この番組はもう何十年も前からか年初の楽しみとして毎年テレビで拝聴してきた。何年か前には試しにNHKホールに足を運んで生で体験したこともあったが、裏の仕切りが厄介で、やはり茶の間でお屠蘇気分で楽しむものだと実感した。昨今は一回ごとに趣向を凝らした舞台作りと演出で、ある意味楽しませてくれている。しかしとりわけ今年は「対の歌声、終わらない世界」と題されて、黒い衣装に身を包んだ磯野佑子アナウンサーが暗く変に勿体ぶった感じの語りで全体を進める不思議な展開だった。新年早々能登地方では地震が、羽田空港では飛行機のクラッシュがある波乱の幕開きへの配慮なのかどうかは不明だが、とても新たな年を寿ぐ雰囲気ではなかったし、その不気味というか、無用な厳しさが「オペラ」を視聴者から遠のかせるのではないかと心配になった。その昔は舞台にオーケストラが並び、男性歌手は燕尾服あるいはタキシード、女性歌手はドレス姿でオケをバックにアリアを披露する単純なコンサート形式だった。「緊張して年を越し、この番組が終わらないと新年になった気がしない」というある歌手の方の言葉が何故か印象に残っている。森正指揮の東フィルをバックにクラシック音楽に造詣の深いNHKアナウンサー後藤美代子さんの司会で、伊藤京子、大橋国一、立川澄人、五十嵐喜芳、砂原美智子といった日本を代表する歌手たちが登場していたのが私の初期の思い出だ。もちろん昨今登場する歌手達の持つ歌唱や演技の技量は世界水準で「思い出の舞台」とは隔世の感があるが、つまらぬ事を考えずに、次から次へと登場する歌役者達の歌を楽しめた昔が懐かしく感じられた。
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