美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




再び横浜トリエンナーレに行ってきました。今回は前回見逃してし
まった作品を中心に...

まずは、さわひらきさんの白黒の映像作品trail(3B 52)です。アパ
ートの部屋のあちらこちらに、ラクダやゾウや観覧車のシルエット
が映し出されます。新手の影絵とでも言えばいいのか、どこか懐か
しさを感じる作品でした。不思議なのは、例えば家にいるときにこ
の映像を観るかというと、そんなことはないと思うのです。でも、
再び、この場を訪れることがあれば、ほんの十分、また、観てしま
いそうです。小さな箱の中の劇場の、壁一杯のスクリーンとならば
向かい合える、そんなところにこうした催しの面白さを感じます。

そして天使探知機(3C 18)。厚いカーテンをくぐり抜けると、ベンチ
に腰かけた人たちがじっとランプを見つめています。私もそっと腰
をおろして息をひそめます。いろいろな人たちが行き交います。わ
れわれの佇まいをみて『あ、間違えた』とばかりにそそくさと出て
行く人、無遠慮に高い靴音コツコツさせる人、それぞれの人の性格
がにじむ作品です。じっと見つめていると、外から入ってくる会場
の物音さえ気になってきます。と、ピカッっと光るランプ。おー、
やっぱり光るものなのか。歓声こそあがりませんが、部屋の中の私
たちに安堵の表情が広がります。すると、ピカッ、ピカッ...何とな
く一体感が出てきます。光り方にもバリエーションがあって、何度
か続いた明滅のあとに、部屋の中が明るくなった刹那、とっても嬉
しくなりました。天使が何人も宙を舞っていたのだろうな...
な~んて、天使という柄でもないのですが、天使と言えば思い出す
のは映画『ベルリン・天使の詩』と第三舞台の『天使は瞳を閉じて』。
久しぶりにDVDを観ようと思いました。

そして、今回、というか、前回も含めて一番いいなと思ったのが高
嶺格さんの作品です(4B 59)。暗い階段を登っていくと、広い空間と
それを照らす光、そしてバックに流れるアリア。女性の歌声に合わ
せて壁面の模様が姿かたちを変えます。照明の加減によって、空間
は波のようにゆらぎ、地の底から何かが立ち上がってきます。そこ
には音と光の見事な調和がありました。一瞬、明るくなる刹那に見
えるのはざらりとした空間、闇の中の姿と明るみの姿の対比が、怖
くもあり、蠱惑的でもあり...

そして、昼頃に「エフエム芸術道場」というラジオ番組の公開録音
を聴きました。川俣正さんと村上隆さんの対談です。会場はハトバ
のヴァン・リースホウトのバー、いわゆる内臓です。村上隆さんは
『コマーシャルにどっぷりつかっている私に対してオルタナティブ
に活動している川俣さん』というような言い方をされていましたが、
好対照の二人でした。

川俣さんがディレクターに就任したのが昨年の十二月。その時には
予算も会期も決まっていて、ただひたすらに、トリエンナーレ開催
に向けて走るしかなかったそうです。最初に行った作業が会場の模
型を作ること、そして、トイレの場所や広さを決める事だったそう
です。プラグマティックなことばかりしていたように言われていま
したが、本当に大変だったのでしょうね...

今回は若手、特に海外で活躍している若手を中心に参加アーティス
トを選んだそうです。東京藝術大学の先生は今年の春にやめられた
そうですが、若い作家に対する期待があるのでしょう。

最後に会場からの質問に答える川俣さん。トリエンナーレの主題で
ある『日常からの跳躍』にちなんだ『これまでもっとも跳躍したこ
とって何ですか?』という質問に、二日前に来場した田中真紀子さ
んをアテンドしたことをあげていました。何かおかしかった...

先日、見た日曜美術館のトリエンナーレ特集でもそうでしたが、淡
々と語る川俣さんには大きな事をこつこつと成し遂げる力強さを感
じます、と、そういえば、川俣さんの作品を観たことがありません
でした。どちらかというと、建築に近い作品が多いのかな...どこか
でゆっくり見てみたいな...短い時間でしたが、川俣さんの人となり
が感じられる公開録音でした(オンエアは 12/18 AM 3:00-)。

今日の公開録音をきっかけに、改めて読んだ、
ディレクターメッセージ
磯崎新さんから川俣さんにディレクターが変わった経緯

・村上隆の『エフエム芸術道場
ポッドキャスティングもやっています

前回の感想です

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 今年もやるら... ART STAR(ipod... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (はろるど)
2005-12-12 00:50:26
こんばんは。

二度目ですか!



>新手の影絵とでも言えば



「影絵」、言い得て妙ですね。なるほどです。

さわさんは結構好きですが、

今回の作品は少し地味だったかなと言う気がしました。

もちろんいつもながらの心地よい雰囲気は楽しめました。



天使探知機は作品を見ると言うよりも、

あの場を楽しむものかもしれません。

私の時はたまたま一人になった時光ったのですが、

他の方もおられる中で光ったら、

仰られる通り、不思議な一体感が生まれてくるのでしょうね。

それも味わってみたいなあと思います。



>田中真紀子さんをアテンド





そんなことがあったのですか!

最近ちょっとお暇そうな田中さんですが、

コンテンポラリーがお好きなのでしょうか?



>川俣さんの作品を観たことがありません



私もないのです。いつもお名前ばかりで…。

拝見してみたいですよね。
 
 
 
Unknown (lysander)
2005-12-13 00:06:49
はろるどさん

こんばんは。



> 二度目ですか!

さわひらきと天使探知機を、はろるどさんの

記事で知ってしまったからです...(^^;



田中真紀子さんは娘さんを連れていたそうで

す。とても柔らかい感性の持ち主だと川俣さん

はおっしゃっていました。



> いつもお名前ばかりで...

私があるアーティストに興味を持つのは、あく

までもその作品からであって、川俣さんは、そ

の人となりから惹かれた初めてのアーティスト

だと思います。

今回はごくごく普通にお話を聴かせていただい

ただけですが、こういう風に作家の人と接点を

持てるのが、現代美術の醍醐味なのではないか

と思いました。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。