フィリップス・コレクション展、再び...(森美術館)

フィリップス・コレクション展が終わりました。６月から足かけ四
ヶ月の長丁場、私が観たのはもう二ヶ月以上も前のことです...

日曜日の夕方、最終日、森美術館のチケット売場に赴くと結構な行
列です。係りの人に尋ねると、昼間から混雑しているとのこと。そ
れはそうか...ただ、人込みでの鑑賞はきつそうだったので、スタバ
で文庫本、ＡＢＣで物色、古奈屋でカレーうどん(とビール）、と、
ちょっと間を置いてから入館したら、余裕で鑑賞できました...

今回、あらためて思ったのは、各作品への照明がとても効果的であ
ること。特にゴッホの『アルルの公園の入口』の黄色に眼を奪われ
ました。厚く塗られた画面を間近から見ると、チューブからそのま
ま搾り出したかのような鮮やかな色彩が息づいています。樹木を彩
る緑の絵具にもいろいろな色が使われているのですね...

前回『秋II』が印象に残ったカンディンスキーですと、今回は隣の
作品『連続』に惹かれました。キャンバスの上を、音符のような文
字のような、色彩豊かなユーモラスな形体が肩を並べています。カ
ラフルな模様が映えるのも真っ白な背景と照明の効果のおかげでし
ょう。

さて、モネの絵が二枚並んでいる空間があります。この二枚、順路
通りに鑑賞してもあまり印象に残りませんでした。ちょっとくすん
で見えるのです。ところが、この展示室の隣は照明を落とした小部
屋になっていて、その隣の暗い小部屋からこちらの部屋に戻ってく
ると、途端に活き活きして見えるのです(特にヴェトゥイユへの道)。
最近の疲れ眼のせいもあるかもしれませんが、何だか不思議な気持
ちがしました...

その脇に、シスレーの『ルーヴシェンヌの雪』があります。今回、
わざわざ足を運んだのはこの絵を観たかったから。フィリップス・
コレクションの感想を書いたいくつかのブログでこの作品の評判が
よかったのですが、前回、不思議と印象に残らなかったのが残念で...

雪の風景を描いた縦長の構図、中央には婦人の姿が描かれています。
吹雪いているのでしょうか、傘を斜めに歩いています。こう書くと
いかにも辛そうですが、不思議とそんな気がしません。背景の壁の
暖色がそうさせるのでしょうか、むしろ温かみが感じられます。
印象派と言えば光を描いた画家たちで、明るい光を絵筆で捕まえる
ような作品を思い起こすのですが、シスレーのこの作品ではぼんや
りとした雪の反射を様々な白さで描きわける手際が見事です。光に
もいろいろな光があることを、改めて実感しました...


さて、こうした作品を鑑賞する合間に、親子のような二人や、近所
から来ているのでしょうか、ポケットに手をつっこんだ少年など、
多くの人たちとすれ違いました。こうした夜間も開館する都市型の
美術館が今後も増えるといいのですが、六本木界隈でなければ成り
立たないのだろうなぁ...残念。

『ルーヴシェンヌの雪』を紹介しているブログ
・エッセイ室
・はろるど・わーど

・フィリップス・コレクション展、最初の感想