まったく眼中になかった寺。
近くへ行ったついでに、軽い気持ちで向かったのだが。
本通りに派手な看板を掲げているわけでもない。
しかし、道筋の要所ごとに立てられた誘導看板。
停車中の観光バスや臨時運行バスを見て、有名処であることを認識した。
せせらぎと紅葉の相乗が風情を増幅させ、とても好ましい。
紅深き正暦寺。
平日とはいえ、結構な人出。
先頃の連休は、さぞかし人混みだったろう。
ひと山が丸ごと色濃くペイントされ、活気に満ちている。
心まで染めあげられ、陽気づく。
まだまだ見頃は続きそうな趣だ。
そこから少し離れて、細い山道を分け入ると弘仁寺がある。
紅、黄、緑のグラデーション。
ちりめんの反物で被ったような庭がひろがる。
古刹に散り積もった葉っぱ達の共演が、それはそれは見事だ。
人影も疎らで、静かな境内。
自然の鼓動が、しっくりと語りかけてくる。
素秋も末
動と静の紅葉狩り
重畳至極の時をゆく