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沖縄に駐留する米海兵隊の語られない真実

2015年06月24日 | 政治
沖縄に駐留する米海兵隊の語られない真実
抑止力ない"幽霊師団"

※AERA 2015年5月18日号



(写真:AP/アフロ)
普天間飛行場の辺野古移設問題で安倍政権と沖縄県民が激しく対立しているが、そもそも沖縄にいる米海兵隊の戦力的な抑止力が怪しいことをご存じか。
激しい議論を聞いていて、ふとわからなくなることがある。いったい何の話をしているのだろうか、と。

米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は、こじれにこじれ、安倍政権と沖縄県の関係は、もはや修復不能のようにも見える。

政権が「この期に及んで」と批判すると、沖縄は「上から目線だ」と言い返す。沖縄が「基地の押しつけだ」と言えば、政権は「辺野古移設が負担軽減なのだ」と反論する。

だが、普天間はオスプレイやヘリなどを収容する海兵隊の基地だ。なぜ沖縄に海兵隊がいて、どうして海兵隊の基地が必要なのか。「海兵隊論」が抜け落ちている、と感じる。

難しい局面こそ、根本に立ち戻って考えたい。

私にとって、海兵隊は米軍そのものだ。

2003年のイラク戦争で海兵隊に従軍した。クウェートで配属されたのは、「第1海兵師団第2連隊第1大隊フォックス中隊」という部隊だった。

海兵隊員を「soldiers(兵士)」と呼ぶと、「No, we are theMarines( 俺たちは海兵隊員だ)」とたしなめられた。装備は古いのに、やけにプライドの高い集団だった。



キャンプばかり“海兵隊の島”

私が持つ海兵隊のイメージは、映画「愛と青春の旅だち」でリチャード・ギアをいじめた鬼軍曹。本物の海兵隊員もガッツで勝負の体育会系で、暴行事件を起こす体質も理解できた。

海兵隊は米軍の中で最も世界中を飛び回る集団だが、「沖縄は温暖で、人柄も良くて最高だった」と言う海兵隊員が多かった。仲良くなると、「オキナワ、ビーチ、イチバン、メンソーレ」などと、片言の日本語を交えてうれしそうに沖縄での思い出を語っていた。

沖縄は、確かに「海兵隊の島」だと言っていい。地図には、北から南まで海兵隊のキャンプが目立つ。北部訓練場から普天間飛行場まで、海兵隊が駐留し、島全体が海兵隊の要塞のようにすら見える。陸海空に続く「第4軍」とされる海兵隊は、世界に3師団を持ち、第3師団が沖縄に駐留する。

海兵隊と沖縄の縁は深い。古くは黒船で来たペリー提督が、海兵隊を連れて沖縄に上陸した。第2次大戦の沖縄戦の主力を担ったのも海兵隊。朝鮮戦争、ベトナム戦争でも沖縄の海兵隊がフル稼働した。

今日もさぞ多くの海兵隊員がいるかと思いきや、定員1万8千人のうち、イラク戦争で駆り出された部隊はそのまま戻らず、一部部隊の移転もあって、現在、実際に沖縄にいるのは1万2千~1万3千人程度。さらに米軍再編で20年ごろまでに定員は1万人に減らされる。

沖縄の海兵隊は、補給や医療の後方支援、司令部機能が大部分。戦闘部隊としては「MEU」と呼ばれる2千人規模の第31海兵遠征隊が駐留するのみ。その中の基幹となる歩兵は、1個大隊800人程度しかいない。



軍事ジャーナリストの田岡俊次さんは指摘する。「沖縄の第3師団は、師団とは名ばかりの『幽霊師団』に過ぎません。司令部機能しかなく、第31海兵遠征隊の兵員も第1師団、第2師団の借り物で、米本土から6カ月交代で派遣されてくる。戦車はゼロ、軽装備の1個大隊では戦争は到底無理で、中国や韓国、台湾などの在留米国人の救助が精いっぱいです」

生かしきれない地理的優位性

在沖縄のジャーナリスト、屋良朝博(やらともひろ)さんは、沖縄の海兵隊は米軍再編で「国際救援隊」のような、ソフトな任務を果たす部隊編成に変わり、沖縄の基地は「空洞化」すると見る。

「近年はアジア太平洋地域を巡回しながら、フィリピンやタイ、オーストラリアといった同盟国との共同訓練を盛んにしています。台風や地震、津波といった自然災害を想定した共同救援や、民生支援などの活動にも力を入れています」

