12/21 私の音楽仲間 (455) ~ 私の室内楽仲間たち (428)
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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Dvořák の弦楽五重奏曲第3番変ホ長調 作品97、
その第Ⅱ楽章は、とても活気に満ちた楽章です。
その一部を、拙い[演奏例の音源]でお聞きください。
曲を、もし初めてお聞きになるとしたら、
「民謡調だな」…と感じられることでしょう。
…と言えば、作曲者の故郷ボヘミア?
詳しいかたは、別の地域を思い浮かべられるかも
しれませんね。 そう、モラヴィアです。
モラヴィア出身の作曲家といえば、ヤナーチェク。
ドヴォ(ル)ジャークは、その13年先輩に当りますが、
出身地は違いますね? でもこの楽章の響きから
は、とても似通った印象を受けます。
ただ「モラヴィア民謡風の音階が用いられている」
…だけでなく、その語法からもです。
[譜例Ⅰ]は、この部分の Vn.Ⅰのパート譜です。 まず
弾き出すパッセジは “音階風” ですが、耳に聞き慣れた
“西欧音楽” のものではありません。
特徴は、一言で “五音音階”。 そう言えば、私たちが
親しむ沖縄の音楽にも、同じ音階がありますね。
ただし①(前半) と②(後半) は、同じ音階ではありません。
どこが違うのでしょう?
この形と同時に鳴っているのが、なだらかな歌。 もちろん
他のパート、主に Vn.Ⅱが奏でています。 音階的には、上の
②のほうと関連があります。
これらの役割が交代しながら楽章は進み、記号②(四段目)
以後、転調します。
ここから調はニ長調に変わりますが、やはり②との関連が
見られます。
下から三段目になると、またなだらかな歌が現われ、再び
ロ長調の音楽に戻ります。
その4小節前に、忙しく動く形がありますね。 これも②と
関連があります。
また最後には、八分音符が、②の形に入り込んでいますね。
こちらは、下の[譜例Ⅱ]と関連があります。
これ、実は冒頭に出て来る ViolaⅡの形でした。 ところが
Violins には、この4小節間に登場するだけ。 [譜例Ⅱ]の、
はるか先で、大きな三部形式の[A B A]に戻った後のこと
です。
よろしければ、もう一度[同じ音源]をお聴きください。
繰り返し記号は、すべて無視して編集してあります。
上の様々な要素 (1)、(2)、(3) が同時に、また様々
な組み合わせで現われる様子…。
それを、下の同じパート譜からもご覧いただければ
幸いです。
「この楽章の響きからは、ヤナーチェクと似通った印象
を受ける…。」 先ほど私が自分で書いた一節です。
しかし解説サイトには、次のような記述があります。
「『民俗音楽と芸術音楽は一つの管で繋がっているよう
なものであり、芸術音楽が唯一、民謡から発展する…』と、
ヤナーチェクは確信していた。」
この点、先輩のドヴォジャークは違います。 「民謡に
ドップリと浸ってはいない。」 単に「語法の一つとして
使っている」…に過ぎません。
言わば、すでに “国際派の作曲家” となっていた彼が、
“ヨーロッパ大陸の泥臭さ” を、敢えて標榜する必要など
無かったのでしょう。
そう言えば、この曲、アメリカ滞在中の作品でした。
“後輩” ヤナーチェクの作品には、モラヴィア民謡の五音
音階だけでなく、“四音音階”、“三音音階” さえ聞かれます。
しかも、上記の①、②のように、様々に変移したものが。
ちなみに②も、四音音階ですね。
ヤナーチェクの作品での一例として、ヴァイオリン・ソナタ
では唯一の完成作品、その第Ⅲ楽章 “Allegretto” (音源)
があります。
[DVOŘÁK 音源ページ]