こんにちは
東京六本木の国立新美術館で開催されている「ミュシャ展」に行ってきました。
↓下は、ポスター2枚を繋いで縮小版にしたフリーペーパーです。
左の絵はミュシャ作の「原故郷のスラヴ民族」と右は「ヒアシンス姫」。
今回の「ミュシャ展」の中心は、「スラヴ叙事詩」という、ファンの間でもほとんど知られてい
ないという全20点の作品群でした。今回が世界初公開だそうです。
チェコは戦後、共産主義圏に入りましたので、政治的な意味合いもあって「スラヴ叙事詩」は激
しい民族主義ということでチェコ国内で長く隠れたような状態に置かれていたのが、ようやく陽
の目を見たということです。
来場者が多くて相当混んでいるという情報がネットに飛びかっていましたから覚悟はしていたの
ですけど、やはり入るまでに1時間くらい並びました。
4月にEテレで、演出家の宮本亜門さんが展示場の作品を見て回りながら感想などを述べている
番組が放映され、わたしはたまたまそれを見ていて「ミュシャ展」を知ったのです。
撮影禁止のため写真が撮れませんでしたので、最も話題になっている代表作をYahoo画像から
引用します。20番までの作品のうち、第1番目の作品。
タイトルは「原故郷のスラヴ民族」。610×810cmという見上げるように大きな絵でした。
↑3~6世紀のスラブを象徴して描いているそうで、背後に略奪者の群れ、左手前の怯えた表情の
二人は村を焼かれ逃げ延びててきたスラヴ人で、右側に宙に浮いたように描かれているのは専制
と戦争の終りを神に請願している多神教の司祭の姿だそうです。
「スラヴ叙事詩」はどの作品も同じくらい大きくて、全体に霧がかっているような、遠い歴史を
偲ぶような薄い色調で描かれていました。上の絵も実際はもっと霧がかっている感じでした。
どの作品もキャンバスにテンペラと油彩で描かれています。
アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)はチェコに生まれ、パリに出て画家になりました。
ウィーンのクリムトなどと並んで19世紀末のアールヌーヴォーを代表する芸術家の一人。
男性ですけど、女性をお花で飾ったような優美で装飾的な一連の作品は女性に人気があります。
↓最後の5点(15、17~20)の作品を展示している会場だけは、写真撮影が許可されていました。
↓下の絵は、17番の「聖アトス山」。アトス山はギリシアにあり、ギリシア正教会の聖地。
上部の半円の中にいる女性は、寺院の中の聖母マリアのモザイク画だそうです。マリアの胸の辺
りに小さなイエス・キリストが描かれています。
↓作品19の「ロシアの農奴制廃止」。
ここはモスクワの赤の広場。正面は聖ワシリー寺院で、右端にクレムリンが見えています。
ロシアもスラヴだったのですね。
↓上の絵の左前方にいる子供を抱いた女性像を拡大しました。
民衆には自由の身になったということの意味が分からず、弱い者はただ警戒し怯えているだけ。
↓最後の作品、20番「スラヴ民族の賛歌」。
ミュシャ(チェコ語ではムハ)は1910年から20年近くをかけてこの一連の「スラヴ叙事詩」
を描き上げたそうです。作品もさることながら、ミュシャの画家としてのスラヴを思う執念の凄ま
じさに圧倒されてしまいました。
スラヴ人として、スラヴ民族のアイデンティティを描いて遺したかったということです。
スラヴというのはどの地域を指すのか正確に知りたくて今回調べてみますと。
ウクライナ、ベラルーシ、ロシア、チェコ、スロヴァキア、ポーランド、クロアチア、セルビア、
ブルガリアなど。長い苦難の歴史を重ねてきたことで知られている地域でした。
「スラヴ叙事詩」の他にも、アールヌーヴォーの有名な作品(ほとんどが石版画)も展示されて
おり、そこは大変な人だかりで女性たちが作品の前から離れないので全体像は見えませんでした。
アルフォンス・ミュシャ
ミュシャのアールヌーヴォーの作品から(Yahoo画像より)
国立新美術館には今回初めて行きました。波のようなうねりのあるファサードだけではなく内部
も新感覚でしかも機能的な素敵な美術館。故黒川紀章さんの設計で2007年に開館したそうです。
チェコのマリオネットの人形劇のセットも幾つか展示されていました。
今年はチェコ文化年だそうです。
最後に絵葉書などのミュシャグッズを買おうとしますと、レジの傍にはまたまた長い行列。
50分待ちと聞いて、買うのを諦めました。
この日は午後8時まで開館していました。日も暮れて8時10分前に美術館を出るとき、まだ入館
の行列が並んでいたのでびっくり。全員は入れなかったのではないかと思います。