Fish On The Boat

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『ウイルス・プラネット』

2017-12-04 22:52:18 | 読書。
読書。
『ウイルス・プラネット』 カール・ジンマー 今西康子 訳
を読んだ。

人類と昔からずっと戦いあっている
風邪やインフルエンザのウイルスや、
最近になって猛威をふるいだした、
SARSウイルスやHIVといった
こわいウイルスなどなどを紹介するとともに、
ウイルスが、実は海洋で酸素を生みだす役割の
大きな部分を担っていたりするなど、
あまり知られていないであろうウイルスについての
あれこれをやさしく詳しく教えてくれる本です。

たとえば、AIDSを発症させるHIVの起源はといえば、
なんと、チンパンジーが保持していたウイルスだそうで、
それがヒトに感染して突然変異を起こしてHIVになったものだそう。
歯ぐきから出血しているようなチンパンジーに噛まれた、だとか、
チンパンジーを食べた、だとか、そういったことで
感染してきているようです。
チンパンジーを食べる文化ってあるんですね、
人間と近縁種だから心理的に避けそうなんですけども、
やはり、生き延びていくためには食べるしかないですから、
その土地その土地での、貴重なタンパク源として、
チンパンジーも狩られているんでしょうね。

また、チンパンジーじゃなくとも、
アフリカあたりではサルを狩って食べる土地があって
(たぶん、ごく狭い文化ではなく、
サルを食べる行為が、まあまあ、ありふれていると思われる)
食べることでサルが保持しているウイルスがヒトに移り、
そのなかでもエボラ出血熱を起こすウイルスなんかが突然変異して
ヒトの体内に適応するようになり、
ヒトのなかで蔓延するみたいです。
まあ、順序を整理すると、
サルからヒトにわたって、ヒトのなかで突然変異して、
エボラ出血熱を起こすようになるようです。

と、このようないろいろなトピックが、
雑誌の良質なコラムのような体で、
十数ページくらいをひとつの項としてまとめてあります。

最近ニュースになっている
ヒトパピローマウイルスについても、
やはり子宮頚がんをひきおこすとして、
そのワクチンについても書かれている。
子宮頚がんは、女性のがんの死因では、
乳がん、肺がんについで第三位にまでなっているそうです。
だから、ワクチンでなんとかおさえようとするのですが、
日本では副作用の問題が大きく報道されていますし、
実際に苦しむひとがいるのかもしれないですが、
本書では、とにかく、
ヒトパピローマウイルスの2種類のウィルス株に効果のある
ワクチンは重要だと述べています。
その2種類の株のワクチンで、子宮頚がんの70%を抑えられるからだそう。
同じウイルスでも、いろいろと形が異なるのがあるそうで、
100%効くってことはできないみたいですが、
70%抑えられるというのは、相当大きいようにぼくは思います。
ちなみに、ヒトパピローマウイルスに感染してから十数年以上を経てから
ガンがでてくるようですが、
ワクチンの効果がどれだけ持続するかは、
とりあえずこの本が書かれた時期では、
まだはっきりとわかっていないようです。

というわけで、まだまだ、
この本で得た知識をここで披露したところですが、
それは本書を読んでいただくこととして、
このへんにしたいと思います。
著者の語り口も翻訳者の仕事もどちらもいいのでしょう、
落ちついた文体で好感の持てる本に仕上がっています。
他人におすすめしやすい感じの本です。


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