白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(236)「味の家(ケチのや)の人びと」 ア・ラ・カルト

2017-05-16 16:27:31 | 思い出
「 味の家(けちのや)の人びと」ア・ラ・カルト 

 鹿児島で初日を開け宮崎 大分 長崎 佐世保 福岡と毎回観終わってお帰りになるお客様の評判も良くスポンサーサイドも喜んでいただけている 受けが良いから座長の左とん平さん以下出演者も気持ちよく演じて貰えている 商業演劇の演出家としてはこの上もない喜びだ 
こんな嬉しいことはない

今まで初日を開けてすぐ帰って来ていたので今回のように九州地区全域を廻ることによって違う見方が出来 大変面白い経験が出来た 五分前には全員がキチンと座って待っている県、オープニングMが流れてから多勢が慌てて入って来る県(そのためにオープニングMを長くしている)笑う箇所も県によって違いこんな箇所で笑うかと思われるところでドッと笑いが来る(計算外の笑いは嬉しい)相続者が判った時点で帰る人 本編の緞帳が下りてすぐ帰る人 お香の贈呈が終わって帰る人 カーテンコールの緞帳が下りても余韻に浸る人 人さまざまである

今回のタイトル「味の家(ケチのや)の人びと」には悩みに悩んだ結果である
原作の「お初天神」はいかにも大阪文芸もののようでよくできたタイトルである 
これに因んだら今回は「水天宮」「水天宮前」とでも付けたらいいのだがゴロが悪い
内容的に言ったら「相続人は誰だ?」だがこれは昨年の日本香堂「愛のお荷物」で主人公の娘の婚約者の両親が上京してきて歌舞伎座で見た新派劇のタイトル(これが主役現水谷八重子のデビュー作だったというしゃれ)だったので辞めた 結局「味の家」と書いて「ケチの家」と読むということとすべての人々が主役であるという意味を込めて「味(ケチ)の家の人びと」とした

今回のテーマ音楽にも悩んだ アパートで流れる「愛の歌」はギリギリまで実は「内山田洋とクールファイブ」の「逢わずに愛して」だった 
僕の演出の南座では梅沢冨美男の「あいそづかし」というヒットしなかった曲だった
 
 たとえば「曽根崎心中」の あれは男がだらしない
 それでも女はついていく あんたと私によく似てるわ
 出てってよ 出てってよ
 今夜限りにしておいて
 出てってよ 出てってよ
 あいそづかしの言葉の前に
 噛んだ唇 横一文字 
 あーあ あーあ あいそづかしの言葉の前に


という曲だ 「お初天神」の謂れの曽根崎心中をテーマにした曲だ
そういえばこの舞台は幕開きが「お初徳兵衛」の道行の踊りから始まったんだっけ

ようやくベッド・ミドラーの「ザ・ローズ」に決まって音楽の小野さんに色々アレンジを変えて貰って出の音やBGとして使った 対して新しい考えの社長側のBGには某ヒット映画の音楽をアレンジして使った 判るかな?
ザ・ローズの映画が1979年(昭和54年)であることが判り 芝居の時代が昭和45年などと言わなくなったのを判ったであろうか 時代はもっと広くにバブル前夜のある時ということにしておこう

女将のケチぶりを表現するのに落語ねたを使った 「始末の極意」の1エピソードである うなぎの煙にはお金の音という笑いだが意外と狙いが通じて受けている ここまで古新聞 くぎ 椅子とウナギの匂いまで一気に演じて戴いてケチぶりが表せたかどうか

何の公演だったか明治座の三月公演の時 前の明治座公園の片隅に建てられた鎮魂碑の前で大勢のお坊さんによる法要を見た 
空襲を受けて明治座で犠牲になった人々をお祀りをしていた 明治座主催であった 

皆さんのお陰で九州地区の公演は無事終わった
出演者全員が主役という狙いは何とか果たせたと思っている






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2 コメント

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高松公演 (クロナ)
2017-05-22 17:44:14
今日、見に行きました!
普段はミュージカルしか見ないので、どんな感じなんだろうとおそるおそる見たのですが、もうとっても面白くてどんでん返しの連続でした。
思い人もパンフレットではヒロインである亡き息子さんの恋人役は芦川さんとだれもが思うのでしょうが、劇を見ているとああ違うんだな、じゃこの人かな、いや、この人?と、休憩中に推理するのが楽しく、一緒に行った方は大阪から仲居になった方を疑い、わたしはてっきり見習いの方だと思い込んでしまっていました…。赤い花のシーンで芦川さんだと知り驚かされました。
主演の左さんもすばらしくて、ファンになってしまいました。
会場も盛り上がっていました。
楽しい時間をありがとうございました。
お疲れ様です (眞琴♂)
2017-06-01 00:51:54
今日、楽を見てあまりに良かったのでもっと知りたいと検索して、ここを見つけました。
ちょうど芦川世代で、楽しく見ましたが、改めて花登さんの才能に驚きました。
最近、大阪で喜劇公演が少なくなっているので、他にも花登さんの作品の再演があればと思いました。
吉村さんも何処かであってるかも知りませんが、初めて知りました。これから応援させてもらいます。

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