映画のせかい

私が最近見た映画 ※ネタバレあり

時代屋の女房 #187

2005-01-25 | さ行の映画
1983年 日本 96分

私が知っているのはこの人のすべてなのか?ミステリアスな女性は度々文学に出てくる。他の人から見ると、まったく別の面を持ち合わせた女性。渡辺淳一の「阿寒に果つ」だったり、ミステリーでは貫井徳郎の「プリズム」、ドキュメンタリーでも東電OL事件など。裏の顔に興味を持つのは人間の性なのかもしれないが、自分のパートナーのことなら裏でもなんでも知りたいものだ。

骨董屋の「時代屋」にある日ふらりと現れた女性・真弓(夏目雅子)、男やもめの安さん(渡瀬恒彦)は彼女の美しさに惹かれ、その日から同棲生活が始まる。古道具を好む彼女はたちまち看板娘になっていくが、古道具のレコーダーに伝言を残し何日か帰ってこないことがある。安さんは、決して彼女の過去を聞こうとしなかった。そしてついに帰ってこなくなる。安さんはやっと自分の気持ちに気付き、彼女を追って盛岡へ行く。

登場人物がみんな良い意味で抑揚がなくてなんか心地良い雰囲気の中で進行していく。たくさんの魅力が詰まっている。

やっぱりミステリアスな夏目雅子の魅力が一つ。自由奔放と言えば聞こえは良いが、常識破りの行動であるのだが、何事もなかったかのように笑顔で帰ってくる彼女には、ついつい黙って迎えてしまう「何か」がある。沖田浩之が語る違った一面はやっぱり謎なんだけど。

それから渡瀬恒彦の魅力が一つ。振り回されているんだけど、決してそんな風には見えないし、何を考えているのかわかりにくいんだけど、一本筋が通っていて、誠実で正直な中年になって出てくる落ち着きを備えている男である。彼の雰囲気に飲み込まれていく。いくつかの時代と共に過ごしてきた古道具の時間の流れのようにゆっくりと時間が経っていく。

それから、道具を通して時代を見るのね。とか、もう死んでいくはずだった道具をまた生き返らせて人間と生きていかせる、と表現する時代屋の日常もまた良かった。クリーニング屋の奥さんが持ってきたカバンの中から出てくる226事件の日の切符、カバンで思い出した良き日の思い出。戻ってみて見えた現実。

出てくる人たちの触れ合いも良かった。居酒屋でのコミュニケーション、マスターと奥さん、通りかかる客と一緒に話が弾んでいく。一人で飲むのも仲間と飲むのも楽しい空間なのだ。カウンターから座敷に移動してみんなで歌う中森明菜の「少女A」今にして名曲だったと知る。中でも安さんの友人の津川雅彦が良い。「狂った果実」や「ろくでなし」の時のようなアイドルではなく、どちらかと言うと汚いオジサンなんだけど、こちらもまた大人の魅力だ。喫茶店は倒産し、愛人の女の子は若い男に取られちゃうんだけど、懲りた風でもなく、やってることは無謀だったりしても言ってることは良識派で、良き相談相手という感じだ。

村松友視の原作は第87回直木賞に輝いた。盛岡でのエピソードも花を沿え、もっと長く観ていたい気もした。この映画いいね。

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