Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話』

2017-09-18 19:27:46 | 読書。
読書。
『現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話』 関田タカシ
を読んだ。

不動産の仲介業者で営業をやっている著者による、
業界のアレコレ話でした。
ライターが書いているのかな?と思えるような文章で、
内容も「これ、本当かな?」というようなものが多いですが、
「まあ、エンタメだ」と思いながら楽しめる内容です。

いちばん気になったのは、いわゆる「事故物件」についてでした。
つまり、そこで死んだひとがいる、自殺したひとがいる物件です。
マンションの廊下などの共用部分での飛び降りなんかは
告知義務は微妙、だと書いてあります。
また、告知義務のために情報を買主候補のひとに与えても、
「マンションなんて、よく飛んでますよ~」
などと、実際それはほんとうなのだそうですが、
営業マンは軽い口調で言うそうです。

そしてまあ、衣・食・住、
つまり生活で大切な三つのうちのひとつがこの住ですからね、
占いを信じて良い物件を得ようとする人もいれば、
そこで繰り広げられた惨劇の痕を残す物件もあるようで、
なかなか、ひとそれぞれ一所懸命、物件を買ったり借りたりを選ぶことになります。

業者が甘い汁を吸うため、
中間マージンを上乗せして買主に背負わせるというのも、
なきにしもあらずなようです。
そんなこともちょろっと書いてありました。

自動車以上に高い買い物、大事な買い物になりますから、
それだけにそこにはなかなかに生臭いドラマのようなものが
あったりしがちなのかもしれませんね。
さっぱりとはいかない不動産の案件についての多くのトピックをメインにした
おもしろおかしい読みものでした。


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『仕事。』

2017-09-17 20:41:04 | 読書。
読書。
『仕事。』 川村元気
を読んだ。

12人の骨太な“巨匠”たちとの対談集でした。
どの巨匠も、ざっくばらんに素直に語ってくれていますが、
それこそ川村元気さんが相手だったからなのだろう。

12人の巨匠とは、
山田洋次、
沢木耕太郎、
杉本博司、
倉本聰、
秋元康、
宮崎駿、
糸井重里、
篠山紀信、
谷川俊太郎、
鈴木敏夫、
横尾忠則、
坂本龍一。

それぞれの話に通低するものがあり、
それは仕事というもの、
もしくは人生というものをどうプレーしているかの
態度にあるように読みました。

それぞれにそれぞれの、
壁を乗り越える技があり、
それこそ、仕事以上にその技術やスタンスが
クリエイティブだったりもする。

ぼくは生活を大事にするのは重要なことだと考えているほうですが、
生活を大事にするなら、
その生活の中で即興性などをふくんだ創造性って
養われるんじゃないでしょうか。
だらだら生きていると、クリエイティブじゃないのかもしれない、
なんて、考えながら読みました。

ビシビシと伝わってくるモノのつよい本です。

著者 : 川村元気
集英社
発売日 : 2014-09-24

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『赤毛のアン』

2017-09-16 19:43:42 | 読書。
読書。
『赤毛のアン』 モンゴメリ 中村佐喜子 訳
を読んだ。

老兄妹がじぶんたちのために孤児の男の子を引き取る手はずだったが、
やってきた子は女の子。
妹が「役に立たない」といやがるも、
よくわからないながらもその女の子を気にいった兄のマシュウが
「わしらがあの子の役に立つかもしれないよ」というところから始まっていく。

アニメ化されていたり、
名作として認識している作品ではありましたが、
「子供向けにすぎるのではないか?」だとか、
「昔の物語だし?」だとか、
斜にかまえてなかなか読む機会がなかった本書。

『花子とアン』の影響などはまったくないのですけれども、
なんだか気が向いて、本屋さんで手に取っていたのでした。
それで、読んでみたら、もうおもしろくてしかたないです。

第二章からのアンのおしゃべりの中身から、
彼女のきらきらして快活な内面が
うかがい知れるようになっていて気持ちのいい読書感覚。
こころのセンシティブな所って
普段傷つかないように、
外界に触れないよう気をつけて生活するものだけれど、
今回の読書に関しては、
その繊細な部分でなぞって読めるかのよう。

また、脇役たちも、なかなか筋の通ったキャラクターをしていました。
たとえば、リンド夫人などは、
「期待はしないものだ、そのほうが、失望しなくていい」
と、村上龍さんのようなことを言います。

また、アンが言っていたのですけれど、
たとえば豪奢な家具調度にかこまれて
モノに満たされた生活をしていると、
想像力がいらなくなってしまう。
貧乏人のひとつのなぐさめは、
想像するものがいっぱいあるということ。
なるほど、と思います。

11歳から16歳くらいまでのアンが描かれています。
子どもから、大人になるまでの女の子の様子、
それも才媛としてきらめいていく様子(幾度と失敗しながら)は、
読んでいると、胸に感じられるアンや周囲の人たちの豊かな人間性に、
自分の人生に不足しているものが
補給されていくようにすら感じさせられました。

