ケニチのブログ

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「いただきますよう」という表現について

2011-04-21 | 日本語・言葉
 以前,「「させていただく」という表現の乱用(2009-02-13)」との記事を書いたことがあるが,このごろ新たに,「いただく」の用法として頻繁に聞くようになった表現に,次のようなものがある.たとえば駅や電車内の放送にて――

「整列乗車にご協力いただきますようお願いします.」

 この文章の受け手である乗客は,「整列乗車に協力してもらう」ことが求められているのである.では整列乗車するのはだれか.これは,いわゆる「ねじれ」の文章の一種である.その間違いは,文末を改め「整列乗車にご協力いただいて下さい.」とすれば,いっそう明白だろう.

 これを正しい丁寧語に直すならばもちろん,

「整列乗車にご協力下さいますようお願いします.」

 である.
 ここでも,「とにかく丁寧な言葉を使いさえすればいい」という,リスク回避最優先の現代社会の有り様が見て取れる.一部の「ビジネスマナー専門家」とかいう連中が,「・・いただけますよう・・」なら正しいと触れ回っているが,もちろんそのような日本語は存在しない.


 そして先日ついに,さらにまずい用例に遭遇した.これも車掌の車内放送――

「お近くにお年寄りや体の不自由なお客様が見えましたら,席をお譲りいただきますようお願いします.」

 これは,完全な文章として成立しているのであり,すなわち,座っている年寄りや障害者を見つけたら,付近の乗客は彼らにその席を譲ってもらわなければならない,ということである.
 僕は反社会的な人間なので,今後も車掌の忠告には従わず,年寄りに席を譲り続けようと思っている.
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