大好きだよ

今日は大好きなばーちゃんの誕生日なの。
ばーちゃんはね、もう８０近くなんだ。
花がとっても大好きで、庭や部屋はいつもキレイな花がいっぱい咲いてるの。
だからね、毎年誕生日と敬老の日には、決まって胡蝶蘭をプレゼントしてるんだ。
本当はもっと美味しいものを食べさせてあげたり、温泉とかに連れて行ってあげたいんだけど、ばーちゃんは糖尿を患ってるから、下手に食べさせて悪化させたら可哀相だし、旅行も疲れさせちゃったら申し訳ない。
だからアタシはこうして変わることなく胡蝶蘭をあげることしかできないの。
先週の日曜にＹ子に付き合ってもらって胡蝶蘭を探したんだ。
月末だからホントは金欠。お金が２万ちょっとしかないの。
でもね、大好きなばーちゃんのタメだから構わないんだ！
色々お店を回ろうとしたんだけど、一番最初の行きつけのお店でイイ花があったから決めちゃった。
土曜に入ったばかりというこの蘭。つぼみもある。
あまり即決はしない主義だけどコレに決めちゃった。
値段は・・・・・・・ぶっちゃけ２１０００円。
それを常連だからって１８０００円にオマケしてもらったの。いいことあるね。
給料日まで頑張らなきゃなー。
そして当日の今日、アタシの軽には入りきらないということで、なんとアタシのためにわざわざ配達までしてくれたの！ホント感謝です。
ドキドキしながらばーちゃんの部屋に言ったよ。
「ばーちゃん、誕生日おめでとう」
そういいながら部屋に入るとばーちゃん
『うわーすんばらしい！』って喜んでくれた。


画像は携帯のだからすごく分かりづらいけど、真ん中の５本の蘭がアタシの。
隣の黄色いのがばーちゃんの娘からで同じく蘭。
その反対の白い花がお得意様の電気屋のオジサンが自腹を切って（！）プレゼントしてくれたという、コレも蘭の一種。
ね、みんなばーちゃんが花が好きなのを知ってる。一番に蘭が好きなのを知ってる。
『うゎー嬉しい。まいちゃんありがとうね』
「いいよいいよ。いつもばーちゃんに色々買ってもらってるし」
ホントいっぱい買ってもらった。車、振袖。胡蝶蘭がいくつあっても足りないくらい、ばーちゃんには可愛がってもらってる。
『コレ、まいちゃんに』
ばーちゃん、そういって引き出しから何か出してきた。

「え？何コレ？」
何かと思ったら、お祝い袋。
『コレね、いつもまいちゃんにきれーいなお花買ってもらってるから、お返し。ほーんの少し、気持ちなんだけんど』
「えーなんで！？今日はばーちゃんの誕生日なのに、なんでアタシが貰うの！？貰えないよー！」
『いいーからいいーから。まいちゃんだけだもん、こんなステーキなお花買ってくれんの。ばーちゃん嬉しいから。ほーんの、気持ちなんだけんど』
ビックリしたと同時になんだか泣きそうになった。
返すわけにもいかないから貰ったよ。
「ばーちゃん、ありがとう。泣けちゃうよ」
『すこーしたけ、すこーしたけどね。本当はまいちゃんに、何かお洋服でも買ってあげたいけど、ばーちゃんとまいちゃんの好みが違うから、何あげていいか分からないから、これで何か買って。気持ちだけど』
「ばーちゃんにもっともっと長生きしてもらわなきゃ。いっぱいお花買ってあげるからね」
『いいーのいいーの』

アパートに戻って、猫にゴハンをあげて少しくつろいだところで、ばーちゃんにもらった袋の中を見てみたの。
出てきたのは・・・・・・・万札が５枚。
なんだこれ。
ばーちゃん、今日は自分の誕生日なのよ？
なんでこんなコトするの？
たかだか年に２回花をあげてるだけなのに、誕生日にもアタシはしっかり物をもらってるのに、お返しだなんて。
祝い袋にはこう書いてあった。

まいちゃん　お花ありがとう　ばあちゃんの気持ちです。

『気持ちだから』
一気に自分の懐の心配をしてた自分が情けなくなった。
涙がいっぱい出てきた。
なんて言ったらいいのか分からないけど、アタシはこのような物をもらえる立場じゃない。
むしろアタシが贈るほうが全然足りないくらいなのに。
小さい頃から可愛がってくれたばーちゃん。
だらしない母親の代わりにゴハンを作ってくれたばーちゃん。
早くまいちゃんのお嫁さんの姿が見たい、と言うばーちゃん。
こんな孫でごめんね。
アタシも見せられるように頑張るから。
それまで長生きしてね。
ばーちゃん、大好き。