今回読んだのは、角川文庫のもので、420ページくらいでした。
もともとの文章が素晴らしいのでしょうけれども、
翻訳文もよかったです。
おすすめですね。
さすがの名作で、ご満悦です。

また、アンってその後もあって、
10巻くらいのシリーズだったんですね。
全部読みたくなります。


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孤独の扱い。

2017-08-31 10:58:54 | 考えの切れ端
孤独とはなんなんだろう。

孤独は、寂しくて辛くて涙が出るものだ、なんて
あまり孤独になれていない若いひとのイメージとしてあると思うのです。
たしかに、そういう局面はあるけれど、
孤独を前提にして、孤独を丸のみにして生きてみると、
「そういうものなんだよな」と生活するから、
特段に気をとられなくなります。
気をとられても、耐性がつくように思います。

甘えを否定するわけじゃないんですが、
孤独と対峙できないひとというのは、
孤独を感じると他人に理解を求め(それは間違いじゃないんだけどね)、
理解されない、関心をもられないと、
他人に怒りを持つようになる。
それって、甘え心の裏返しなんですよね。

孤独を自覚しつつ、特別視しない。
ありふれた孤独をそのまま受け入れて、孤独を前提にして生活していく。
まあ、そこまではいかずとも自覚するだけでも、
他人への怒りやそこから生じる
「他人の足を引っ張る」ような行為
(愚痴や文句を長時間垂れ流して他人の時間を奪うこともそうだ)
は少なくなりますよね。

少しくらいは愚痴を言ったり聞いてやったりって
ふつうのことなんだと思っているのだけれど、
度を越してくるのが甘えなんです。
そして、それは度を越してくるくらいのSOSでもあるんです。
他人に受け入れてもらわないと生きていけない、
というのもひとつの人間の有り様。
でも、自覚してね、と思う。

たいがい、そういうひとは、
孤独を真正面から見つめたことがないかもしれないひと。
かといって、そういうひとが急に孤独に対峙してみると、
まるで防衛手段がないから、自分を責めすぎたり、
場合によっては、自死を選んだりすることはあり得る。

詩人の谷川俊太郎さんはこう言ったそうです。
「孤独は前提でしょう」
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『感情労働シンドローム』

2017-08-24 19:24:21 | 読書。
読書。
『感情労働シンドローム』 岸本裕紀子
を読んだ。

あまりおすすめできる本ではないかなあ。
珍しく、批判的な内容の感想文になります。

気持ちの管理や抑制に重点を置いた精神労働を
感情労働と言うそうです。
たとえば、キャビンアテンダントの仕事ぶりを思い起こしてみる。
高圧的で不遜な態度の客にも、他の客と同じように笑顔で、
きちんとした言葉遣いで、また他の客にするよりも細やかに
相手の感情を読んで対応する。
そういうのが、感情労働です。

また、職場内での人間関係を考えて、
気持ちを抑えて話をしたりすること、
これも感情労働に当たるとされる。

しかし、本書の質がよくないのか、
ところどころ論理的な破たんみたいなところだとか、
若者叩きのところなどが見受けられる。

例を出すと、
職場で上司がみなのいる前で新入社員をしかりつけ、
それを新入社員が恨む。
なにも、みんなの前で叱らなくてもいいじゃないか、と。
著者は、これについて、新入社員のほうが常識が無い、といいます。
仕事、職場、とはそういうものだという常識なんでしょうね。
たぶん、新入社員がいる文脈と、著者のいる文脈が違うのに、
著者は自分の文脈で判断して叩いているんじゃないのかなあ。

どうにも、著者がゆるぎない正義の場所にいるかのような、
若者の叩き方が、そのほかにもいろいろありました。
それで、章の最後の数行だけ、でも社会がサバイバル型になっているから、
若者がそう変わったのだ、みたいなことを言います。
そんなことを言うならば、なぜ叩くのだ、言いたくなる。

そういった、言うだけいっておいて、
最後に手のひらを返すように少ない言葉でまとめて、
自分の言い分を隠すようなにおいがする本です。
さらにいえば、前半は、雑誌を読んでいるような感覚でした。
解決策などを述べる種類の本ではなく、
感情労働の例をひたすらあげていく本です。

それでも、「女性は過去に固執する」だとか、
「アルバイトは、昔と比べて今は異質なものになった」だとか、
「最近の、生徒による先生いじめの様相」だとか、
なるほど、と思える箇所はありました。

それでもなあ、論旨がなあ。
「昔がよかったのはゆるぎない事実で」
という基盤からのモノの言い方ですし、
若者叩きとは真逆に、中高年には同情めいた態度です。
昔がよくても、その流れで今があり、
その今を作ったのが、まあ世の流れに流されたとはいえ、
その中高年であり、
苦しんでいる若者の住む世界が息苦しいがゆえ、
昔と違う形の考え方で生き方を模索しているのに、
そのあたりを理解せずに叩く。

まるで、若者は自然発生したもののような扱い方です。
若者の態度や常識を生みだしたのは、誰か。
そこまで言及してくれないと、違和感があふれだしてきます。

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