独特の風味!ルイ=アントワーヌ・リュイットのパイスのワイン

2015-10-15 16:46:20 | ワイン&酒
昨日、一昨日と紹介してきたチリの“ヴィーニャ・マイティア”のデイヴィッドが師と仰ぐつくり手が、“アグリコーラ・リュイット・リミタダ -Agricola Luyt Limitada”ルイ=アントワーヌ・リュイット -Louis-Antoine Luyt

ルイ=アントワーヌこそ、チリのパイスのワイン「ピペーニョ」 の復活に心血を注いでいる人物です。

先日、都内で開催された試飲会で、6産地のピペーニョを飲み比べました。
ピペーニョはチリの日常的ワインというだけあり、ボトルサイズは1リットルとたっぷり!

ヴィーニャ・マイティアのピペーニョ はそこそこ明るい赤色でしたが、リュイットのピペーニョは本当に薄く、やや褐色がかっています。

ボトルはパッと見、ほぼ同じなので、6産地の違いと、テイスティングした感想を挙げていきます。



サンタ・ファナ 2015ビオビオ・ヴァレー)
6つの中で最も南、海寄り。鉄分を多く含む赤土と花崗岩土壌。樹齢平均200年。
マセレーション7日間、セメントオープンタンク発酵1カ月間。
やさしいタッチですが、スパイシー感があります。

ユンベル 2015ビオビオ・ヴァレー)
サンタ・ファナより北の内陸。表層は粘土と土、下層は花崗岩。平均樹齢350~400年。
マセレーション15日間、セメントオープンタンク発酵15日間。
やさしくチャーミングなフルーツ。軽やかなうまみあり。

エル・ピユコ 2015(イタタ・ヴァレー)
ユンベルの北東、かなり内陸。8000年前に形成された茶色粘土層。樹齢250年。
マセレーション15日間、セメントオープンタンク発酵15日間。
やや酸化が進んだニュアンスあり。タンニンの収れん味を感じました。




ポルテスエロ 2015(イタタ・ヴァレー)
エル・ピユコから北西方向。3億年前の花崗岩を含む粘土質岩。樹齢200~250年。
マセレーション15日間、セメントオープンタンク発酵15日間。
色が淡く、ジューシーなフルーツが前面に出て、収れん味はほんのり。

コエレム2015(イタタ・ヴァレー)
ポルテスエロより西、海寄り。花崗岩の上に薄い粘土層。樹齢200年。
マセレーション15日間、セメントオープンタンク発酵20日間。
酸化のうまみ、熟成感があり、複雑味があり、余韻にタンニンを感じます。

コロネル・デ・マウレ 2015(マウレ・ヴァレー)
他の5産地よりもずっと北の内陸。マグネシウム、鉄分を多く含む赤土。樹齢250年。
マセレーション21日間、セメントオープンタンク発酵1カ月間。
ハッとする鮮やかな、輪郭のクッキリとした、メリハリのあるフルーツ。酸が豊か。しかし、全体的にふわり。バランス良好。




冷涼なビオビオ・ヴァレーは繊細な感じがあり、イタタ・ヴァレーはタンニンの収れん味、熟成のニュアンスがあります。マウレ・ヴァレーはバランスの良さが特徴でしょうか。

いずれにしても、樹齢の高さに驚きます!
上記6アイテムは、1リットルサイズで各2600円(輸入元希望小売価格)



Cow Skin fermentation 2014 (コロネル・デ・マウレ、マウレ・ヴァレー)

こちらもパイス100%の赤ワインですが、牡牛の皮で90日間マセレーションを行ない、その後、バリック樽で6カ月熟成させています。
さすがに、香りも味わいも革のニュアンスがあります。ざっくりしたソヴァージュ、獣的な印象があり、個性が強いワインなので、好き嫌いが分かれると思います。私は個人的には、やや苦手なタイプでした。希望小売価格4000円。




こちらの4アイテムもリュイットの赤ワインで、樹齢の高いパイスからつくられます。
白いラベルがパイス100%、グレーのラベルがパイス90%+多品種のブレンド。

特に印象に残ったのは、セミマセラシオン・カルボニック15日間の「パイス・デ・ユンベル2014」(ビオビオ・ヴァレー、樹齢350~400年、パイス90%+カリニャン、モスカテル)と、グラスファイバーで30日間発酵、バリック7カ月熟成の「ウアサ・デ・ピレン・アルト2014」(マウレ・ヴァレー、樹齢250年、パイス100%)。

前者は、色が薄き、スパイシーでピリッとした印象で、果実味クッキリ鮮やかで、岩や石を思わせる乾いた感じがあるものの、余韻が長い。
後者は、スパイシーで厚みのある果実味のアタックが印象的。フルーツ豊かで口当たりがいいので、飲みやすく、バランスも良好。煙やタバコを思わせるデリケートなニュアンスも。
この2本は各3300円。




こちらは左2本がパイスと多品種のプレンド、右端がカルメネール100%
左は果実味豊かでジューシー、真ん中は熟して官能的でいいバランス、右はスパイシーでイキイキとし、酸が強くて、まだまだ若い!
左3200円、右2本は3300円



ルイ=アントワーヌ・リュイットフランス出身(1976年生まれ)です。スペイン語の上達を目的にチリのサンチアゴに渡り(22歳)、アルバイト先のレストランで出合ったワインがきっかけで、チリのワイン学校に通います。
その後、フランスに戻り、マルセル・ラピエールをはじめとしたワイナリーで経験を重ね、再びチリに渡って、イトコと友人とともにワイナリーを立ち上げました(2006年)。

しかし、2010年3月のチリ大地震でセラーが倒壊し、パートナーも離れ、ひとりでの再スタートとなったそうです。

私たちがチリワインに抱くイメージとはまったく異なるワインですが、これも伝統的なチリのワインです。

(輸入元:株式会社 ラシーヌ)


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