ヒトリシズカのつぶやき特論

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高分子学会バイオミメティクス研究会の講演会を拝聴した話の続きです

2014年07月09日 | イノベーション
 先週、高分子学会内に設けられたバイオミメティクス研究会が東京都江東区で開催した2014年度講演会を拝聴した話の続きです。

 「生物模倣」と翻訳される学術分野・工学分野である“バイオミメティクス”について、同講演会では北海道大学の名誉教授の下澤楯夫さんが講演しました。

 下澤さんが雑木林を歩いていると、エゾハルゼミの死骸が小道に落ちていて、その羽の透明性が高い点に興味を持ったそうです。そこで、この羽根の仕組みを明らかにするために、走査型電子顕微鏡(SEM)で羽を観察してもらうことにしました。

 その結果、エゾハルゼミの透明性の高い羽の表面は、直径が50ナノメートルから100ナノメートルで、高さが250ナノメートルの円柱状の“ナノパイル”がびっしりと並んでいました。昨日2014年7月8日編でお伝えした「モスアイ」と同じ微細構造です。

 この結果、エゾハルゼミの透明性の高い羽は、無反射構造でした。同時に撥水(はっすい)構造にもなっています。

 下澤さんは「エゾハルゼミの透明性の高い羽は表面クチクラが分泌され、自己組織化によってモスアイ構造ができている」と推論します。

 最近、昆虫などの身体の各部分の構造などの解析が進んでいる理由は、走査型電子顕微鏡などのナノスケールで観察できる観察装置・機器を生物学分野でも駆使し始めたからです。

 実は、生命体である昆虫などの各部分を走査型電子顕微鏡で観察するための試料づくりは、そんなに簡単なことではありません。走査型電子顕微鏡の試料室部分は極低圧力(昔でいう真空)になり、電子線を浴びるので、その電荷を除去する仕組みを与える必要があるからです。

 さらに最近は、“ナノスーツ”と名付けられた生物の細胞が水分を保った状態で走査型電子顕微鏡で観察できる技術も実用化されています。このナノスーツは、浜松医科大学の針山孝彦教授が東北大学原子分子材料科学高等研究機構などと共同で、高真空下でもほぼ細胞が生きていた状態を保つように生体適合性プラズマ重合膜を開発した技術だそうです(詳細はよく知りません)。

 さて、今回拝聴したバイオミメティクス研究会の2014年度講演会でのトピックスは 比較的新しいバイオミメティクスという学術分野・工学分野でも産学連携を進める組織として、特定非営利活動法人バイオミメティクス推進協議会を設立することを決議したと、発表したことです。

 そのバイオミメティクス推進協議会の仕組みを伝えるWebサイトの画像です。



 実際にプロジェクターで映し出された画像なので、あまりよく撮影できていませんが。