p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

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技術の寿命

2010-01-10 13:15:00 | 企業・産業
大手監査法人の蘭KPMGの調査によると、「自動車業界で最大の焦点は“ハイブリッド”」だそうです。
ハイブリッド車といえば、これまでは量産車種の投入で先行したトヨタとホンダのみが注目されてきましたが、今年は様相が変わる気配が濃厚です。
米Fordは米国の自動車市場が縮小する中でハイブリッド車の販売を拡大しましたし、今後は世界中の自動車メーカーがハイブリッド車を投入する予定です。
独VolksWagen独BMW伊FIAT仏PSAといった欧州勢だけではなく、韓Hyundai韓KiaマレーシアProtonなどのアジア勢も続きます。
ハイブリッド車は、石油燃料内燃機関と電気モーターの両方を積載しているため、重量という燃費面で重要な要素において不利です。
一方で、さらに“次”を担うと期待されている電気自動車は電池の性能限界による航続距離の問題や給電ステーション数の問題、水素自動車(燃料電池車・水素内燃機関車)は部材腐食や燃料貯蔵といった技術的課題が残されており、大規模な普及には期待が持てません。
当面はハイブリッド車が世界の自動車市場…少なくとも先進国の市場においては、大きな存在感を示す可能性が高いでしょう。
そうした状況下でハイブリッド技術の改善が進んだ場合、電気自動車の“出る幕”がなくなってしまう可能性も否定できません。

似たようなことが、電機分野で起こっています。
液晶テレビは、光源(バックライト)の前に液晶を配し、それを制御することで画面表示を行います。プラズマなど、光源そのものを制御する方式に比べ、画面表示の鮮やかさや切り替え速度など、性能面で劣ります…原理的には。
しかし、カラーフィルタの改良やバックライトのLED化などの“改善”、そして何より多くのメーカーが参入したことによる価格競争を通じたコスト・パフォーマンスの上昇によって、他方式を抑えて薄型テレビの“主流”になりました。
次世代技術のFEDや有機EL/無機ELも、技術面での課題もありますがそれ以上に、液晶テレビのコスト・パフォーマンスに対抗することは困難です。小型ディスプレイ分野では有機ELのシェアが拡大してきていますが、テレビ用途では一部のマニア向け製品が投入されたに過ぎません。
原理的に劣る技術の“改善”が、“イノベーション”に勝ってしまった実例が、ここにあるのです。

我々が製造業における企業や産業セクタを評価する上では、拠って立つ技術の寿命が、一つのポイントになります。
自動車産業におけるハイブリッド技術は、電機セクタにおける液晶技術と同様、長期的に主流の座を占める可能性が見え始めていると言えるでしょう。

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