MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

先生は国際派

2012-12-21 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

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                   苺胃稚餌




 Dvořák の弦楽五重奏曲第3番変ホ長調 作品97
その第Ⅱ楽章は、とても活気に満ちた楽章です。

 その一部を、拙い演奏例の音源]でお聞きください。



 曲を、もし初めてお聞きになるとしたら、
「民謡調だな」…と感じられることでしょう。

 …と言えば、作曲者の故郷ボヘミア?



 詳しいかたは、別の地域を思い浮かべられるかも
しれませんね。 そう、モラヴィアです。



 モラヴィア出身の作曲家といえば、ヤナーチェク
ドヴォ(ル)ジャークは、その13年先輩に当りますが、
出身地は違いますね? でもこの楽章の響きから
は、とても似通った印象を受けます。

 ただ「モラヴィア民謡風の音階が用いられている」
…だけでなく、その語法からもです。




 [譜例Ⅰ]は、この部分の Vn.Ⅰのパート譜です。 まず
弾き出すパッセジは “音階風” ですが、耳に聞き慣れた
“西欧音楽” のものではありません。

 特徴は、一言で “五音音階”。 そう言えば、私たちが
親しむ沖縄の音楽にも、同じ音階がありますね。

 ただし①(前半) と②(後半) は、同じ音階ではありません。
どこが違うのでしょう?



 この形と同時に鳴っているのが、なだらかな歌。 もちろん
他のパート、主に Vn.Ⅱが奏でています。 音階的には、上の
のほうと関連があります。



 これらの役割が交代しながら楽章は進み、記号(四段目)
以後、転調します。

 ここから調はニ長調に変わりますが、やはりとの関連が
見られます。







 下から三段目になると、またなだらかな歌が現われ、再び
ロ長調の音楽に戻ります。

 その4小節前に、忙しく動く形がありますね。 これも
関連があります。



 また最後には、八分音符が、の形に入り込んでいますね。
こちらは、下の[譜例Ⅱ]と関連があります。







 これ、実は冒頭に出て来る ViolaⅡの形でした。 ところが
Violins には、この4小節間に登場するだけ。 [譜例Ⅱ]の、
はるか先で、大きな三部形式の[A B ]に戻った後のこと
です。




 よろしければ、もう一度同じ音源をお聴きください。

    繰り返し記号は、すべて無視して編集してあります。



 上の様々な要素 (1)(2)(3) が同時に、また様々
な組み合わせで現われる様子…。

 それを、下の同じパート譜からもご覧いただければ
幸いです。








 「この楽章の響きからは、ヤナーチェクと似通った印象
を受ける…。」 先ほど私が自分で書いた一節です。

 しかし解説サイトには、次のような記述があります。

 「『民俗音楽と芸術音楽は一つの管で繋がっているよう
なものであり、芸術音楽が唯一、民謡から発展する…』と、
ヤナーチェクは確信していた。」



 この点、先輩のドヴォジャークは違います。 「民謡に
ドップリと浸ってはいない。」 単に「語法の一つとして
使っている」…に過ぎません。

 言わば、すでに “国際派の作曲家” となっていた彼が、
“ヨーロッパ大陸の泥臭さ” を、敢えて標榜する必要など
無かったのでしょう。

 そう言えば、この曲、アメリカ滞在中の作品でした。




 “後輩” ヤナーチェクの作品には、モラヴィア民謡の五音
音階だけでなく、“四音音階”、“三音音階” さえ聞かれます。

 しかも、上記の①、②のように、様々に変移したものが。

 ちなみに②も、四音音階ですね。



 ヤナーチェクの作品での一例として、ヴァイオリン・ソナタ
では唯一の完成作品、その第Ⅲ楽章 “Allegretto” (音源)
があります。




          DVOŘÁK 音源ページ