MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

"ブルックナー" なら Viola ?

2011-07-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

07/24 私の音楽仲間 (292) ~ 私の室内楽仲間たち (266)



          "ブルックナー" なら Viola ?



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




      ブルックナー弦楽五重奏曲 ヘ長調




 貴方はブルックナーがお好きですか? 私は大好きです。



 最初に接した "きっかけの曲" は、"交響曲第9番 ニ短調"
で、偶然耳にした FM放送から流れてきたものです。 

 8本のホルンの荘厳な響きに、すっかり圧倒されてしまったの
でした。 第Ⅰ楽章、開始直後の部分です (19小節目、A)

 それまでのニ短調の響きの中に、違和感のある Mi の音が
ホルンに現われます。 さらに Si、Mi と、オクターヴ上へ
跳躍してから、突然出現する、変ハ長調の世界。 pp だった
弦のトレモロも、ここで荒々しい f になります。



 すぐにスコアを買いに行ったのを覚えています。 今から
40年以上昔のことで、大学で初めてオーケストラに接して
から間もない、四月か五月の頃だったと思います。




 「凄い曲だね、9番のシンフォニーって。」 私がそう話を
向けると、知り合ったばかりの K.君は、別の見解を。

 「いや、8番には、こんな素敵な Viola の "ソリ (ソロ)" が
あるんや。」


 そして私の手から楽器を取ると、弾き始めたのは、敬虔な
美しい歌。 後に私が何度も弾くことになる、第8交響曲
"Adagio" の一部分です。



 その調べは、pp や p の 中低音域に始まり、やがて f、
ff まで高調して行きます。 実際にはチェロとユニゾンで、
Violin のトレモロがバックにあります。

 しかし同じトレモロでも、そこで聞かれる音楽の表情は、
先ほどの圧倒的な迫力を伴う厳粛さとは違います。 この
"Adagio の楽章" にも "Feierlich" (荘厳に) と書かれては
いますが、K.君が暗譜までして愛しみ、親しんでいたのは、
Viola の奏でる瞑想的な歌でした。



 しかし、当時の私にはチンプンカンプン。 曲も聴いたことが
なく、「へえ~」…程度の印象しかありませんでした。

 数年後には、互いの好みが入れ替わるという、奇妙な現象
も起こったのですが。




 そして、40数年後。 彼はこの "泊まり込み室内楽" の場に、
五重奏曲の "Adagio" を用意してくれました。

 自分は Violin を、そして、美しいソロのある ViolaⅠのパート
を私に。



 勉強不足の私のことですから、今回この "Adagio" に接する
ことが無かったら、あるいは、もう二度と耳にする機会が…。

 メンバーをまだご紹介していませんでした。 Violin は K.君
H.さん、Viola は私、N.さん、チェロ T.さんです。




 前回もお聞きいただいた、この美しいテーマ。 2度目に
は K.君のパートに出てきます。 バックで鳴るハーモニー
はニ長調、ニ短調、イ長調と変わり、低音から上昇していく
音階が続きます。

 1度目に私が音を外した (?) のは、この音階 (ヘ長調)
部分で、Siを Si? で弾いた疑いがあります。



 ところが K.君も、これに該当する音符を半音高く弾いて
しまったようなのです。 書かれているのは Re?。 しかし、
次の Mi?の音の引力が余りにも強いからでしょうか、彼で
すら、Re の予測には勝てませんでした。

 普通は、「♯が書かれていても見落としてしまう」ものなの
ですが。 この二つの記号は、とても見かけが紛らわしい。




 この "2回目のテーマ" 部分には、ソロ以外の各楽器からの
"合いの手" が頻繁に、まだ目立つように書かれています。

 私の ViolaⅠパートにも。 K.君の歌に寄り添いながら、邪魔
にならぬように、でも美しく絡まねばなりません。



 私は、こちらの役割の方が好きです。 単にソロでメロディー
を弾いているよりも。 そこには微妙な音量の出し入れの作業
があり、またテンポ作りや、音色のコントロールも重要です。

 それは T.さんのチェロパート、H.さんの ViolinⅡ、また N.さん
の Viola Ⅱのパートも同じ。 機会こそ少ないのですが、その
箇所を大切に弾いておられるのが、録音を聴くとよく解ります。

 条件は、これまでの他の曲と同じ。 全員初見で、ただ一度
通しただけです。




 この曲を最後として、二日間に亘る室内楽も終わりました。

 素敵な場を提供してくれた、チェロの N.さん、ありがとう!
私にとっては幸せ一杯の機会。 何人もの方々と知り合い、
一緒に音楽を奏でることが出来ました。



 K.君、ありがとう。 素晴らしい仲間たちに会わせてくれて。

 そして、素晴らしい曲の数々を、いつも教えてくれて。



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              音源ページ



   [Adagio の 第二主題部分 (Viola で開始) の演奏例]

   [Adagio の 第二主題部分 (Violin で開始) の演奏例]

            (談笑の声が入っています)



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