東日本大震災で被災地に駆けつけたのは海兵隊。ネパール地震の救援にも参加している。

ただ、新たな安保情勢の変化も生まれている。中国の急速な軍事的台頭と海洋進出である。元防衛相で安全保障専門家の森本敏さんは指摘する。

「中国は多くの揚陸艦を持っておらず、現時点で着上陸戦闘能力は大きくない。中国が東シナ海や南シナ海に出てくるとしても、沖縄の海兵隊の抑止機能が維持され、相手を確実に撃破できる戦力を持っていれば問題はありません。オスプレイの導入で海兵隊の活動範囲が広くなり、広い面で対応できる状況です」

尖閣諸島、台湾、南シナ海などアジア展開を考えれば、確かに沖縄は要所だ。最近、防衛関係者が辺野古移転の必要性を国会議員などに説明するときは、ほぼ必ず沖縄を中心とした「同心円地図」を使う。中国や尖閣情勢を意識してのことである。

ただ、そんな地理的優位性を生かせるかといえば、疑問が残る。海兵隊は海のイメージが強いが、実際は上陸作戦を得意とする陸戦隊だ。上陸には海兵隊員を運ぶ船や空中援護を行う航空隊など、陸海空の総合兵力が求められ、自前でワンセットを持っているところが海兵隊の特異性であり、強みである。

ところが、オスプレイとヘリの可動翼部隊は普天間、戦闘機や給油機などは岩国、揚陸艦などの船舶は佐世保にいる。陸海空チームが日本各地に分散しており、専門家の間では「普天間飛行場も歩兵部隊も、辺野古より佐世保に近い自衛隊基地などへ移転したほうが、よほど効率的に運用できる」(田岡さん)との声もある。

日本政府は「普天間の代替施設は抑止力の維持に不可欠」との論理だが、こうした海兵隊を「抑止力」と言い切ることは、すんなり腑に落ちる話ではない。嘉手納空軍のF15戦闘機と横須賀海軍の第7艦隊こそが「抑止力」というのは、およそ軍事関係者の共通認識である。

あえて海兵隊に「抑止力」としての意義を見いだすとすれば、「日本に米軍がいる象徴が海兵隊である」ということだろう。

3月末に放送されたNHKの「日曜討論」。普天間移設問題がテーマで、出席者が激しい論争を繰り広げるなか、橋本内閣で沖縄問題に取り組んだ岡本行夫・元首相補佐官が、こう言った。

「沖縄から海兵隊が追い出されたら抑止力に穴があく」

戦力として決定的な力はなくても、沖縄に海兵隊が存在していること自体に意味がある、と言っているように聞こえた。

この討論に出席していた前出の屋良さんは嘆く。

「これでは日米同盟の質草に海兵隊を取っているという話になってしまう。本来、抑止力とは精緻な論議が必要なのに、海兵隊が沖縄にいるだけで抑止力と言われると、それ以上、突っ込んだ議論ができなくなる」

不要論強まり 手放せない沖縄

一方、海兵隊自身も沖縄の基地の維持を望んでいるという現実がある。米軍再編の「リストラ」のなかで、ハイテク装備を持たない「肉体派」の海兵隊不要論が強まっているからだ。

そんな海兵隊にとって沖縄は虎の子の拠点だから手放せない。普天間の移設がもめても海兵隊から一言も不満が出ないのは、とにかく基地が維持されることが最優先だからだ。

安倍政権で基地問題を担当する中堅幹部は言う。

「米軍は公の場でこそ日本政府に合わせてはくれますが、『普天間移設は日本の国内問題で、私たちの責任ではない。約束したのだから、しっかりやって下さい』という、完全に距離を置いた態度です」

普天間の移転先が辺野古しかないのか、考えるチャンスは幾度もあった。

最も合理的な移設案は、米空軍の嘉手納基地との統合だったが、「トラブルの多い海兵隊を空軍が嫌がったため立ち消えとなった」(中堅幹部)。民主党の鳩山政権下で浮上した鹿児島県の徳之島などは、地元の反対で実現しなかった。

前出の森本さんも、海兵隊のいる場所として、沖縄が唯一の選択肢ではないことは認める。

「もちろん沖縄がベストではありますが、日本の西半分ならば、九州でも四国でも1万人の兵力を維持し、訓練施設があり、ヘリと支援部隊がいれば、一定の抑止力になります」

4月下旬の日米首脳会談にあわせて開かれた外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、日米両政府は「辺野古移転が唯一の解決策」と確認。日本政府は、これをもとに夏の本体着工を目指す構えだが、まずは「抑止力にならない抑止力」の真の海兵隊の姿を直視すべきではないか。総工費3500億円をかけて辺野古移設を強行した先には、終わりのない政治対立が待っているだけだ。

(編集部:野嶋剛)

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