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SPECULA #7「都市と芸術をめぐる現実(リアリティ)」川俣正vs桂英史
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フィリップス・コレクション展(森美術館)
美術
/
2005-06-29
森美術館ができてから六本木にもちょこちょこ行くようになった。
休日の午後から都内に出て、ひとつふたつ展覧会を観たあと、少し
余裕のある時に寄れる美術館があるのはうれしい。
さて、土曜日に軽く夕飯を食べてからヒルズに到着すると、チケッ
ト売り場には長蛇の列が...半分、酔いが、醒めてしまいました...
さすがはルノワールの大作が来ているだけあるな。お客さんを誘導
しているお姉さんに混み具合を聞くと『美術館はスムースにご案内』
できている様子。なんだ、夜景目当ての人々か...
いきなりエル・グレコです。なぜだか気になる絵描きさんです。肌
の色が独特で少しゆがんだ感じの人体描写はいわゆるマニエリスム
に括られる作品のようには表面的でないし、自然の猛威を示し劇的
な風景描写はバロックとも違う...エル・グレコはいつ見てもエル・
グレコです。とても惹き付けられるのだな...
キリスト教に根差す信仰心のようなものが、無神論者の私にも訴え
かけてくるのでしょうか...画風は異なりますが、ルオーの油絵にも
同じような印象を持ちます...
うねるような背景にけばけばとした筆遣いで描かれたペテロ。その
涙に霞んだ瞳。だけど、許されることを信じているのであろう表情
には、ある明るさが感じられます。こういうひとことでは言い表せ
ない、あれこれと考えさせてくれるところがエル・グレコの魅力で
す...
あと、セザンヌの晩年の作品が観られて良かったです。『ローヴの
庭』にはもはや庭さえ描かれていません。形と色彩とを理知的に構
成していたセザンヌが、最後にたどりついたのがパレットのような
抽象画だったという事実は、どこか感動的です。この絵にはあらゆ
るものの拘束から自由になった軽やかさがあると思いました。興味
のある方は、『
セザンヌは何を描いたか
』を読むといいと思います。
カンディンスキーの『秋II』という作品も温かみのある色彩とと形
が印象的です。どこかの聖堂でしょうか、お城でしょうか、柔らか
な形の立体物が黄色く描かれています。それを写している湖面の滲
んだ反射がきらきらして見えます。光の捕まえ方も十人十色です。
昨年『オランダの光』という映画を観たときにも
光についての断想
をつらつらと書きましたが、17世紀のオランダの画家と20世紀のロ
シアの画家とでは当然アプローチも異なりますね...
ピカソとジャコメッティの彫刻はともに人の頭部を題材にしていま
す。こういう彫刻をみると前から脇からいろいろなアングルで観た
くなってしまいます。個人的には横顔がなかなかだと思いました...
肝心要のルノワールの『舟遊びの昼食』はいい感じで、背景にヨッ
トを描くところなんかはにくい限りです...
ただ、こういう多くの人物がはっきり描かれている絵を観るときの
私の悪い癖は、人物の視線を勝手に延長させて物語をこさえてしま
うこと。一見、平和に見える舟遊びの昼食に秘められた、これ以上
は書けないな...
あとモネは素晴らしいですね。印象派は飽きてしまったとかいいな
がら、館内を何度か往復する中にも様々な輝きを見せる、やっぱり
あの光の描き方は尋常ではないのだな...
・
フィリップス・コレクション展
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