ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

水ビジネスのベンチャー企業の話を聞きました

2010年11月26日 | 汗をかく実務者
 水ビジネスのベンチャー企業のビジネスモデルを伺いました。当初予想した以上に奥深いビジネスモデルである点に驚きました。
 日本は地方自治体が上水・下水道の事業を展開し、実は収益性をあまり考慮していないビジネスモデルに反省の機運が高まっています。この結果、日本の新成長戦略として、上水・下水道インフラストラクチャー輸出の政策を打ち出しています。

 水ビジネスのベンチャー企業の話と聞いて、外国の上水・下水道のインフラストラクチャーを請け負う例の事業かなと、想像していました。しかし、まったく違っていました。

 飲料水としての天然水販売事業を展開するウォーターダイレクト(東京都品川区)と、世界中の飲料水を世界中に提供する事業を展開する水広場(東京都文京区)の事業内容を伺いました。

 11月25日と26日の2日間にわたって、恒例の第19回ベンチャー・プライベート・コンファレンスが慶応義塾大学三田キャンパスで開催されました。主催は慶応大学の知的資産センター(承認TLO)とビジネススクール、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP、東京都世田谷区)の3者です。26日の午後に「水と空気の環境技術で急拡大する100兆世界市場」というセッションに、水ビジネスのベンチャー企業であるウォーターダイレクトと水広場の2社の代表取締役が登場し、講演しました。

 ウォーターダイレクトは12リットル入りのPET製容器に天然水を入れて通信販売して成長しているベンチャー企業です。時々見かける“サーバー”と名付けた容器ボトルを固定する器具から飲料水を供給する仕掛けを利用するものです。


 そのビジネスモデルは、富士山麓の地下200メートル下から湧き出る天然水を、富士吉田工場内で精密フィルターを通して殺菌する非加熱処理を施し、美味しさを保った天然水を最長2日後に直接届ける「直販」です。米国のデルコンピューターの直販システムを真似し、天然水を容器に詰めると、迅速にユーザーに届けるものです。バナジウム入りの美味しい天然水をすぐに届ける、天然水の味で勝負する直販システムです。

 そのカギはPET製の大型ボトルに天然水を12リットル充填して届けるという“返却不要方式”を採用したことです。PET製大型ボトルは水を出すと、その分だけ体積が収縮するエアレス構造を採っており、ボトル内部に空気が入らないので、水の鮮度が保たれることです。そして、使い終わったPET大型ボトルは資源ゴミとしてペットボトル廃棄回収のゴミとして捨てられます。

 伊久間努代表取締役は「使用後のPET大型ボトルを回収しないビジネスモデルなので全国展開できた」といいます。もし、従来の発想によって丈夫なポリカーボネート製ボトルを用い、天然水を詰めて配送し、使用後はボトルを回収してていたら、その回収態勢を築くために、販売範囲は数10キロメートル程度になるだろうと解説します。トラックなどによる回収システムを維持する販売方法は大量販売には向いていないと判断したそうです。

 2006年10月に創業し、4年目の今年度は販売先12万件を確保し、美味しいので約80%がリピーターになっているとのことです。この結果、売上げ35億円まで伸びたそうです。リーマンショック後は、小型のPETボトル入りの飲料水の売上げは減少傾向にあるのに対して、同社のPET大型ボトルは順調に増えているとのことです。スーパーなどで飲料水を購入すると、その重さに自宅まで持ち帰るのに苦労します。この点で、同社の大型PETボトルは「自宅まで配送してくれるので便利な点が受けている」といいます。

 同社の水ビジネス事業は成長すると判断したベンチャーキャピタルの日本テクノロジーベンチャーパートナーズと、事業成長支援のリヴァンプがそれぞれ同社に投資しています。このため、リヴァンプの玉塚元一さんが同社の代表取締役会長に、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの代表の村口和孝さんが同社の取締役に就任しています。


村口さんがこのコンファレンスの仕掛け人です。

 創業当初はチラシなどの広告で宣伝したがまったく売れなかったとのことです。ある時に、電機製品の量販店であるヨドバシカメラの店舗の一部に、水供給のサーバーを置いてもらい、「通りかかった方に試飲してもらう“キャッチセールス”手法に切り替えてから売れ出した」といいます。現在は、「イオングループなどの大手スーパーなどに400個所に同サーバーを置かせてもらう販売促進体制をとっている」と説明します。天然水の美味しさを試飲によって確かめてもらうのが一番販売につながるようです。

 もう一つの水ビジネスベンチャー企業のグローバルウォーター(東京都文京区)はWebサイトの「水広場」を展開し、世界中のさまざまな飲料水のボトル詰めを販売する事業を展開しています。世界中には硬水や軟水、pH(ペーハー)などがいろいろな水があり、多彩な味の飲料水を求めるユーザーに供給する事業を成立させると意気込みを語ります。同社は国内・国外から飲料水をお取り寄せするWebサイト「水広場」を運営しています。代表取締役の堀内拓矢さんは「美味しい日本の飲料水を外国に売る事業を目指している」といいます。新しい視点と感心しました。美味しい水が日本の名産品になればいいと思いました。

 同社は水源開発の専門家として、水源開発のコンサルタント事業を展開しています。例えば、バングラディシュの地下水の多くにはヒ素が含まれるため、ヒマラヤ山脈近くの奥地で水脈を探し、水源として利用する事業に参加しているといいます。世界各地の水源は、「バングラディシュの地下水のようにそのままでは飲めない水も少なくない」とのことです。

 美味しい水が飲める日本は幸せな国であると再確認しました。日本は、水道水がそのまま飲める数少ない国であることに感謝したいと感じました。

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3 コメント

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水を買う時代に (ウオーターゲイト)
2010-11-30 22:32:14
1990年ぐらいに米国ではガロン単位で飲料水を買う習慣を可哀そうと感じました。
いつの間にか、日本でも水道にフィルターを入れ、ペットボトルの飲料水を買うようになってしまった。驚きべき変化である
今後も日本は美味しい水道水を飲めるのだろうか。
水広場がどんな飲料水を販売しているか、興味を持ちました。
水広場はいろいろな水を販売しています (ウオーターメロン)
2010-12-02 00:33:31
水広場のサイトを見てみました。世界各国からいろいろな飲料水を集めて販売していました。

岩手県岩泉町の龍泉洞の水が人気があるようでした。世界中からコンガス・シンガスを集めています。ビール代わりの炭酸入りもあるとのことでした。
Unknown (ばしくし)
2011-11-27 23:20:27
今後、水ビジネスが激化したとしたら
水を取り尽くしてしまって
水源が枯渇するリスクってないんですか?
外資系が参入してきたら、そうなる可能性が高いと思うんですが。
(特に、米英系・中華系企業は中庸・塩梅という概念を知りませんから、徹底的に絞り尽くすと思います。)
もしそういう懸念があるとしたら
採取しすぎないように国で採集制限をかけるようにしないといけませんよね。
外資でなくとも、民間企業は利益に目がくらむと際限なくやり尽くしますから。で、責任は取らずにトンズラ。
なので、ビジネスが安定してきたら、こういう重要な事業は国営化して
ガス・電気・安保のような国家インフラとして
安全供給ができるよう、外国に絞り尽くされないよう、きちんと国営でやるべきですな。
これは、国益の問題ですから。

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